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不眠症
目が覚めた。
最近ずっとそうなのだ。
真夜中になると目が覚める。
月が出ている日も、そうでない日も。
それからしばらく眠れない、仕方がないから起きだして散歩でもする。
目が覚めて、ひたすらすぐ目の前を凝視するよりよほど建設的だろう。
どうやら最近仲間が増えたようだ。
時折歩いている影を見かける。
声をかけたいとは思うがどうやれば声が出るのか、そもそも向こうに聞こえるのかも怪しい。しかし以前に比べてずいぶん積極的になったものだとは思う。
深く考えなくなったからだろう。
ずいぶんと劣化の進んだ体を見下ろして思う。
この分だと頭のほうもやられてるんだろう。
悩みこまないのはいいことだ。まぁ、別段考えることもないのだが。
とうとう朽ちきったら、影になるのだろうか?
体が軽そうで、良さそうだ。
眠たくなってきた。
欠伸をしたら、顎が取れかけた。
ずいぶん不格好な体を引きずって、自分の墓石に戻る。
年季の入った棺に収まると、草まで生えた土の乗った蓋をぱたんと閉める。
さて、ぐっすり眠れそうだ。