表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: 玖波悠里
6/19

大時計

カチ、コチ、カチ、コチ、カチン……

長針が真上を向く。

ゴーン、ゴーン、ゴーン……

寝静まって誰も聞かない音。

誰にも聞かれない音。

5つ鳴って、また、カチ、コチ……

毎朝螺子を巻かれて、それから、生真面目に歯車を回した。

ゼンマイが、歯車が、振り子が、粛々と全く同じ時を刻む。

屋敷の主は眠っている……

屋敷の奥方は眠っている……

屋敷の奉公人は眠っている……

古びた大時計だけが埃っぽい大広間で時を刻む。

もうじき夜が明ける、朽ちて落ちた屋根の隙間から朝日がさすだろう。

誰も眠りから覚めない大きな屋敷で時計は時を刻む。

カチ、コチ、カチ、コチ、カチン……

6つ、鳴らして、それから、ギリギリ、ギリ……きっちり毎朝同じ時間に。

螺子を巻く穴はからっぽ。

勝手に回って、また同じ時間を刻む……。


朽ちた屋敷は緑が覆う。

鮮やかな緑が繁茂する。かつての庭園には季節の花々が今も咲いている。

屋敷の人々が眠る墓標も蔦が絡んで、名を刻んだ石の表も風雨にさらされて、まもなく何も見えなくなるだろう。

朝露がきらめいて、やがて小鳥たちのさえずりが聞こえる。

輝く朝に……縫い止められた時間の音が、聞こえる。

カチ、コチ、カチ……


5時半には鳴ってないらしいです(言い訳)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ