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アリスの二重奏 ~ 転生し損ねた俺が、女子高生になっていじめ問題を解決してやる!  作者: オカノヒカル
第一章 自殺と憑依といじめっ子への逆襲

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□幕間 ~ Queen of Hearts to Reboot【松戸美園視点】



 松戸美園はがらんとした空間で酒を飲んでいた。


 壁も天井もすべて打ちっ放しのコンクリート。その中にぽつんとソファがあるだけだ。


 そこに半ば寝転がるように彼女は座り、薔薇を象ったラベルのバーボンの瓶を抱えている。髪は乱れ、制服は薄汚れ、目には泣きはらしたような痕が残る。


 ここは彼女の親族が経営するカラオケボックス。その地下にある貸し切りのパーティースペースだ。


 借り手のオーダーによっては、講演会の会場になったり、ライブハウスになったり、いかがわしい人間の主催するパーティー会場にもなるのだった。


「飲み過ぎじゃない?」


 そこへメガネをかけた一人の少女が入ってくる。美園とは顔なじみのようで親しげに声をかけた。


「仕方ないわ。やることがないんだから」


 酒に酔っているだけではなく、半ばヤケになったような感情が美園からは漏れてくる。学校に行けなくなり自暴自棄になりつつあるのだ。


「やることはいくらでもあるはずよ」


 少女は静かに美園へと言葉を投げかける。だが、その言葉が彼女を僅かにいらつかせる。負け犬の自分に何ができるのだと。


「なにを?!」

「あなたをこんな目に合わせた奴に復讐するのよ。松戸美園がこのまま黙っているってのも可笑しいでしょ?」

「……」


 彼女自身、そんなことはわかっていた。でも、もう自分の思い通りになる配下がいない。すべてあの子に奪われたのだ。美園は、それを思い返すだけで発狂しそうになる。


「手足となる駒がいないと思って、新しい駒を用意してあげたわ」

「新しい駒?」

「ほら、それを受け取って」


 少女は黒革の手帳を美園へと投げ渡す。ずっしりと重さを感じるそれを捲ると、いく人かの生徒の情報がぎっしりと書かれていた。


「脅すのもよし、飼い慣らすのもよし。あなたの相応しい駒にしてあげて」

「ありがとう……いつも……その」

「だめだよ。高潔なあなたがそんな卑屈な物言いをしては」


 松戸美園は起き上がり、それと同時に頭を左右にぶるっと振って目を覚ます。手櫛で額の毛をかき上げると、向かいに立つ少女を真っ直ぐな瞳で見つめる


「ええ、そうですわね。わたくしとしたことが」

「あなたは生徒達の上に君臨するのに相応しい存在よ。自信を失ってはだめ」


 少女の頬が僅かに歪み、左右非対称の笑みがこぼれた。その意味を美園は理解していない。


「ええ、わかってるわ」





次回 新章突入


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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