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71話 チンピラへの対処

 ボクは堂々とミーシャと男の間に入る。


 「彼女はボクの仲間なんだ。他を当たってくれるかい?」


 ボクはあまり事を荒立てなくないんだけどなぁ⋯⋯と思いながらもミーシャにこれ以上ストレスを掛けないようにするにはこれ以上時間をかけていられない。


 「んぁ?なんだ、てめぇ⋯⋯!そうか、お前がこいつの主人か⋯⋯。丁度いい、おいお前、これを俺によこせよ」


 大剣男がボクの胸倉を掴む。あぁ、好戦的だなぁーと場違いかもしれないけれどそう思った。


 「おい!痛い目を見たくなきゃ兄貴のいうことを聞けるよなぁ!あん!」


 こちらもか⋯⋯知ってたけど。ちらっとミーシャの方を見てみるとまだ怯えているようだが、少しはましになった⋯⋯かは分からないけれど、悪化はしていなさそうだ。


 「残念だけど、それには応じられないよ」


 ボクは自らの胸倉を掴む手を掴み返す。


 ⋯⋯殺すべきか。今は周りに誰もいない。殺したところで見つかることはない。


 いや、ここで殺すのはまずいか。ここは魔法とスキルの世界。見られていないから見つからないとは限らない。そういうのはもっとこの世界のことを知ってからの方がいいかもしれない。ここは村などでなく、ある程度の文明力があるなのだ。


 それに、魔物しか殺させたことのないミーシャにはまだ早いかもしれない。別に人間も魔物もあまり変わらないと思うのだけれどねぇ。これが価値観の違いという奴だろうか。獣人ニンゲン魔物ジンガイの違いだろうか。



 それはいいとして、だとすると逃げるか痛い目を見てもらうか。


 こういう時に逃げると舐められて困るというし、かといって懲りずにまた戦力を集めてやってきても困るし⋯⋯。


 ⋯⋯今考えても仕方ないか。ボクは力ずくで胸倉を掴む腕を外す。普段ならそんなことをすれば服が破れてしまうが今は安物ではあるものの一応しっかりとした防具を着ていたのでそんなことはなかった。


「なっ!」


 それが予想外だったのか、大剣男が声を上げる。ボクの姿は子供だから侮っていたのかもしれない。そのおかげで、大して力を使わずに外せた。


 ボクは、そこから体勢を少しかがめみぞおち近くを殴りつける。よく漫画であるように気絶させることは出来なかったがダメージはかなりあったようだ。殴った時に口から吐き出された血が少しではあるが地面を汚す。


「ぐふっ!」


「お、おい兄貴!⋯⋯て、てめぇ!!」


 少し離れた位置にいたモヒカン男が大剣男の吐血を見て、まるで敵討ちというようにこちらに向かってくる。吐血はしたが、何とか持ちこたえた大剣男もそれとほとんど同時に向かってくる。が、それほど早くはない。あの盗賊の頭やブラッドベアよりも遅い。それに、技術もなさそうだ。流石に村の男たちよりはましだけれど。


 ボクは、迫ってくる男たちをギリギリで避ける。


 「うぉ!」「ふっ!」


 ギリギリで避けたので、大剣男とモヒカン男は衝突しかけるが何とか直前で止まることが出来たようだ。しかし、若干バランスを崩したようだ。ボクはそこで、足払いをかける。



 「「ぐふっ」」



 大剣男とモヒカン男は両者共に転倒する。この辺は草なんかはあるが舗装されているというわけではないのでそこそこのダメージだろう。


 「これ以上何もしないのなら、ボク達は何もしませんよ?」


 ボクはそう提案する。これ以上戦っても両者共にメリットがあまりない。これ以上やって衛兵に突き出すのもいいけれど、その時に見せる証拠がないからなぁ。この街には来たばかりで、社会的な信用というものがボクにはほとんどないし。


 「⋯⋯ちっ、まぁいい。今回だけ見逃してやんよ。次あった時には⋯⋯覚えてろよ」


 そんなことを考えながらの提案だったけれど、大剣男は苦虫をかみつぶしたような表情でこう言った。何が覚えていろだよ⋯⋯。まぁ、でもよかった。後でまた仕返しに来るかもしれないけれど取り敢えず今はミーシャの方を何とかしないといけないからね。


 ミーシャの気配の方を見ると姿が見えない。どうやら木の後ろに隠れてしまったようだ。


 「ミーシャ、もうあいつらは逃げていったから大丈夫だよ」


 ボクは、未だに木の裏に隠れ泣き続けているだろうミーシャの方へ向かう。そして木の裏にはやはり小動物のように静かに、けれど震えながら泣くミーシャがいた。彼女の肩に優しく触れると、その肩はビクッと揺れた。それもまた、小動物を彷彿とさせる。


 「もう大丈夫だよ、大丈夫⋯⋯」


 ボクは彼女の頭を優しく、優しく撫でる。普通こんな小さな少女の頭を父親でもない男が撫でていたら事案発生ものだけれど、今のボクの姿は少年。何の問題もない。ボクは魔物の警戒をしながらミーシャが泣き止むまでずっとそれをずっと続けていたのであった。

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