65話 警戒と偽装、そして逃走
登録をした後、ボク達は宿を取りに行った。宿は多少懐が痛かったけれど高めのところにした。安い宿をとって盗難にあいましたでは元も子もないし。
部屋は二人部屋で、お風呂・トイレ付だ。
なかなか清潔なもので、ドアにはしっかりと鍵も入っている。
そんな部屋の中でボクが何をしているかと言えば警戒だ。現在の時刻は夜。安全な宿とはいえ、絶対というわけではないし、ここが日本のように治安がいいとは限らないことはあの村でよく学んだ。スペアキーを持つであろう宿の主人などが窃盗を行う可能性だってないわけではない。
もっとも警戒は今日に始まったことではないけれど。外では魔物、町では人を警戒するわけだ。また、この前手に入れたスキル、気配察知・警戒でより強固になりより安心できるようになった。
それはいいんだけれど⋯⋯
「Zzz⋯⋯」
ミーシャが疲れて寝てしまい、周りの音が何もない中で何もしないのは退屈⋯⋯というか気が狂いそうになる。ある程度は自心制御で何とかなるがこう何日も続いているとある程度なんかではなくなる。これ以上抑制を強くすると自心制御が強くなってしまう。
本来、警戒中に他のことを考えるのはあまり褒められたものではないけれど、仕方がない。
何か、ないかなぁ⋯⋯
!?そういえば、今日ギルド登録の時に偽装とかいうスキルを習得したっけ⋯⋯ずっと気を張っていたから忘れてたよ。
鑑定⋯⋯
偽装⋯能力鑑定、解析などの能力からステータス、魔力などを誤魔化す。どこまで誤魔化せるかは相手の看破能力などにもよる。
どうやら、小説などでよく出るステータスなんかを偽装するもののようだ。違いは魔力なども誤魔化せる、くらいだろうか。
それよりも問題は⋯⋯能力鑑定・解析という能力の存在か。ボクのスキル『鑑定』からそれに類似するものはあるだろうとは思っていたがボクという存在自体がイレギュラーであったため確証はなかったのだ。
出来れば、人間でないボクにとってはない方が有難かったけど⋯⋯元々期待などしていなかったしいいか。
幸い、解析系の能力が一般的ではない又は所持している者・魔道具が少ないようだけれど。
⋯⋯ステータス、今まで確認されていなければいいけど。
まぁともかく、これでそれらの能力が無効化も可能になったわけだ。
早速、ステータスに偽装を施す。
⋯⋯。
⋯⋯。
⋯⋯。
名前 〔*偽装中〕ウルルス(ウルル)〕
種族 〔*偽装中〕人族(集魂霧)
LV 〔*偽装中〕11(28)
HP〔*偽装中〕97/97(291/291)
MP〔*偽装中〕191/191(532/532)
物攻〔*偽装中〕42(127)
物防〔*偽装中〕36(110)
魔攻〔*偽装中〕94(224)
魔防〔*偽装中〕44(143)
速〔*偽装中〕51(93)
固有スキル
〔*隠蔽中〕
【復讐者】
【信条者】
【不屈者】
魂統合
不死者
霊体
擬人化
スキル
無属性魔法2
警戒1(new)
気配察知1(new)
〔*偽装中〕
HP自動回復1(HP自動回復9)
〔*隠蔽中〕
怨呪魔法4(up)
魔力感知5(up)
瘴気感知8
魔力操作7(up)
瘴気操作6
分身操作3(new)
自心制御5
高速演算3
限界突破7(up)
鑑定
言語理解
狂気
属性:怨呪
怨念吸収(new)
耐久
称号
努力家
〔*隠蔽中〕
異世界の魂
複数の魂を持つ者
歪んだ正義
復讐者
ネームドモンスター
死線を越えし者
かなり、というか殆どの能力が隠蔽が必要だった。隠蔽したスキルは偽装スキルの存在がばれないようにするためには使いにくくなってしまうけれど、しかたがない。
これからは強力なスキルだけでなく人前で使えるようなものも習得しないとね。
それからボクはこれからのことを考え、胸を躍らせ⋯⋯ることもなく真剣に考えながら夜が更けていくのだった。
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「はぁ⋯⋯はぁはぁ⋯⋯!!」
とある路地裏でぼろきれを縫い合わせた服を着て、髪がぼさぼさな女が走っていた。
「私⋯⋯が⋯⋯何をしたって⋯⋯いうのよ!!」
その様子は明らかに何かから逃げている様子だ。そして彼女の息の荒さからもう逃げ切ることが厳しいこともわかる。
「⋯⋯手間を取らせやがって」
すると、建物の陰から男が現れる。どうやら女が逃げているのはこの男からのようだ。全身を暗色系の服で包み手には血のべっとりついたナイフを持っている。
「ひっ!!⋯⋯い、嫌ぁ!!」
この後彼女がどうなったのかはご想像に、お任せしよう。




