↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/79

58話 最期のプライドvs生への執着


 ブラッドベアは、初めて死を覚悟した。まだ、薄っすらと残る理性が死にたくないと叫んでいる。前回ここに来たときは眼をつぶされて恐怖を感じたが、今のように絶体絶命な状況ではなかった。眼は見えず足も動かない。体のどこからか痛みが走り、また別のところは熱くなっている。


 このままでは、命の灯火が消えるのは時間の問題だ。


 これまで、俺はこの森の主として君臨してきた。俺は全てを破壊し全てを喰らった。


 ⋯⋯前回、ここに来た時以外は。


 


 ブラッドベアには知性というべきものが多少ながらあった。ここに来たのも食料の確保だけではなく、自らに傷を⋯⋯目にも捕食者としてのプライドにも負わせたことへの恨みを晴らし、再度絶対的な存在に舞い戻るためでもあった。


 しかし、この村を襲ってみればその復讐⋯⋯逆恨みの相手はいなかった。勿論、ブラッドベアにその理由は分からなかったが、自らのプライドを取り戻すことは出来なかった。彼は心を憤怒に染めていった。


 そして、自らのプライド為に村にいたものすべてを破壊して回った。弱者は逃げ惑っていた。それはブラッドベアのプライドを回復させた。逃げるということは即ち自らには敵わない。自らが強者であることを認められていることを証明しているからだ。


 ブラッドベアは優越感に浸りながらそれを与えてくれたものを殺しつくした。



 しかし、またもや餌の一人が立ちふさがった。弱者はおとなしく俺を強者と認め、逃げ惑うべきだというのに。


 そして、そいつは当たり前のように死んだ。やはり、俺に敵う者などいない。しかし、こいつを殺している間に邪魔をしてきた者がいた。何故か、その者から香る臭いが何かおかしい気がしたが、そんなことはどうでもいい。問題は、俺に傷をつけたことだ。


 俺は傷をつけた奴の方を向くが、最初に歯向かった餌が何か叫ぶとそいつは少し離れていった。


 そして、餌が死んだ瞬間にどこかへ行った。


 この時は、アイツも俺を強者と認め逃げたのかと思ったが、また戻ってきたのだ。


 俺は、また憤怒で燃え上がりアイツを殺そうとしたが、それは叶わず逆に俺は追い詰められていった。



 そして仕方なくあの力⋯⋯名前などは知らないが頭が憤怒で染め上がるが俺を強くしてくれる力を使った。


 しかし、結果はどうだ?最初こそ互角に持ち込めたが、もう体はボロボロだ。


 死。


 それが彼には見えた気がした。


 言葉も知らない彼に死というのはよく分からなかったが、何かが起こることは理解している。


 怖くて、恐ろしい⋯⋯強者であった俺よりも怖いものだ、と彼は何となく理解していた。



 しかし、それ以上に⋯⋯彼は弱者(・・)になりたくなった。これでは餌と同じになってしまう、


 強者で、なくなってしまう。



 それが我慢ならなかった。


 俺は弱者にはならない!!



 そんな執念が最後の灯火を炎に変えた。





-----------------------------------------------------------------------------


 それ(・・)は、突如始まった。


 先程までボロボロだった体では考えられないような速さで、かなりの魔力を纏いながらこちらに突進してきたのだ。


 明らかに体のリミッターなんかは外れているのがある。最期の悪足掻きというやつだ。


 文字通り、『全力』というやつだろう。


 この攻撃をした後ブラッドベアが生きているとは思えない。というか、このまま何もなくても生きていられるとは到底思えなかった。そこから、この攻撃で少ない命を大幅に削ってしまっている。


 しかし、そんな攻撃だからこそ強力だった。物語でもあるように、最後の最後では、普段を大幅に上回る力を発揮する。

 

そして、この攻撃はまともに受ければ危ない。


 予測はしていたけれど、それでもこれは避けられそうにない。今こうやって考えていられるのも脳が危機を感じて、スロー映像のようにしているからだ。


 魔法で盾をつくろうにももうMPがほとんど残っていない。



《 思考加速 を習得しました 》



 このままなら、相打ちで瀕死⋯⋯なんてことにもなりかねない。



 あれ(・・)がその前に成功するかどうか。


 今のままなら、無理だろう。


 

 けれど⋯⋯そういうわけにはいかない。


 まだ、復讐は果たされていない。やり残したことがたくさんある。それを果たさずに死ぬなんて、ボクの信条に反する!


 まだボクは生きなければならないんだ!



 ボクは自心制御で抑える感情を怯えや驕りに限定する。


 

 それは、濁流のように頭に流れてきた。



 怒り、恨み、妬み⋯⋯そして、まだ生きていたいという思い。


 誰かを守りたいなんて思いではなかった。



 ボクはいつでも自分本位。自分さえ良ければ、それでいい。


 

 別におかしいことでも、悪いことでもないはずだ。生物とは生きるためにいるのだ。自分の命を優先して何が悪い。


 

 そんなボクの生への執着は下手な『大切な人を守りたい』なんてものよりは上だろう。



 だからこそ、力は、スキルは答えてくれた












《 【復讐者】、【信条者】、【不屈者】が発動します 》


 

《 ――――――――――――――――――を習得しました》



 その瞬間、ボクの体に魔力を使った最期の一撃が放たれた。


 

『日本人、田中凡平の冒険~幸せなエンディングを迎えるには~』というゲームブックも投稿したのでよければ見ていってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。