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55話 儚き復讐の少年


 固有スキル通り正に狂血戦士であるバーサーク・ブラッドベアに対して現在のボクのステータスはこうだ。




 名前 ウルル

 種族 集魂霧(ムブラ

 LV 23

 HP215/215

 MP379/379

 物攻91

 物防79

 魔攻172

 魔防103

 速68



 こうしてみるとあれだね、うん。バーサーク・ブラッドベア⋯⋯もう熊でいいか。他の人達を見てるとあれだけどステータスではボクの方が上の部分が多いのだ。そういう面では心配いらない。


 まぁ、だからボクが負けないとは限らないから⋯⋯というかこのままだと苦戦しそうだ。ステータスでは勝ててもこの世界には野生の勘とかもあるからステータスだけでは優劣は決まらない。



 ⋯⋯と見ていると進展があった。



 「お前だな!!俺の兄さんを殺したのは!!」



 アデルだった。熊に向かって一直線に走っていく。なんとも無謀なものだ。


 そこに遅れてご高齢だろうにタル―シャさんも走ってくる。


 「アデル!はやくこっちにおいで!!」


 必死に叫んでアデルを止めようとしているようだ。


 「くっ⋯⋯!?」



 熊はアデルを跳ね飛ばす。普段は凶暴らしいが今は餌に集中しているようだ。普通は皆殺しにしていたというし、もしかしたら何らかの理由で飢えていたのかもしれない。そんなことを推察させるほど食事に集中している。


 今なら、逃げるチャンスだろうに。ボクは荷物をこのまま持ち出すのは見つかるリスクがあるのでボクは熊の攻撃によって空けられたであろう穴に埋め込む。別に、熊は荷物を荒らすためにこの村に来たわけではないからこれでいいだろう。期を見計らって取りに戻ればいい。荷車は駄目だったけど。


 ⋯⋯というか最初からこうすればよかったね。いいアイデアはなかなかすぐに出せないものだ。


 ボクは先程のところに戻る。


 するとアデルと熊が丁度向き合っているところだった。勝ち目はなさそうだけれど⋯⋯。タル―シャさんは⋯⋯倒れてる。ただ傷は見られないから、魔力切れとかだろうか。結界張るのに魔力必要だからね。


 ここで、ボクは前に出る。別に助けようとかではない。ただ、この”強敵”は倒すべきだと思ったのだ。こいつを倒せれば経験値は多く貰えるだろうし、強者との戦闘という本来の意味での経験を得られる。


 何故、保身主義であるボクがこんなことを考えているのか分からないが今はいいだろう。



 「っ!?誰だ!!」



 ”グルルルルルルゥゥァァァァ!!”



 こちらに両者が集中したすきにボクはスキルで熊に攻撃を仕掛けた。風魔法による刃、鎌鼬だ。


 倒すことは出来なかったが、魔攻172は伊達じゃない。バーサーク・ブラッドベアは返り血でなく自らの血でその身を濡らした。



 ”グラァァァァ⁉”



切ったのは足。機動力を落とすためだ。本当は頭や心臓を狙いたかったけど狙いにくかったので当たる可能性の高い方を狙ったのだ。


 おかげでアイツは態勢を崩した。そこにもう一度、攻撃を放つが⋯⋯避けられたようだ。完全に避け切られたわけではないが掠った程度だ。魔攻の高さに任せてまだ低レベルの風魔法じゃ無理か。



「おいっ、それは俺のカタキだ!!邪魔をするな!!」



 カタキって⋯⋯。


 そんなこと言ってる場合じゃないだろうに。そもそもその熊が昔ブライアンを殺したかどうかなんて分からないじゃないか。

 

 でも敵討ち、復讐かぁ⋯⋯。



 ⋯⋯。

 


 ボクは、熊からそっと離れる。熊は現在出血中。もう少し待った方が貧血により倒すのも楽だろう。


 なら、ここは一度見学しているのもいいかもしれない。



 「よくも兄さんを⋯⋯兄さんを⋯⋯!!」


 そう言って熊に向かって走っていく。しかし機動力を落としたといっても彼にとっては圧倒的格上。しかもアデルはもう頭に血が上っているようで冷静な判断が出来ていないようだ。こういう時は真正面からじゃなく搦め手がいいのに⋯⋯。


 「グフッ!?」


 思った通りアデルの攻撃は成功せず逆にかなりの大怪我を負ったようだ。腹部から大量の血が溢れ出る。今度は流れ出ていく血が熊を濡らす。それはただの人間には致命傷。彼は魔物でも特殊なスキルを持っているわけでもない。


 アデルは痛みにより倒れる。死ぬのも時間の問題だ。異世界ものならこういう復讐系では主人公が激闘し最後には勝つ!みたいなかんじだが実際の戦闘なんて一瞬で終わってしまうことも少なくはない。理由は沢山あるが今回は圧倒的な差だった。


 「くそっ⋯⋯!!くそっ⋯⋯!!」


 そんな現実に悪態をつく。


 「何で、何でなんだよ!!」


 しかし、また・・奇跡は起こらない。奇跡はいつでも気まぐれでまたもや・・・・それはこなかった。


 彼は、主人公には選ばれなかったのだ。




 ここでも、世界は残酷だった。

 




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