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46話 闇は飲み込む

*残酷な描写あり 苦手な人は見ないことをお勧めします。

 


 剣の実験、といっても魔法ほど大したことはない。


 ただ単に人間で試し切りをするだけだ。今までゴブリンやウルフで試し切りをしたりはしていたけどやっぱり魔物だけじゃなくて人間も切れることを確認しないと。いや、剣なんだから相手の防御力が高すぎない限り切れることは切れるんだけど、技量的にすんなりいけるかわからないからね。


 ボクだって元人間だから人間で試し切りなんて普通、少しは罪悪感があるけどこんな下賤な奴ら⋯⋯自分が悪だと少しも思っていないぶん、もしかしたら前の盗賊よりも質が悪いかもしれない奴らに対してなら殆ど罪悪感が湧いてこない。ボクにあるのはほんの少しの元同族意識だけ、所詮は他の動物と同じ生物。人間だからって躊躇するほど特別意識はない。これが「狂ってる」ってことなのかもね。


 ともかく、ボクは躊躇なく剣を抜く。


 水魔法で湿った地面を予めこんな戦いを予想して用意した滑りにくい靴で走り抜く。


 それでも滑らないわけではないけどこいつら相手には何とかなる。ただ、これからはスパイクくらいはある靴の方がいいかな。


 

 「ヒァッ⋯⋯」


 まず一人、一番近くの奴の首を刎ねた。


 すぐに殺したからあまり苦しみを感じることなく⋯⋯ということもないだろう。ボクの剣の扱いの下手さから防御力が低いわりにすんなり刃が通らずかなり痛かっただろう。やはり同じ人型でも、ゴブリンと同じようには切れなそうだ。もうちょっと練習して剣の扱いを良くしないと、もっと防御力がある人間にも通用しないだろう。


 他の奴らは仲間が殺され恐怖を感じ⋯⋯ていない。というか、起き上がることに必死で一瞬で死んだ仲間のことには気が付かなかったようだ。


 待ってあげるような道理はない。


 次に近かった奴のもとに行き今度は足を切り落とす。今回は魔法でやったしいいけど、相手の動きを止めることは重要だ。連携なんてされたら困る。



 「ヒギィィィィィィアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!??????⋯⋯⋯グエッ⋯⋯」


 しかし、余りにもうるさかったので一緒に腹部辺りを切りつけた。深夜だから大声を出されると目立ちすぎる。この状況で見られたら誤解を招きかねない。そんな状態で他の村に衛兵なんか呼ばれては困る。


 即死ではなかったけど痛みで気絶させることは出来たようだ。そして、二度と起きることはないだろう。

 

 「ひぃぃぃぃっ!!!!!!」「ひぇっ!?!?!?」「うぐっ⋯⋯おぅぅえ⋯⋯⋯」

 

 そしてさすがに今の悲鳴で他の奴らも仲間が死んでいったことに気が付いたみたいだ。村人たちは悲鳴を上げる。しかし、それは届かない。さっき死んだ男の悲鳴が大きくて他の村人を起こしそうなのを察してくれたのかタル―シャさんが結界で音を通さないようにしてくれたようだ。結界というんだからこういうことも出来たってのも予想できたはずなのに⋯⋯最初から頼めたのに⋯⋯。


 さっきの魔道具を借りた時に見たんだけど、タル―シャさんはこの村を守るために結構多くの魔道具を持っているっぽかった。なんでも、昔ほどは力も魔力もなく、若いころに集めていた魔道具らの力を借りてこの村を守っているんだとか。きっとこれもその一つなんだろう。こういう時以外の使い道以外に思いつかないけど⋯⋯。


 おっと、いけない今は集中しないと。



 足を、首を、腕を、腹を、どんどん切り裂く。


 さっきまで人間だったはずのものはもう、今ではごみのようなものだ。


 もう、用は終わったと言わんばかりに光を失い、動きを完全に止め、無残に散らばっている。


 こんな光景を見てもほとんど何も思わない。感じない。感じ、られない。ああ、目障りだった機会が止まった、そんなかんじだろうか。別に殺すのに気持ち悪いだとか忌避感は感じない。別に快楽、というわけではないがむしゃくしゃしていたところからの解放感がある。


 

 しかし、その様子は傍から見れば酷いものだろう。一方的な残虐な大量殺人、血は跳び肉は跳び、そして地面に様々な液体が染み込んでゆく。



 闇もそんな情景を無差別に飲み込んでゆく。先程まで奴らの持っていたであろう明かりも飲み込む。奴らの恐怖からの悲鳴も飲み込む。ボクの肉を切る剣の音も飲み込む。



 そして、死という現象さえ、飲み込んでゆく。


 

 愛も正義も差別も侮蔑も狂気も、そして罪も、飲み込まれて消えていった。



 善も悪も、飲み込まれていった。






 そして当たり前のことだが、すべてが呑み込まれていった後、そこには何も残ってはいなかった。

 


 

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