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43話 実行と慈悲

 「モルバールさん、こっちは多分、大丈夫そうですぜ」



 「そうか⋯⋯こっちもだ」


 

 村長宅の周りを囲み何度も確認しあう。



 家の中は暗く、声も聞こえない。


 どれだけ時間が経ったのかすらわからない。



 絶対大丈夫とは分かっていてもこういうことは緊張するものだ。


 他の奴らも動かない。



 しかし、これは正義のため、村のためなのだ。


 

 確か寝室は窓の近くの部屋だったのでまだ寝ているのだろう。



 作戦は簡単だ。



 これからこの中の一人がこっそりと窓から村長の家に入り、剣で殺す。



 基本、ただそれだけだ。



 そして万が一ばれたら周りにいる仲間たちで家にいる奴ら全員を殺すか火を放つ。




 これなら、確実にあの獣人も死にこの村からも災いがなくなるはずだ。


 


 「⋯⋯じゃあいくぞ!!」




 そう言って、今もなお臆している村人たちを一喝した。




 寝室に侵入する。


 

 流石に、村長の寝室に入ったことはないが何となくは窓の外からでも見えていた。



 確か、ベッドは窓側でない方。

 


 仲間のうちの一人が窓を音をたてないように割る。


 流石に無音ということはないが慎重に行っていたしそれでも窓を濡れた紙で破片が飛び散らないようにしておいたから眠っているあいつ等は起きやしないだろう。


 そして、壊した窓から手を入れ中から鍵を開ける。


 

 そうして開けた瞬間から仲間の何人かが武器を持って中に侵入した。



 ⋯⋯これで災いも起きないだろう。



 「モルバールさん、あの獣人がいません!!」


 仲間のうちの一人が小さい、しかし驚きや焦りを若干含んだ声で言う。



 ⋯⋯何?


 私も部屋の中に入る。


 そして、ベッドの方に行く。


 あの獣人は⋯⋯いない?


 くそっ、一体どこに行ったんだ?この家の中か?家の外?そもそも村の中にいるのか?


 その問いの答えは出ない。


 しかし


 「⋯⋯ふん、獣人を連れてきた奴か」


 

 ベッドには獣人こそいなかったもののその主であろうあの生意気の少年はいる。


 あの村長のように私の命令を聞かない、愚かな連中だ。


 それは、いわゆる逆恨みでしかないのだが、モルバールは気づかない。彼の中で、自分という存在は絶対であるべきなのだ。


 暴走は、止まらない。


 

 「⋯⋯ちっ、予定変更だ。まず先にこの獣人などというものを村に持ち込んだこいつを殺すぞ。獣人はそれからだ」


 その言葉に仲間⋯⋯いや部下は頷いた。


 そして、その中の一人が技術のかけらもないようなくわを大振りで少年に向かって振りかぶり⋯⋯



 


 













 キーン!!!





 見えない何か・・にそれは拒まれ、弾かれたのであった。



------------------------------------------------------------------



 「⋯⋯というわけなんですよ」



 彼らが動き出そうとした時に、ボクはミーシャを静かに起こしてリビングに移り、その後タル―シャさんを起こしに行った。


 普通ならそんな時間ないんだけど、周りを囲んでいる村人たちは最初、この暗い夜に窓から覗いてくるくらいしかしてこなかった。


 これを率いてたモルバールとかいう奴はそれほどではなかったが、暗殺なんかしたことがなかったのだろう。何度も何度も外から中を確認し、来るかと思ったら慎重というか臆病風に吹かれているというかそれ以上何もしてこなかったのだ。


 モルバールの声は他の村人をそれを緩和させたみたいだけど何かもっと方法はなかったのだろうか。家の中まで聞こえてきたよ⋯⋯。


 とまぁいったかんじでボクもタル―シャさんに簡単に説明する時間があったのだ。



 「⋯⋯そうかい。すまないねぇ、こんな村で」


 話を聞けばこうなるんじゃないか、という予想はしていたのだそうだ。


 しかし、まだ起こってもいないのにボク達を不安にさせるのもどうかと思い念の為窓などが壊された場合、結界を張るようにして、自分自身もいつでも起きれるように仮眠程度に眠っていたのだそうだ。


 「⋯⋯それで、どうするかい?村人たちは絶対にあんた達に何かしらしてくるだろうし⋯⋯逃げるかい?それとも結界を張ったままにして朝まで過ごすかい?」


 確かに、それでもいい。


 しかし⋯⋯それではあまり利点がない。



 ここに来たのは物資を揃えるため。


 

 折角、馬車にあったお金でぼったくられながらもそれに耐えてそこそこ集めたのに逃げてそれを置いていくなんてとんでもない。


 

 あの馬車には異世界ではお馴染みのマジックバッグ的なものもあったけど、無限には入らないし時間も止まったりはしない。精々ニ、三日といったところだ。


 

 それで、結局荷車を買うことにしたのだが逃げるのには邪魔だ。


 

 荷車を持って逃げるなんて出来るかどうかわからないのだ。



 そして、もう一つの結界で守ってもらうのも今はいいが、それでは対症療法のようなものだ。



 もし今回の作戦が失敗しても、次は別の方法⋯⋯冤罪とかでどうにかしてくるだろう。


 流石に、法的機関とかが動いてきたら面倒だ。



 だから⋯⋯




 「殺そう」



 ボクがそう一言言うと、タル―シャさんは悲しそうな顔をする。



 「⋯⋯そうかい。もう外にいる村人たちはそうされても仕方ないところまでもうすぐ来る。あたしが正当防衛だったと主張すれば村人達だけの意見で犯罪者扱いされることは多分ないさね」


 

 うん、タル―シャさんにも一応了解を得たし⋯⋯早速やるか。



 ⋯⋯でも、そうだね。



 タル―シャさんに免じて少しくらいは慈悲を掛けてもいいかもしれない。



 この人に恩を売っておいた方がいい気がするし。



 「⋯⋯タル―シャさんちょっと協力して欲しいことがあるんですが」



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