33話 久しぶりの食事
帰ってきた彼女は傷がまだあるし体は折れそうなくらい細いものの、先程とは比べ物にならないくらい健康的な姿だった。
泥とかもついておらず、先程より臭いもしない。
奴隷ではないと言われればそうなのかと思えるかもしれない。
「どう?傷とかは大丈夫だったかい?」
「⋯⋯はい、大丈夫です」
うん、一応大丈夫らしい。
彼女の基準が分からないけどとりあえず今はいいか。
「ご飯、馬車から持ってきたものだけど食べといて」
そういうと、彼女は頭に?を浮かべる。
懐疑と怯えの混じった目を向けながらこちらを見つめてくる。
でも、ボクの言うことは聞くらしい。
「⋯⋯はい」
そう答え、比較的、柔らかめのパンを食べる。
他にも食材はあったけど、そのままじゃ食べられなそうなものや、ボクの全く知らないものばかりだった。
もうちょっと、あまり食べ物を食べていない人にもやさしいものを上げたかったけど仕方ない。
悪食のスキルもあることだし、今回は我慢してもらおう。
ちなみにボクは一応食べる?ことは出来た。
味はきちんとわかる。
ただ、喉より下の器官がないので消化することが出来ない。
それだと体の中にずっとたまった状態になってしまうので、今は魔法で消しておいたけどちょっと勿体ない。
今後、何かしら栄養とか吸収する方法があればいいけど⋯⋯。
まぁだから、「食べられる」というのはちょっと違うかもしれないけど少なくとも味は分かるから今はそれでよしということで。
彼女の方は、まるで久しぶりの食事であるかのように⋯⋯いやきっと本当にそうなんだろう。
じゃなかったらここまでガリガリにはならない。
先程までの懐疑や怯えなど嘘かのようにかなりの勢いでパンを食べていった。
普通なら胃にやさしいものとかがいいけど、悪食のせいか、そんなことは気にしなくても大丈夫そうだ。
にしても、よく食べるなぁ⋯⋯もう、二人前、三人前は食べてるよ。
まぁ別に食べる必要があるのは君だけだからいいけどさ⋯⋯。
幸い、馬車の荷台には一人で食べるにはまだ沢山の食料もある。
そういえば、この馬車に乗っていた商人は一体何の商人なんだろうか。
武器やら食料やら衣類やら⋯⋯何でも屋的なものだったのかねぇ。
そのおかげで助かっているけれど。
あ、やっと食べ終わった。
さて、じゃあ今後について彼女と話し合いでもするかねぇ。




