2話 ボクは誰?
うぅ……ここはドコダ?
頭が痛い。
体が動かない。
頭に膨大な情報が入ってくる。
それは、記憶だった。
しかし、何かがおかしい。
その記憶は、支離滅裂だった。
記憶の中の自分はスポーツの好きな男子高校生だったり、本が好きな女子中学生だったり、ちょっとオタク気味の男子小学生だったり、おままごとが好きな園児だったり。
どれが本当ノ自分ダ?
俺はダレなんダ。
私は⋯⋯?
アタシは。
ボクは⋯⋯。
頭が混乱する。
でもどこか冷静だった。
ただ、それを「良かった」で片づけることはできなかった。
心の奥にあるのだ。
なんだか冷たくて氷の塊のような⋯⋯。
それにボクは心当たりがある。
恨みと憎しみだ。
しかし、ボクの記憶の中で感じたものとは違う気がする。
記憶の中では恨みを持つと同時に激情に駆られ、それ以外のことは考えられなかった。
恨みや憎しみの度合いが小さいのか。
⋯⋯いや、そんなことはないか。
それどころか記憶の中以上にそれは大きい。
しかし、何か根本的にどこか違うものなのだ。
ではなぜか。
それはいくら考えてもわからなかったが、考えている中で、一つわかったことがあった。
自分は、殺されたのだ。
頭の中が混乱していてもそれは分かった。
記憶の中のどの自分も殺されていた。
恨み、つらみ、動揺、恐怖をその目に浮かばせながら殺されていったのだ。
誰に?
国だ。
そうだ、ボクは国王を名乗る奴やその手下に殺されたのだ。
ボク、いやボク達は異世界に召喚された。
そして、ステータスとやらを見せるように言われ⋯⋯殺された。
女神の加護とやらがなかったのだ。
異世界から来て女神の加護とやらがないと悪魔だとか言っていた。
滅茶苦茶だ。
勝手に召喚しておいて、加護がないから殺す?
それならそもそも最初から召喚などしなければいいじゃないか。
自分たちの問題を他人に押し付けるな。
ボク達にだって家族や、友達がいたんだ。
それを引き離しておいて。
さらに、悪魔呼ばわりして殺すなんて。
憎くて。
あいつらが憎くて。
殺したいほどに憎くて。
でも、それとは反対にある程度記憶の整理が出来た頭は落ち着いてきた。
どうやら、ボク達?は異世界に召喚されて、殺されて、なぜか意識があるようだ。
ボクにはなぜかたくさんの人の記憶がある。
理不尽に殺された人たちの記憶が。
まぁそれだけじゃ、なさそうだけど。
そして、ボクはそんな人達が集まって出来た、何かのようだった。
普通ならたくさんの人の記憶があるなんておかしいが、そもそも異世界召喚なんて物が起こっている時点で割り切るしかないだろう。
ふと、周りを見渡す。
それだけで僕が人間でないことが分かった。
首が回らない。
というか、首の感覚がない。
でも、三六〇度、周囲が見渡せる。
⋯⋯とはいっても周囲は暗くて薄っすらとしか分からないけど。
ふと、自分を見ると、そこには真っ暗な闇しかなかった。
目も口も顔も体も手足もない。
しかし、これが本能というやつだろうか、漠然とこれは自分の体だとわかった。
周囲よりも暗くてこの世の全ての光を吸い込みそうな黒だからこれが周りのものと同じではないとは普通に考えてもなんとなくわかるけど。
とはいえ、頭では理解が追い付かない。
⋯⋯なにか、少しでも状況を理解する方法はないだろうか。
!?そうだ、この世界にはステータスとやらがあるはずだ。
そう考え、ボクは今の状況を確認するため、ステータスを開いたのだった。