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魔獣に転生した俺と、彼女の話。  作者: 池中織奈
後日談とか番外編とか
8/19

私はお金を稼ぐために冒険者になろうと思う。

「ゼノ、お金いるね」

「……俺はいらないけど、フィナは人間だからいるな」

「ごめんね、私が人間で」

 私はセラフィナ・ワイズマン……ううん、勘当されたから只のセラフィナか。

 私とゼノは学園を飛び出した。私はゼノがお嫁さんにしてくれるって言ってくれて、嬉しくてはしゃいでたけど問題はあるのだ。

 ……第一にお金。

 私は公爵家令嬢として生まれて、あの男に疎まれてはいたけど金銭的な面で困った事はなかった。放っておかれたけれどそういう面だけは大丈夫だった。

 学園からそのまま勢いのままに飛び出してしまったのもあって、正直お金がない。財布は持っていたからしばらくは大丈夫だけど。あと、とりあえず学園の制服のままというのも問題だったから、新しい洋服を買って、学園の制服は売りつけた。

 浮かれながらのほほんとゼノと過ごしていたけれど、私は人間だし、街に行くならお金はやっぱり必要だという話になったのだ。それもそうだ。

「謝らなくていいよ。フィナが人間だったから、俺はフィナと契約できて、フィナがフィナだから俺はその、好きになったと思うし」

 なんていってそっぽを向くゼノは可愛かった。

 ああ、もうゼノが大好きだ。ゼノが、私の事を好きっていってくれるだけで本当に嬉しい。

 学園から離れようって事を第一に考えて、国境を超えるまでばたばたしていて、ゼノと肉体関係はまだないけど、それでもなんかこう、ゼノが私を好きって言ってくれるだけで幸せなんだなぁって思う。

 ゼノと初めて会った時、本当に驚いた。

 あの男に殴られて、怒鳴られて。昔の私はその事に泣いていた。私の世界は閉じられていた。外に出る事も許されず、ただそこに存在していた。あの男は、私の母を愛していたのだと思う。私が生まれた時、亡くなってしまったから私はどういう人なのかは知らないけれど。そして、あの男は愛しい妻が死んだ原因を私だと言っていた。私が生まれなければって。気持ちがわからないわけじゃない。

 でもなんだかんだで私を生かして、私の面倒を見ていたのはあの男の中に少なからず私への愛情があったからかもしれない。……世間体を恐れてかもしれないけれど。

 そんな世界にゼノが現れた。怒鳴ってくるあの男と、私と距離を置く使用人たち。放っておかれた私の元へゼノはきた。

 ゼノを初めて見た時、驚いた。でも不思議と怖いとかより、なんてかっこいい虎だろうってそんな風に思った。ゼノは私の世界に色をくれた。外を教えてくれた。楽しくなかった日常が、ゼノが居たから楽しくなった。

 ゼノがいてくれたから、今の私がある。

 全てを捨ててゼノと一緒に居れたらいいのにって、あの男に会う度に思ってた。それがかなったのが本当に嬉しい。ゼノとずっと一緒に居れる事が嬉しい。

「ゼノ、大好き!」

 ゼノに抱きついたら益々慌てたゼノが可愛かった。

「お、おう。で、お金は必要だがどうやって稼ぐ? しばらく定住して稼いでから母さんの元向かってもいいけど」

「私は冒険者がどうかなって思うかな。ゼノのお母様の元へは行くとして、その後、私が何をしたいかって考えてみるといろんな所に行きたいって思ったから」

 ずっと閉じられた世界に居た反動かもしれない。ゼノと出会って、外に走りにいったりはしていたけれどそんなに遠くにはいけなかった。ゼノが見てきた沢山の景色の話をされて、ゼノと一緒にその光景が見れたらってずっと思ってた。

 だから定住するというより、いろんな場所に行きたいと私は思う。

「いや、でも冒険者って危険じゃないか」

「でもゼノと一緒に外出した時に襲ってきた魔獣倒したりしたり、大丈夫だと思うんだけど。何より、ゼノが一緒だもの」

「まぁ……俺はそこら辺の奴に負ける気はしないけど」

「それに私頑張るよ。ゼノの負担にならないように強くなるから」

「まぁ……それもありか」

「じゃあ、登録しにいかなきゃね。冒険者ギルドって近くにどこがあるかな?」

「それなりの大きさの街になら何処にでもあるだろう。適当にいっとけば冒険者の街に着くと思う」

「なら、近くの街を目指しましょうか」

 冒険者というのは、何処にでもいるものだ。何でもやみたいなもので、基本的に世界中に支部がある。そして誰でもなれるものといわれていて、正直貴族だったころは冒険者に近づくのも野蛮だといわれていたぐらいだ。

 でもゼノと一緒に外に走りに出かけた時に冒険者を見た事もあったし、冒険者の事を学んでからはそういう生き方良いなと思っていた。

 ゼノと出会って、ゼノと契約しなかったらどうなっていただろうか。私はあの男からの扱いに悲しんで、だけど逆らう事も出来ずにおとなしくそのまま過ごしていたかもしれない。そのまま、ただ閉じられた世界で生きて生を閉じたかもしれない。そんな自分、想像するだけでも嫌だ。

 ゼノが居たからこんなに楽しいと思えた。

 ゼノがいたからこんなに世界が色づいた。

 ゼノの上に跨って、街を目指す。

 ゼノの上に跨って、そのまま風を切る瞬間が好きだ。走る事が好きなのは、何よりゼノが楽しそうにしているからだ。ゼノが嬉しそうにしているのが好きだ。

「ゼノ、冒険者頑張ろうね」

「ああ」

 そんな会話を私とゼノは交わす。



 冒険者としての生活に対する不安はあるけれど、ゼノと一緒なら何でも楽しいんだってそんな風に思うんだ。





 

後日談一発目はとりあえずセラフィナ目線になりました。


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