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4.少女との学園生活

 フィナと一緒に王都の学園にいる。契約している魔獣を連れて行く事が許可されているからと、フィナは俺を連れまわした。授業中は流石に邪魔になるから勝手に散歩したりしていたが、それ以外の時間は俺を見つけて駆け寄ってくる。

 フィナは、ずっと表に出てこなかった公爵令嬢だ。だからこそ学園に入学した当初、フィナは注目されていた。表に出てこなかった令嬢。誰の婚約者かは知っていても、ワイズマン公爵家の娘の存在は知っていても、フィナがこうして同じ世代の貴族の令嬢や子息達の前へ姿を現すのははじめてだったのだ。

 入学した当初、フィナはその見た目から周りに見惚れられていた。

 フィナは綺麗だから当たり前の事だ。まぁ、婚約者――レーインが居たから下手に近づこうとしてくる男はいなかったが。女子生徒達はフィナの取り巻きみたいになっているものも結構いる。

 フィナは取り巻きはいるけれど、友人は居ないといったそんな感じの学園生活を送っていた。第一、フィナはいつも俺の傍に寄ってきていて、あまり自分から進んで誰かと共にいようとはしていなかった。

 よく考えればフィナはずっと離れに置かれていた娘で、今まで交友関係を持っていたのなんてあのおっさんと、俺と、婚約者ぐらいしかいないのだ。

 ……つか、少なくとも俺がフィナと契約してからの話だが、その異母妹にも義理の母にもフィナはあっていない。仮にも家族であるというのにと思ってしまうのは、俺が前世でそれなりに家族に恵まれ、現世でも家族仲が良いからだろうか。俺は家族仲が悪い事は悲しい事だと思うのだが、フィナにとって家族仲が悪い事は当たり前のようで、おっさんの態度とかも気にならなくなっているようだ。フィナ、強い。

「ゼノ、今日はここで食べましょうか」

「ガウゥ」

 小型化したままフィナに俺は抱えられている。何故喋っていないかと言えば、下位魔獣のふりをしているからである。別に高位魔獣だって知らしめてもいい気もするが、やはり高位魔獣と契約しているとフィナが余計に目立つし、怖がられる恐れもある。そもそもおっさんと婚約者にも隠しているから公にしなくていいかという事になった。

 小型化している俺をフィナはぎゅーっと抱きしめている。学園ではよく抱きかかえられて運ばれる。それか、フィナの肩の上に乗ってたりもする。

 フィナは昼食は食堂で取り巻き達と食べたり、婚約者と食べたりもするが、週の内何回かは俺と二人?(一人と一匹)で食べる。おっさんはフィナを嫌っているので侍女も最低限しかつけていない。しかもその侍女はおっさんがフィナを疎んでいるのを知っているから仕事をまともにしもしない。それを知ってもおっさんは動かないだろうし、フィナが家事をこなしている。公爵令嬢でありながら、フィナはそういう面で完璧なのだ。フィナの作るごはんは美味しいから俺はいつも喜んで食べている。

「ゼノ、美味しい?」

「ガウ」

 誰に見られているかもわからないので、一応喋らない。でもフィナは俺が美味しいと思っている事をわかっているから、俺の頭を思いっきりなでた。

「ふふ、良かった。ゼノに美味しいって言ってもらえると嬉しいわ」

 フィナが笑う。

 その笑顔を見ながら俺は綺麗になったなぁと思う。そりゃあ、契約したばかりの頃のフィナだって綺麗だったけど。それでもあの頃のフィナは子供で、幼さがあった。でも大きくなったフィナは十五歳だというのに、なんというか、大人っぽい。

 前世の頃の同じ年代の少女達を思い出してみると、全然違う。フィナは綺麗で、成績も良い。公爵家令嬢でもあって、ある程度の人には好かれている。でもフィナを嫌うものも学園内には一定多数は存在している。

 フィナがいつも澄ました顔をしているからかもしれない。おとなしくて、公爵家令嬢として存在するフィナは、俺と過ごしている時とは別人のようだ。だから作り物のような美しさで不気味とか言われているのを聞くと、フィナは全然そんなんじゃないのになぁと思う。

 フィナは表情豊かだ。身体を動かす事が好きだし、魔法を使うのも好きだし。いつも楽しそうに笑っている。

 もっとそうやって笑うフィナがみたいなと思う。学園は、正直フィナにとって楽しい場所ではないのだろう。フィナは、俺と走っている時の方が楽しそうにしている。正直それを見ると、いっその事学園から連れ出した方がフィナは幸せなんじゃないかとも思う。でもなー、そんな簡単なものでもないし、レーインはいいやつだから、フィナの事卒業後も幸せにしてくれると思うんだよな。

 レーインといる時フィナはおとなしくしているとはいえ、フィナはレーインの事嫌っているようには見えないし、レーインは綺麗になったフィナを見て顔を赤くしていたし。

 フィナはワイズマンって家名が好きでもないみたいだから、結婚して家名が変わればフィナも嬉しいかなとも思うし。

「ゼノ、食べないの?」

「ガウウ」

 考えて口を止めていたらフィナに心配された。


 とりあえず、フィナが幸せになればいいと俺は思うのだった。




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