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3.少女との生活

 フィナはワイズマン公爵家の娘という立場だった。

 おっさんにきつくあてられていた理由は、フィナを生んで母親が亡くなったかららしい。愛する妻の命を奪ったといてフィナに対して虐待をしているそうだ。

 すごくしょうもない理由で、自分の子供に手を挙げるとかどうなんだろうか。

 ちなみにフィナと契約したことはおっさんにも知られているが、おっさんの前に出た時は小型化していて猫かなんかの魔獣と思われているだろう。なんかフィナが俺が高位魔獣だと知られたら取られるかもしれないってそんな風に言っていた。

 なんでもあのおっさんには後妻とその子供がいて、そちらの子供をおっさんはすごくかわいがっているらしい。知られたら俺をその子のほうにやるかもしれないと涙目で言われたし、フィナと一緒にいるなら小型化しているほうが楽だからそうしている。

 俺としては別におっさんがフィナの義理の妹の元に俺をやるとか言われても自分でどうにでも出来るしそのままの格好でも問題なかったのだが、フィナが不安そうだから隠しているのだ。

 おっさんは基本的にフィナを放置していて、関わりに来る時はたまにしかないようだ。あと公爵本人にきつく当たられている前妻の子として、使用人達もあまりフィナにかかわろうとしていない。

 子供なのに可哀そうにと、俺が変わりに構うことにした。

 時々俺は妙に走りたくなるので、こっそり屋敷を抜け出してフィナを乗せて思いっきり走ったりもしている。フィナもそれが気に入ったらしく、よく走りに行こうといってくるようになった。

 契約者であるフィナが走ることを嫌がったらと思っていたけど、気に入ってくれてよかった。

 おっさんがフィナに何かしようとした時は飛び出して、それ以外の時間はフィナは放置されていたので、自由にしていた。家庭教師は必要最低限だけついていたのだが、この家庭教師はフィナに無関心で、淡々と授業をこなしていた。教師としてどうなんだと思ったが、まぁ、そういうやつもいるのだろう。

 あとフィナには友人というものが居なかった。パーティーにも出してももらえず、本当に限られた世界でフィナは生きていた。

 そういう生活を二年ほど続けた頃、フィナに婚約者が出来た。

 家のためにということで婚約者の相手は同じ公爵家の長男だった。ちなみに妹の婚約者は王子である。王子とフィナは同じ年で年齢的つり合いならフィナのほうが合うのだが、妹の方の婚約者を王子にしたあたりあのおっさんはフィナを疎んでいる。

 フィナと婚約者との初対面が行われ、俺としては良いやつだったし、フィナの婚約者がこいつでよかったと思っていたのだが、フィナは何とも言えない顔をしていた

「フィナ、不安なのか?」

「不安というか……」

「あいつ良い奴そうだし良かったと俺は思っているんだが」

「……ゼノは嬉しい?」

「おう。フィナもあいつとなら幸せになれるだろ。おっさんの所にいるより断然良い」

 本心からの言葉だったが、フィナはやっぱり何とも言えない顔をしていた。正直フィナが何故そんな顔をしているかなんて俺にはさっぱりわからなかった。



 結局翌日にはいつも通りの様子だったから、その時の様子なんてもう気にしなくなってしまった。

 


 十五歳になったらフィナは貴族達の通う学園に通う事になっている。俺は魔獣契約しているから一緒に行ける。

 それまでの日常なんて、本当今までと変わらなかった。

 変わった事といえば、フィナの婚約者が日常の中に少なからず混ざるようになったというそれだけだ。

 フィナの婚約者の前でも俺は小型化したままだった。特に理由はないが、なんとなく。そもそも俺のような高位魔獣と契約しているってことでフィナの事を婚約者が恐れるんじゃないかって心配もあったからというのもあるが。

 しかしフィナは婚約者の前では結構おとなしい。おとなしいというか、貴族の令嬢としてふるまっているというのが正しいだろうか。婚約者なんだからもっと素を出せばいいのにと思うのだが、それは俺が前世では庶民の人間の、今世では魔獣の生活しか知らないからこそ思う事なのかもしれない。実際貴族同士の婚約者達がどのように生きているかとか俺にはさっぱりわからん。

 さて、おしとやかに生きているフィナだが相変わらず俺と一緒に走りにいくのが好きだ。最近だと俺の上に乗るではなく、風魔法で風を纏って一緒に走ったり、変身魔法で魔獣に変化して一緒に走ったり(といっても俺の方がはやいけどな!)、とかしている。

 俺の契約者が走るのが好きで本当によかったと思う。それにしてもフィナって魔法の才能があるとそういう点を見ても思える。フィナも走るのが好きだからか、得意な魔法は風と変身の奴である。一緒に走りたくて一生懸命練習したといっていた。俺の契約者は可愛いと思う。

 そんなこんな過ごしているうちにあっという間にフィナは十五歳になり、王都にある学園に俺とフィナは向かう事になるのだった。




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