結婚式とこれからのこと
フィナが母さんに結婚式をするといってからの展開は早かった。
母さんは国王にまで話を通して、俺とフィナの結婚式をすることを決定した。国王にも会ったけれど、流石母さんが契約している一族というのもあって、好感のもてる雄だった。魔獣と人とで番になる例は少なからずあるけれど、一般的ではない。でも俺とフィナが番だって言われても祝福をしてくれる人は少なからず好きだと思う。
母さんのことを国王は大切に思っているのもすごくわかって、息子として俺はそのことも嬉しかった。
母さんの子である俺の結婚式なら喜んですると、そんな風にも国王はいっていた。
ちなみに俺は魔獣の姿でマントを羽織る形になるっぽい。そういう話を母さんがしていた。それにしても俺が結婚式を挙げるのかと思うと何だか不思議な気持ちになる。前世ではそういうのに縁がないまま死亡し、現世では魔獣として生まれて恋愛も番も興味なく生きていて、どちらにせよ魔獣と番になるのならば結婚式なんて挙げる予定もなかったし。人間の番が出来るなんて想像もしていなかった。でも想像も出来ないことが起こるのが人生だ。今、俺は幸福を感じている。
フィナと結婚式を挙げられる事が、嬉しいって感じてならない。
そして結婚式の当日。
《炎姫》マラノアは呼んだけれど、それ以外は母さんたちが宣伝して集まった見物人たちとかしかいなかった。ただ、俺の兄妹たちも来ていた。母さんが大々的に広めた結果、どこかで耳にしてかけつけてくれたらしい。
「ゼノラシアが人間と番とか、マジ笑う」
「にー兄さんの番、綺麗な人」
二匹がいったのはそんな言葉である。ちなみに妹のカルノノは俺のことを二番目の兄ということで、にー兄さんと呼んでいる。兄貴のことは一番目の兄ということでいー兄さんと呼んでいるのである。
フィナは俺の家族に会えたのが嬉しいのか、兄貴とカルノノを前に笑みを零していた。
結婚式でのフィナの衣装は、薄ピンク色のドレスだった。薔薇模様の飾りのつけられたベールに、体型が良くわかるドレス。フィナは、成熟した体型というか、うん、体のラインがわかるような服を着ていると大人らしい体型だってすぐわかるぐらいなんだよ。そんな服で人前にフィナが出るのはもやもやする。フィナは俺の番なのに、視線を向けられるのは嫌だなと。
「ゼノ、かっこいい」
フィナは俺に向かってにこにこと笑っていた。
ばっちりメイクをして、ドレスを見にまとったフィナは本当に綺麗で。益々惹かれた。
「フィナも、綺麗」
「ふふ、嬉しい。私、ゼノのこと悩殺できそう?」
「……できてる」
俺がぼそっと言った言葉に、フィナは幸せそうに顔を綻ばせた。
フィナがそんな風に笑っているのを見るのが俺は本当に大好きだ。
そして式が始まった。式の間中、ずっと、フィナがにこにこしていて。俺はフィナと初めて出会った時のことを思い起こしていた。フィナを俺が視界に留めたのは偶然で、フィナに話しかけたのは俺の気まぐれで。フィナの事を知って、周りが構わないなら俺が構ってやろうって、そんな風に思って。
幸せになってくれればいいって、そんな風に考えるようになった。
フィナが、笑ってくれている。それだけで俺は嬉しい。あの時泣いていた少女が、幸せそうにほころんだ表情を浮かべている。それだけで、俺は……心が温かくなるのを感じた。
誓いの言葉——まぁ、互いに愛し合いますかみたいな地球とそんなに変わらないような定型文なんだけど、それに互いに「はい、誓います」と返して、フィナがしゃがみこむ。魔獣の俺に向き合って、ぎゅっと俺の頭を抱きしめて、そして口にキスを落とす。
本当に……フィナは俺がどんな姿でいようと、俺のことを大好きだって態度を示してくれる。人化しようが、魔獣の姿だろうが、「ゼノはゼノだもの」ってそんな風に笑ってくれるフィナ。俺にキスを落として、そして幸せそうに微笑むフィナ。
温かくて、どうしようもなく幸せな気持ちになる。
見つめ合う俺とフィナのことを周りは祝福してくれていて、綺麗な姿のフィナを見れて、幸せそうにフィナが笑ってくれて、式を行ってよかったってそんな風に思った。
「フィナ、俺フィナと番になれて幸せ」
「私も、ゼノと出会えて、ゼノと番になれて、幸せよ」
そうやって微笑みあえることが、何よりの幸せだとそんな風に思った。
それから、しばらくはお城にとどまった。色々な人に祝福をしてもらって、兄貴やカルノノと一緒に笑い合って、マラノアもお祝いを沢山してくれて……。
母さんはこのままここに住んでもいいといったけど、俺とフィナは定住する気はなかった。
俺は走るのが何より好きで、一か所にとどまるのはすきじゃないし。フィナもずっと閉じられた世界にいて、国から出たこともなかったから色々な場所を見たいっていうのもあった。俺たちはそれから、色々な景色を、二人で見にいこうって飛び出すのだった。




