表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔獣に転生した俺と、彼女の話。  作者: 池中織奈
後日談とか番外編とか
10/19

俺は婚約者の事を何も知らなかったようだ②

本編でセラフィナの名前の表記ミスしていたので直しました。

 セラフィナはであった頃からとても綺麗な女の子だった。

 白銀の髪を腰まで伸ばしていて、綺麗だった。

 だから、俺も初めて会った時に見惚れてしまったし、大きくなってどんどん綺麗になっていくセラフィナにドキドキしていた。

 セラフィナは俺と会う時も欠片も、虐待されているといった事を表に出さなかった。ただセラフィナはいつも笑みを浮かべていた。そしてそんなセラフィナの隣には、いつもあの契約獣が居た。

 セラフィナは俺と会う時、いつもあの魔獣を連れていた。小型化していたから雷虎とは気づかなかった。セラフィナはいつも、あの契約獣を大事そうに見ていた。

 セラフィナは婚約者だというのに、俺に何も話してはくれなかった。何も、語ってはくれなかった。

 ただ婚約者として会話を交わしただけで、セラフィナの本音が何処にあるのかも俺はわからなかった。

 俺はセラフィナの事が好きだったけれど、それでもセラフィナがアリスを苛めたというのを鵜呑みにしてしまったのは、セラフィナが本音を全然語らなかったからというのもある。

 ……セラフィナは本当に、あの契約獣とばかりともに居た。

 学園に入ってからもそうだ。

 俺と食事をする時も、あの契約獣が居て。

 誰も寄せ付けないのに、あの契約獣の事をずっと傍に置いていた。

 俺と婚約する以前からずっとセラフィナの傍に居た高位魔獣。

 今思えば、あの契約獣はセラフィナにとって特別な存在なのだろう。

 というか、学園を去る時のやり取りからしてその事は確信している。

 学園から出る事も、国から出る事も、全てを捨てる事を一切躊躇わないといった態度だった。

『私、ゼノがいればどこでもいいもの』と、そんな風に俺が見た事もないような笑みを浮かべて言っていた。

 あんな笑み、俺は見た事なかった。

 あんな風に喋るのを、俺は見た事がなかった。

 ……俺の言葉も無視して、セラフィナは契約獣と共に行ってしまった。

 あの時の態度を見ているだけでも、俺は婚約者であってもセラフィナにとっての特別では決してなかったのだと実感して、少し悲しかった。

 セラフィナにとって、俺はきっと婚約者という名のその他大勢でしかなく、特別なのはあの契約獣だけだったのだ。

 この国で、セラフィナが大事で傍に置きたいと思っていたのはあの契約獣だけなのだ。

 その事実を実感すると、セラフィナは……、あの契約獣と共に外の世界に出れて良かったのではないかと思う。あの契約獣にのみ、セラフィナは見せる表情がある。聞かせる声がある。

 俺も、そして学園の誰もセラフィナのそんな表情も声も知らなかったのだ。

 きっと、あの契約獣の隣にセラフィナの幸せがある。

 それは紛う事なき、事実だ。

 セラフィナは俺に何も語らなくて。………というか、聞いたところで言ってくれたかも今思えばわからないけれど……でも俺はセラフィナについて知りたかった。でも知りたくてもセラフィナは何も語らなくて、何時だって笑っていただけだ。笑って、こちらの会話に頷いて、そうしていただけ。

 アリスと出会った時、セラフィナの事を知れるんだって思いもあった。だから最初近づいた。だけどそうやっていて知れたのはセラフィナが悪い奴だっていう事実で。学園内でもセラフィナの悪い噂ばかりで。噂にばかり惑わされて、本当のセラフィナを俺は全然知らなかったんだなって改めて思う。

 ……それにしても、国の上層部は冤罪であったわけだしセラフィナを契約獣の雷虎と共に連れ戻そうと考えているようだ。そして、高位魔獣の契約者で、公爵家令嬢(勘当した籍も戻すつもりのようだ)であるという事で、アリスと婚約を破棄した王子と婚約させてはという話のようだ。

 が、正直それはあれだけ契約獣と一緒に外に出れる事を喜んでいた様子のセラフィナからしてみれば良い迷惑なのではないかとあの発言を聞いていた身としては考えてしまう。

 逆に怒るのではないかというのが、俺が思う事だ。

 といっても、セラフィナの事を全然理解もしていなかった俺が思っている事なので、実際はどうかはわからないが。

 でも勘当に喜んでいたみたいだから、ワイズマン公爵家には戻りたくないのではないかと思う。少なくとも公爵位には興味がないだろう。……というか、この国に戻る気がないのならもう国境超えてしまっているのではないかと思うし。

 王子の婚約者とか、例え正妃になれるとしてもセラフィナは頷かないんじゃないんじゃないかな……。

 セラフィナが出て行ってから、ずっとセラフィナの事ばかり考えている。何をどうすれば正解だったのか、全然わからない。やらかしてしまった事は事実だし、セラフィナが俺の婚約者じゃなくなって国を出て行ったのも事実。

 だからその事実を受け入れて、前を見なきゃいけない。

 だけど……もうしばらくは、俺の中で区切りがつくまでは俺はセラフィナの事を、全然理解できなかった、全然何も知る事が出来なかった元婚約者の事をずっと考えてしまうのだろうなって、そう思う。




 空を見上げて、国を跳びだしたセラフィナが幸せであればいいなとただ考えた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ