叶わなかった恋…。
以前搭載させてたものなんですが、編集しました。内容などは同じです。
蝉がうるさい夏の日の事だった…。
その日、僕は久しぶりに会う仲間たちと一緒に騒いでいた。
懐かしい顔ぶれを前に…翌日、仕事がある事なんて忘れていた。
「あっ!もうこんな時間…やべっ」
仲間の一人である啓太が、携帯メールを確認するのと同時に時計を見る。
啓太の言葉を聞いて、僕も携帯電話の時計を見た。
すると、もう夜中の一時を過ぎている。僕たちは急いで、解散した。
翌朝、セットしていた目覚まし時計が鳴り響く。
「…あったま…いって…」
前日のせいか、いつもより目覚めが悪く、そのまま少しだけ布団の上でボケっとしていた。
コーヒーを一杯飲み、顔を洗ってから駅まで急いだ。
目の前で電車のドアが閉まり、遅刻が確実となった。
前日の事を、少し後悔した瞬間だった。
「やっちゃった…」
無惨にも進んでいく電車を見ていると、僕と同じように…電車に乗れなかった君がいたんだ…。
僕は少し恥ずかしくて…それを隠すために、君に愛想笑いをした。
君も僕に微笑み返してくれたね…。
すると、君はゆっくりと僕に近づいて来たんだったね。
「遅刻ですね?」
僕とは違い、君はなんだか落ち着いていたよね…。 電車に乗れなかったというのに…。
「あっ…うん」
僕がうなずくと、君はもう一度口を開いたんだ。
「私と一緒にサボっちゃいませんか?」
その言葉に驚いた僕の目は、大きく開いてなかったかな…?
「えっ!?」
驚いている僕を見て、君はクスクスと笑った。
「今日は素直に生きたいんです。自分の心のままに…ダメですか?」
僕は、断れなかった…いや、断らなかった。
君が…僕の好きだった人に似ていたから。今思えば…似てないかもしれないね。
「名前は?僕は神咲春人」
「上野優里だよ。優里でいいからねっ」
僕は春人でいいって言ったのに、君は僕を、春くんと呼んだよね。
その後、二人で映画館に行ったんだよね…。
「あの映画、実は観たかったんだ…」
映画を観た君は…瞳を濡らしていたね…。
僕には泣いてないって言ってたけど、泣いていたよね。
強がらなくてもよかったのに…『心の優しい女の子』話していて、そう思ったよ。
僕たちは、ほんの少し前に出会ったばかりとは思えないほど、仲良くなった。
出会ったばかりの君に…僕は、心を奪われていた。
笑ってる君…映画を観て瞳を濡らしている君…電車に乗れなくて、本当によかったと思う。
そして、映画館を出てから、昼食を食べにいった。
僕は、ハンバーグを食べたんだ。君は…ごめん、思い出せないよ…。
「ハンバーグ好きなの?」
そんなに美味しそうに食べていたのかな…ニコニコしながら、君は僕に問いかけてきた。
その後は、ゲームセンターに行ったよね。
君がかわいいと言ったぬいぐるみ…僕も君も取れなかったね…。
プリクラも撮ったんだっけ…二人して変な顔したよね。
あっという間に時間が過ぎていき…辺りも暗くなってきた頃、僕たちのサボりも終わろうとしていた。
「今日はごめんね!でも、本当に楽しかったよっ」
「ううん…。誘ってくれてよかった。僕も楽しかったから…」
キラキラと輝く星空の下で、僕は勇気を振り絞った。
「携帯番号教えてくれないかな…?また会えるよね?」
しばらく君は…黙ったままうつむいていたね。
「ごめんね…」
君はその一言だけ言って、またうつむいた。それが…どういう意味かなんて、すぐに分かる。
「いや…僕こそごめんね。そうだよね…」
そうだよね…君はとても綺麗なんだから、付き合ってる人がいるよね。
でも、君は…僕が予想もできない言葉を言ったんだ。
「本当はね…ずっと前から、春くんの事みてたの…」
まさか君が、僕と同じ電車に毎日乗ってたなんて、知らなかった。
「ずっと…好きでした…」
「えっ!?じゃあ…どうして…」
「ごめんね…」
君はその言葉を残して、走りだした。
「なんで…だよ…」
僕は小さな声でつぶやいた。
意味がわからない…僕は、君を追いかけられなかった…。だって、君の頬には…大粒の涙がながれていたから…。
僕の事なんて、もう好きじゃないんだよね…だから…泣いているんだよね…?
追いかけちゃ‥ダメだよね…?
その夜、君の事をずっと考えてたよ。なかなか眠れなかったよ。
次の日、僕はいつもより少し早く家を出て、君を待ってたんだよ。
でも…君は現れなかった。一日中君の事を考えながら…仕事をしてたんだ。
家に帰った僕は…テレビのニュース番組を見て…涙が止まらなかった…。
じっとしていられなくて…君と別れた場所に向かった。いるはずのない…君に会いたくて…。
君は…言ってたね…『今日は素直に生きたい…心のままに…』あの時から決めてたんだね…。
もし…僕が電車に乗り遅れなかったら…君はどうしたのかな…。
この恋は最初から叶わなかったのかな…。
今まで、いろんな事を我慢して生きてきたんだろうね…きっと…。
僕もそうだったから…。
でも、僕は生きているよ…。どうして君は…
あの時、僕が追いかけていれば…心のままに君を追いかけてさえいれば…
ごめんね…。気づいてあげられなくて…。
ごめんね…。
君がかわいいと言った…あのぬいぐるみ…。
今、僕の部屋にいるんだ…。
二人で撮った変な顔したプリクラ…大事にしてるからね…。
君は…どうしたのかな…?
君の分まで…これから僕は自分に正直に生きていくからね…。
君に会えて…よかった…。
さよなら…。
叶わなかった恋…。
最後まで読んでくれた人ありがとうございました。




