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ラルム  作者: 霜月なのか
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理由①

 

王の言葉に、それまで黙っていたカラートが口を開いた。

 

「・・・原因は、貿易関係でしょうか?」

「そう聞いている」


カラートの治める都・エルクはルルタス側にある。

首都エルンスト以外の全ての都は海に面しており、特にクレースとエルクには特に大きな港があり、貿易が盛んである。クレースはクラスト側に面しているのでクラストとの貿易が盛んで、逆にエルクはルルタスとの貿易が盛んである。


「最近、ルルタスから来る商人がクラストの良くない噂を流していると聞いております」


それを聞いたダリウスが眉をひそめた。


「・・・その噂なら私も耳にしたことがありますが、私は逆にルルタスの良くない噂を耳にしております」


ローゼスはあまり港側の町には行ったことがないが、領主であるダリウスはよく足を運んでいる。そのために、その噂を耳にしていたのだろう。

お互いがお互いを悪く言い合うということは、その仲が良好ではないということだ。

その事に気付いたのか、それとも初めから知っていたのか、ダリウスとカラートは黙って目を伏せた。

悩み事があると目を伏せる癖が同じなのは、流石は従弟だと、場違いな事を考えながらローゼスはサラスティアを挟むようにして存在している二つの大国について思い返していた。


ルルタスとクラストは両国ともに高い軍事力を誇る。

クラストは兵力よりも技術力に優れている。その技術は軍事関係だけではなく様々な場面で利用されている。

特に細かな技術は群を抜いており、クラストで作られた道具に一寸の狂いなし、と言われるほどだ。


ルルタスは兵力に優れ、また国内に多くの鉱山を持っている。その鉱山から採掘される金属で多くの威力の高い武器や道具が作られており、そのために兵力が高くなっていると聞く。

細かな作業を得意とするクラストとは逆に大きなもの、船や町をつくることが得意だ。

また、宝石類の産出も盛んで細工も美しく貴族の女性が身につける装飾類の殆どがルルタスによるものである。


「どのような噂だ?」


アルフレッドが、目でカラートに発言を促した。


「はい。ルルタスの商人が言うには、クラスト側が火薬を初めとして取引の量を制限している、と。サラスティアとの貿易ではそのようなことはないのに、ルルタスにだけそのような行いをしていると申しております」


火薬が無ければ、鉱山での採掘は困難だ。

ルルタスとて、火薬の合成ができないわけではないだろうがやはり精度の高さはクラストに劣るだろう。


「そうか、クラスト側の商人は何と言っている?」

「酷く、憤慨していました」


「憤慨?」


アルフレッドが意外そうな声をあげた。


「調べさせたところ、どの商人もルルタスとの間で諍いがあったと申しておりました」


「諍いだと?」


カラートがダリウスに顔を向ける。それに一つ頷いてダリウスは続けた。


「なんでも、貿易の際に無理難題を言って来たり、海上で海賊まがいのことをされた上に責任を押し付けられそうになったと」


「まあ、海賊ですか?怖い・・・」


ミスティアがふるり、と身体を震わせた。

海賊は情け容赦がないと聞いてはいるが、貴族の姫として育てられているミスティアからすれば実際に海賊行為があるなどということは想像もつかないことなのだろう。

ローゼスもまた、海賊など話に聞いたことはあれど見たことはない。


ルルタスとクラストが貿易をするには、サラスティアに行くよりも長い航海を必要とする。

地形の関係上、それぞれの国の一番栄えている港にはサラスティアを中継点にすると入ることはできないからだ。


「それは、本当の事なのか?ルルタス側はそんなこと一言も言っていなかったぞ」

「事実は分からないが、例え本当にそうだったとしてもルルタスは認めないだろう」


王の前で勝手な発言をすることは本来ならば不敬にあたる場合もあるが、王家に連なる幼馴染みのような関係である三人なのであまり気にしていないようだ。


しかし女の身であるローゼスやミスティアはこういった会議には一切出席をしたことがない。


ほとんど忘れられている状態のローゼスはどうすれば良いのか分からず視線を彷徨わせていると、王妃と目があった。


王妃リリアは口をはさむでもなく、ただじっと事の成り行きを見つめていたがいつからか、ローゼスとミスティアを見つめていたようだ。


控えめながらいつも優しい王妃は、今は険しい顔をしている。

険しい顔を見たのは初めてで思わず目を伏せて、自分の手を見つめた。


横ではミスティアが疲れた様子でため息を漏らしていた。


「陛下、そろそろルナフィート殿とスタンス殿の御令嬢を召喚した理由を言って差し上げたらいかがですか?」


王妃リリアの言葉に、ダリウスとカラートの話を聞いていたアルフレッドは深いため息をついた。


「・・・そうだな」


ダリウスとカラートも話をやめ、王に注目した。


部屋の注意は王の発言のみに注がれていた。

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