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ラルム  作者: 霜月なのか
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謁見

 

 知らせがルナフィート家に届けられたとき、使用人は困惑し、おしゃべり好きな侍女たちは密やかに噂話をし、アンナに叱責を受けていた。


そんな侍女たちも決して屋敷の外に噂を漏らすことはなかったが。


 父母はローゼスの前では決して取り乱した態度を見せなかったが、両親が困惑していることはその態度から伺えた。


 事実父と母が夜半に何度も密談しているのを目撃していた。両親としても今回のことはまさに青天の霹靂であったのだ。


 ローゼスの支度が出来たのを確認すると、ダリウスは馬車に向かい、ローゼスもそれに従った。無言のまま馬車に乗り込むといつもは寡黙なダリウスはとりとめもないことをローゼスに尋ねた。


 疲れてはいないか、謁見が終わったら観光をするか、行きたいところやほしいものはあるか、などと。

 

 それにほとんど気のない返事をするローゼスにやがて彼は口を閉じた。

 

 

 馬車の中には深い沈黙が広がっている。

 ダリウスがローゼスをひどく心配しているのは分かるが、その父の心遣いに応えることのできないほどに、ローゼスは緊張していた。

 

 その空気がつらくなってきた頃馬車は城に着いた。

 

 城は大きな堀に囲まれ、橋を渡らなければ中には入れない。その橋も跳ね橋になっており人が通るたびに上下させる。

 

 前の馬車に乗っていた警護の者が門番に証書を見せ、身分を明らかにした。

 

 城の衛兵らしく、最高の礼をとったあとに、片手を挙げた。すると上がったままであった堅牢な橋がゆっくりと下り、門が開かれた。

 

 渡り終えると跳ね橋が再び上がり、自分たちの馬車が通り抜けたのを確認した後巨大な門は閉ざされた。


 城の門は重い音を立てて閉まり、大人の手のひらほどもある巨大な鍵がガチャリと大きな音を立ててかけられた。




 その音が、ローゼスには逃げられない監獄に入れられたように聞こえた。

 



 宮殿に入ると直ぐに幾人もの衛兵と文官、侍女の案内されて長い複雑な廊下を歩き、王が執務を行う間へ案内され扉の前で待たされた。


 規則として王が許さなければ入れない間である。

 それだけに警備も厳しいはずがなぜか兵は少なかった。


 王のいる間に入ることを許され、ダリウスに続き入室するとすぐに父は膝を折った。

 

 ローゼスもダリウスに習い膝を突き、頭をたれる。

 

 目下の紅い絨毯を見つめながら王の言葉を待つ。


「顔を上げてくれ」


 ゆったりとした優しげな声が広間に響いた。


 声に顔を上げれば広間の奥、何段かの階段の先に備え付けられた二つの優美な椅子に二人の男女が座っていた。


 かれらがサラスティア王国国王・アルフレッド=サラスティアとその妻リリア王妃である。


 どちらも柔和な顔立ちでありながら歳を感じさせない美しさがあるが高圧的ではない。


 しかしそれでも思わず他を圧倒し、従わせる空気を持った人物

 

 内乱を起こさせることも無く国を纏め上げる名君と国中からあがめられている賢帝。


 それが、現国王アルフレッドだ。


「よく、来てくれた」


「陛下におかれましてはますますの御健勝のことと存じます。ルナフィート家当主ダリウス・ルナフィートでございます」


 ダリウスが恭しく胸に腕を引き寄せ膝を折り礼をとったのを見てローゼスもそれに習った。


「ダリウス・ルナフィート並びにイレーネ・ルナフィートが長子、ローゼス・ルナフィートでございます。本日のお招き、真にありがとうございます。」


 礼をとった後に顔を上げるとアルフレッドと目が合った。

 慌てて頭を下げ視線をきったが尚、アルフレッドはローゼスを見つめていた。


「ローゼス、君は一七歳だったね?」


 突然なんの前置きも無く尋ねられたローゼスは一瞬何を言われたのか分からず思わず無言で頷いてしまった。非礼に気づき慌てて、はい、と掠れた声で返すとアルフレッドのため息が聞こえた。

 

 自分が十七歳であることに何か問題でもあるのかと聞いてもいいのか悩んでいるとダリウスがその質問をした。


「陛下。ローゼスが十七であることが今回ローゼスを同席させた理由でしょうか?」


「・・・そのことについてはこれから話す」


 その時、扉が開き侍従が現れ来訪者を告げた。

 ローゼス達以外にも、呼ばれた者がいるのか、と驚いているとアルフレッドは一つ頷き声をかけた。


「入りなさい」


 その声を合図に扉が開かれた。


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