黎明から暗雲から Ⅸ
甲板平原には生きた魔物の気配は一厘も無かった。
ただ、夜明けと言う勝利の舞が静かに刻々と昇って来たのだ。
しかし、之で平和と言う訳では無かったのだ。
はぁ..と一服土産の紫煙を吐くと同時に、
ドゴォォォン!!
と言う何か爆発した様な大きな轟音が聴こえて来る。
流石に突然の轟音でビクッと身体が僅かに震えるのと同時に、甲板が傾く。
いや、此の船自体が傾き始める。転がる魔物の骸が海の方へ落ち始め、立つのが難しくなる。
「何だ!?船が傾き始めたぞ!?」
「此の儘だと、船も私達も沈むよ!!」
「.....」
「ミュハ、ペーテ、私を手を握って、飛んで早く此処から出るよ!!」
そうイデナが言うとペーテは、「頼むぞ」とイデナを握る。
「ミュハ!!早く握って!!」
「...」
「何、黙ってるの!!今も傾きと同時に船が沈み始めているんだよ!?早く!!」
大きく黒い翼を生やし、私に掌を差し伸べるイデナ。
私は其の手を握ると、二人毎、大空の方へ放り投げるかの様に大きく腕を振り、二人を大空へ羽搏かせる。
「ミュハ!?何してんの!?」
「...其の儘、飛んでくれ」
「...如何して...?」
「私が掴めば、お前は直ぐに飛べなく成る、そうすれば全員海に落ちる、だから二人だけで飛んでくれ!!」
「ミュハは如何するんだよ!?此の儘、海に沈むのか!?そんなの私が許さないぞ!!」
その此の会話の一秒一秒も船は傾き揺れ沈み始める。
ゴゴゴゴと轟音が鳴り響き、激しい水飛沫の弾丸が飛び交う。
イデナは翼はためかせ、私に近づき、もう一度、其の光る掌を差し伸べる。
「早く!!此の手を握って!!見捨てる事何て出来ないよ!!」
ペーテも一言も何も言って居ないが、其の瞳で一緒に行こうと私を見つめる。
しかし、猶予はもうすぐ消える。此の儘だとイデナも巻き込まれる。
其の最後の希望の掌を強く握ると、之までよりも強く、腕を力み込ませ、二人を大きく空へ飛ばす。
「ミュ、ハ...?」
「...今はペーテだけでも助けろ.....安心しろ、直ぐに戻るからさ」
そう伝えると、イデナはすぐさま、何処かへ飛び去った。
そうだ、其の儘、何処か安全な所まで行ってくれ。
骸も誰かの荷物も海に落ち掛け、私は手摺りを握って、何とか体勢を維持し始める。体の中の煙は後少しで全身を巡り終わるんだ。後、6秒ぐらいだ。
5、船の傾きの唸り声が響く。
4、骸の一部が海に落ち始める。
3、建物の窓硝子が割れて、誰かの荷物が落ちる。
2、他の階からも窓から骸やら荷物が落ちる。
1、甲板の床に罅が入り始め、瓦礫が吹き飛ぶ。
0、全身に煙の気配を感じる。
今だ。
手摺りを放し、海へ落ち始める。
ヒューヒューと風の切り裂く音が聞こえるのと同時に私の體は白い紫煙に生り始める
海の雫が一滴、顔に当たるのと同時に私の體は完全に煙に成った。
風等、無視して、曇が棚引き青で染まる大空へ白い煙が昇る。
そして、
ドゴォォバゴォォン、グリャァァ!!
と船から歪な轟音と共に船は逆様に沈み、船の下側が島の様に顔を出す。
そして、イデナの姿が見えて来たので在った。
その後は如何伝えれば良いか...
お前らに分かり易く伝える。
先ず、乗船して居たクザロクイワ号は沈んだ。其の轟音は凄まじくて、何処の國の舟かは解らないが、数隻の船がクザロクイワへ近づいて来たんだ。其の船は乗客の救出を目的の船だった。如何やら、此の船は此の儘、前進すれば大陸と言うか海岸...いや砂浜に当たる様な状況で尚且つ、其の大陸側でも此の船の状況が解ったのか、救出船が手配されたんだと思う。
で、イデナとペーテは其の救出船に無事、救出された。
其の数分だろうか、私も救出された、イデナとペーテが乗る船と同じのと。
そして、救出船は其の大陸の方へ戻り、私達は何か宿舎?みたいな処へ連れて行かされ、今に至ると言う訳だ。凄く倐々な出来事だな。
情報は手に入れた。
此処はセシル運河自治領と言う場所のポートフィンと言う港町に居る。
此の自治領と言うのは泰西の國の傀儡国家と言うか国と同じ様な権利を持つ管理局?らしく、言わば利益の欲しい泰西諸国の一国の傀儡が統治する処って感じだ。
直ぐ隣には別の國が在って、国名はミスル=アジャルダ王国と言う国が有るが、此の王国も一応は王国として独立して居るが、泰西諸国との何か不平等な条約やら内政干渉に苦しんでるらしい。
此処の新聞社は何て、国際的で利益主義なのだろうか。
リンフォード新聞社、如何にも泰西の名前として臭いがグシャグシャと漂って来る。亦、革命の内容さ、其れに此処は15月でも温度は有るんだな、夏場のロヴァノリヤよりかは暑くは無いが、外套脱いで、白襯衣状態じゃ無いと暑いね...
そう言えば、あの魔物の阿片窟な大型客船に私達以外にも生存者は居たらしい。
まぁ、あの船自体、かなり巨大な船だから全部屋でも巡回しない限り、生存者も居るか解らない。ただ、生存者よりも殺された奴の骸が多かったそうな。
まぁ...そうだろうな...
...お前らの為に話題を変えよう、とは言え、そんな明るい話題何ぞ、イデナとの会話で使用するし、元から無い。かと言って何か自分達に不味い様な話題も一厘も無い
じゃあ、実質名前読んだのに何でも無いと語って居る様な物だ。でも、今の話で二文も話せたんだから良いだろ?
こんな一部の人向けみたいな内容の物語の主人公が見ず知らずのお前らに話しかけてるんだから、其れだけども一種の会話だろ?なら良いでは無いか。直接的な会話では無くて、手紙みたい間接的な会話と思えば良い。
返信はしない、一方的な会話?だけどな。
まぁ..或る意味、独り言を心の中で呟いて居る様な状態さ。
部屋も一人部屋だから二人とも離れたし、ただでさえ、会話の薄糸で薄い時刻の生地を縫い合わせて居たのに、完全に材料も作業も儘成ら無い、お手上げ状態さ。何か最後の捨て台詞と言うか最後の言葉みたいな事を叫んだせいで何かこう、変な空気感が漂ってるし、まぁ、死ぬ直前だ何て、そんな最後の言葉発せれる程、猶予は無いと思うがな。
癖の液が染み込んだ、此の身体は何時も通り、煙草を吸う。
何時も通りの吸い方、何時も通り紫煙を吐き、何時も通り秒も吐息も死んだ。
大きな息を吐くと、囀りの様に儚い風の甲高い唸りだけが部屋に残響する。
其れ程までに、此の部屋は静寂やら閑散と言う言葉の具現の奇病が進行して居る。
呑気な紫煙は此の奇病に冒されず優雅に空擬きな此の部屋を硝子色に成る迄消える。
私とは対照的な動き方だ、まぁでも其の儘、私の體に吸われるんだがな、儚いね。
こうやって、口では無く心と言う第二の口で、誰にも聴こえ亡い妄想やら独り言をジャバジャバと垂れ零して居る。幸いにもお前らと言う消費者が居るから、此の第二の口から溢れる滝と言う酒は使われるんだけどな。
「もう少し、何と言うか過度な刺激よりも日常的な刺激が欲しいなぁ...」
何度も感じて来た静寂な辺鄙街の暮しは慣れて来た。其れも之も全部最悪的な者だ。如何してこう生るのか、そんな事深々と考えても解る訳無いだろう。
此の部屋も特に之と言った、興味の沸く様な物やら書籍も無いだろうし、本当に歪な砂時計の間が続いて居る。
其れから数十分は流れ切っただろうか、何か職員?に呼ばれ、何か別の所へ連れて行かれた。イデナやペーテ、他の生存者らしき者達が集って居た。
「之、どう言う状況なんだ?」
「私にも解らない、何か急に此処まで案内されたんだ」
「俺もそうだよ、何だ此処は?其れに何か始まるのか?」
絢爛豪華な大宴会部屋の様な所、私ら含めて、数十人くらいは居るだろうか、集る者達は少し髪やら身体が濡れたり、疲弊した様な表情を浮かべて居る。
どう言う状況なのかも解らない儘、時間だけが過ぎる、然し直ぐに其の状況は一変する。今度は職員?らしき者達が部屋に入って来たのだ。
十数人だろうか、安い給料で働かさせてそうな表情を浮かべた多種族な職員達が乗客達に近づくと何か話して居る。
そして、一人の職員が私にも近づくと、ロヴァノ語やトゥラード語とは違う泰西チックな言語で話し掛けて来る。
咄嗟にロヴァノ語特有の訛りが口から洩れると職員は少し困惑と言うか何かこう、僅かに蔑む様な目付きで私を見ると、別の職員を呼び出す。
私よりかは小さいが、其れでも周りの奴等よりかは高い狼獣半人の職員が変わりに話始める。此奴は完全と完璧とは評せないが、ロヴァノ語を言葉巧みに話して居る。
ただ、問題点を言えば、単語の発音がくっきりと発音してくれ無い事だな。最後の音を有耶無耶にくれるから、片頭で内容聴き取りながら、もう片頭で言葉やら文章を理解しないと行けないじゃ無いか、何て面倒な事をしてくれたな。
似非的なロヴァノ語擬きな話し方。
一応、地方や都会、農村とかで訛りみたいなのも在るには有るが、此奴はロヴァノ語は喋って居るが文章を最後まではっきりと言わない。
まぁ、でも内容は解った。
要は何処まで航海をするのか、目的地は何処かみたいな事を聞かれた。別船でミズホまで行くのかな?そう思いながら、ミズホって答えると何か鼻で笑われた。何だ此処は?体格も品格も私よりも無いんじゃないか?嗤う相手を間違えたな、今日の商品材料はお前にしてやろうか、廉価で売って、元から無い存在価値も釐にしてやろうか?
まぁ、良いさ。
ちゃんと魔物達の骸基、裏質で売れる奴は十分に確保出来た。
赦してやるよ、同胞?同種族でも民族が違うんだから、半分以下の罪悪感も無いな。
ともかく、別の意味での刺激ばかりで疲弊するよ。
私には星夜の白光をも凌駕する眩しい悪運か呪いでも罹って居るのだろうか...?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続




