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どうにもならない事

作者: 徒然草
掲載日:2026/03/07

 今回の話はバッドエンドよりです。主人公は殺人犯で罪を犯しています。誰も幸せにならないお話です。

 それでも大丈夫という方は読んで下さると嬉しいです。


 数日前、マンディー・クロス男爵令嬢とライト・ダグラス子爵令息がシャノン・アーリア子爵令嬢が雇った暗殺者に殺害された。2人の遺体が発見された事がシャノンの耳に入るとシャノンは自白した。その理由については全く語ろうとせず弁明もしなかった。シャノンが嘘を言っているのではないかと言う声も上がったが、暫くして2人を殺した暗殺者が捕まり動機を聞くと、シャノンに指示された事が判明した。


「…シャノン、頼む…教えてくれ。」


 貴族専用の牢獄にいるシャノンに会いに来たのはシャノンの父であるアレクサンダー・アーリアだ。娘であるシャノンが殺人を犯したと知った時、アレクサンダーは驚愕し怒り狂った。何故そんな事をしたのかと問い詰めてもシャノンは何も答えず、アレクサンダーをさらに焦らせ苛立たせた。シャノンが連行され、クロス男爵やダグラス子爵から子を失った事への恨みを向けられ、アレクサンダー並びにアーリア子爵家は貴族社会から非難と軽蔑の対象となった。


「シャノン…アーリア子爵家は貴族位を剥奪される事になった。」


「…っ。」


 今まで何を言われても俯いたまま何も反応しなかったシャノンが顔を上げた。


「…お前も、明日処刑される。だから頼む、最期に理由を教えてくれっ…。」


 貴族2人を暗殺者を利用して殺害したシャノンの死刑は免れなかった。しかも本人が何も弁明しないのだから情状酌量の余地は全くなく、当然の結果だ。アレクサンダーは娘が殺人犯になった事で体面も精神も追い詰められ、壊れかけていた。このまま本当に壊れて廃人になってしまう方が楽になれると思い始めていた。いや、もしかしたらクロス男爵やダグラス子爵がアレクサンダーも死ぬ事を望んで何かをし、廃人どころか死体になるかもしれない。けれど、それも仕方がないとアレクサンダーは受け入れてしまっていた。ただ、アレクサンダーは自分の精神や身に何かが起こる前に(シンディー)から事件の真実を聞きたいと思ったのだ。


「…マンディーなんかより、私の方が可愛いわ。」


「…は?」


 久しぶりに聞いたシャノンの声は掠れていた。


「…私の方が、可愛くて美人よ。胸もお尻もアイツより大きいわ。」


 シャノンは輝くような金髪の美少女だ。そして胸もお尻も平均よりも大きく社交界でも人目を引く存在だ。一方のマンディーは金髪と表現出来なくはないが、茶色にも近い色で輝いていない髪だ。そして顔も平凡な目立たない容姿だった。それはアレクサンダーが(シャノン)を贔屓していなくても誰もが思うであろう感想だった。


「…成績だって私の方が良いわ。」


 学園でのシャノンの成績は常に上位をキープしていた。マンディーの成績をアレクサンダーは知らないが、上位者として有名ではないという事は平凡かそれ以下なのだろうと考える。


「…友達も知り合いも、私の方が沢山いる。マンディーは誰とも一緒に居なかった。」


 シャノンの周りには常に人が集まっていた。今回の事件が起こった時も誰もがシャノンがそんな事をする筈がないと信じなかった。暗殺者の証言でシャノンが犯人だと判明すると皆離れていったが涙を流していたり、シャノンと離れる事を苦しんでいるような様子を見せる者が何人もいた。


「…私はライトに何度も話しかけたし気にかけた。でもマンディーは素っ気なかったわ。何時も笑顔で話しかけてくれるライトに、鬱陶しそうな態度を見せてた。」


「……。」


 今のシャノンの言葉で、アレクサンダーは理由が何なのか分かってきた。

 

「私、ライトの事が大好き。だから、マンディーが邪魔だった。ライトの眼差しを見れば分かるの、彼はマンディーの事が好きだったのよ。」


 ライト・ダグラス子爵令息は明るい好青年だ。シャノンが人気がある令嬢として有名だとしたら、ライトは人気がある令息として有名だった。アレクサンダーから見ても、シャノンとライトは隣に並べば誰よりもお似合いの2人だと思っただろう。しかし…。


「…マンディー・クロスが邪魔だったから殺したと言うのだな。だが何故…。」


「お父様、私がマンディーより劣っているところなんてないでしょう? だからもう無理だったの。」


 アレクサンダーの言葉を遮ったシャノンの言葉に、アレクサンダーは固まった。


「可愛くないなら、可愛くなれるようにお化粧すれば良い。スタイルが劣っているなら良くなれるように食事を控えたりトレーニングをするわ。人付き合いが苦手なら、コミュニケーションを取る訓練をする…難しいかもしれないけど、努力する事は出来るわ。でも、マンディーに勝つ為に、何をどう頑張れば良いのよっ!!?」


 シャノンの声が牢屋中に響き渡った。自分より格上の存在に叶わない事への嘆きを耳にする事はよくある。あの人よりも優れていたらと、妬んだり羨む事は自然な事だ。けれど自分よりも下だと思っている、いや実際に格下の存在に好きな人の心を奪われてしまったら何をどうすれば良いのだろうか…。


「…だから、殺すしかないと思ったのか。」


 努力は無意味、手の打ちようがないのならば排除するしかない。シャノンはそう判断したのだろう。だが、それで殺人が肯定される訳がなかった。


「…ふふっ、好きなだけ罵ってくださいお父様。でも、でも…まさか、ライトまで巻き込まれるだなんて思わなかったのっ!!」


 シャノンの顔が悲痛に染まり、目から涙が溢れていた。アレクサンダーはシャノンがマンディーとライトの2人を殺した理由を知りたかった。前半だけではライトまで殺した理由は分からなかったが、ライトの死はシャノンも望んでいなかった…。恐らくライトはマンディーの傍にいた事で巻き込まれたのだろう。そしてシャノンはショックを受け、激しい後悔に襲われて自白したのだ。


「…グスッ、今さらお父様に、周りの人達に謝罪しようだなんて、思いませんっ…。私は、処刑されて、地獄に落とされて当然ですっ…! そんな事はもう重々承知してますっ…でも、でも最期に、教えて下さいっ…。」


 シャノンは格子にしがみつきながらアレクサンダーを悲しそうに見た。


「私、どうすればマンディーに勝てたのですか? どうすればライトに好きになって貰えたのですか? 教えて下さい、お父様…っ!!」


「……。」


 世の中は理不尽で、どうにもならない事がある。それにシャノンの言葉だけが事実とは限らない。マンディーとライトの2人にシャノンの知らない側面があるかもしれない。けれど、それを口にする事を躊躇ったアレクサンダーは、泣き崩れるシャノンの姿を見続ける事しか出来なかった…。



 努力しても無意味な状況で、恋心に狂った令嬢が罪を犯すお話でした。努力したって格上の存在には勝てない事はよくあります。でもまだ努力してみないと分からないと希望が持てる事もあります。そして格上だから負けてしまうのは仕方ないと諦められる場合もあるでしょう。しかし、逆のパターンで何もかも自分の方が上の筈なのに…と心から思う状況になると本当の意味での手詰まりかもしれません。何を頑張れば良いのかも分からない、努力と工夫のしようがない。そんな感じのお話でした。ツッコミどころも多かったと思いますが、このような結末のお話でもここまで読んで下さり有難うございました! 

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― 新着の感想 ―
お七のようね。 焦がれて焦がれて、何もかも燃やしてしまった。
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