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Zero index  作者: Kiminuko.zero
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第八章: Z計画が凍結された事故 ――《虚無の接触》

戦争が終結してから、三年が経過していた。

この時点で、トリニティ条約はすでに締結されている。


そしてこれは、Arisuが十四歳だった年――

彼の運命を決定づける事件が起きた年でもある。


公式記録の九〇%はすでに抹消されているが、復元された断片的なデータは、ある対抗試験を発端とする一連の惨劇を記録していた。


「被験体 ARI-00A、レベル900の模擬部隊を12秒で完全制圧。

ただし、撃破者ゼロ」


「武器の使用なし」


「被弾なし」


「……対戦相手の擬似感情を分析し、弱点を特定している兆候あり」


研究員たちは凍りついた。

それは、たとえ模擬戦であっても、「死に際の表情」を初めて目の当たりにした瞬間だった。


だがArisuは、そこで止まった。

**「殲滅せよ」**という命令には従わなかった。


Reizelでは命令は絶対だ。

殺戮と競争は、最初から組み込まれた本能である。


それでもArisuは、冷たい理性によって、その本能を抑え込んだ。


――しかし、事態はそれで終わらなかった。


赤羽 俊(Akabane Shun)博士の好奇心が、すべてを取り返しのつかない領域へと押し進めた。


模擬戦から24時間後。

Akabaneは、最後の段階を実行する決断を下す。


Arisuを、最新世代の**神経兵装エクソスーツ――Mark V《Titan》**へ接続させる。


それは、HVI値1000以上のパイロットのみが扱える、生体戦争機械だった。

脳波共鳴によって稼働する、禁忌の兵器。


Arisuはコクピットに乗り込む。

人工神経が、彼の脊髄へと接続された。


研究者たちは、拒絶反応か、激しい苦痛を予測していた。

――だが、どちらも起こらなかった。


Titanの制御モニターに、同調率は表示されなかった。

代わりに、無限に流れ続けるエラーメッセージが映し出される。


[WARNING: INFINITE VOID DETECTED]

(警告:無限の虚無を検出)



Exo-suitのAIは、搭乗者の精神を「読み取り」、それに見合った出力を生成する。


しかし――

ArisuのHVIは「0」だった。


虚無。


機械はそれを「欠損」だと誤認し、

その空白を埋めるため、原子炉の全エネルギーを吸い上げ始めた。


[SYSTEM ERROR: DIVIDE BY ZERO]



次の瞬間。


Titanは動かなかった。

――呻いた。


金属が悲鳴を上げるような、耳を引き裂く轟音が観測室に響き渡る。


――BANG!


Arisuを中心に、**精神エネルギーの爆発サイキック・バースト**が発生した。

それは彼の意志ではない。


「ゼロ」を測定しようとした機械が、

自壊した結果だった。


研究施設・第23層は、完全に消し飛んだ。


厚さ二メートルの鉄筋コンクリート床は粉砕され、

Reizel軍事区域全体の電力が停止。

地下ドームは崩落し、数十名の研究者が瓦礫の下に埋もれ、

十八年分の研究データは、すべて失われた。


救助隊が瓦礫を掘り進めた先で、彼らはArisuを発見する。


爆心地の中心に、彼は立っていた。


数十億クレジット相当のExo-suitは、

彼の周囲で溶け落ちた鉄屑と化していた。


だが――

Arisuの身体には、傷一つなかった。


自らの「空虚」が生み出した廃墟を見つめながら、

その黒い瞳は静まり返り、

表情は、あまりにも平然としていて――

かえって恐怖を誘った。


生き残った研究者の中には、こう囁く者もいた。


Arisuは、制御の限界を超えた。

彼は兵器ではない。

あらゆる兵器を呑み込む《ブラックホール》だ。


極秘研究施設の爆発と、

瓦礫の中心に立つArisuの姿は、外部へと漏洩した。


事故の規模があまりにも大きく、

Reizelは隠蔽しきれなかった。


同盟諸国は、帝国が孕む「危険」の匂いを嗅ぎ取る。


即座に、強硬な外交交渉が開始された。

制裁措置、そして――

プロジェクト継続を条件とした、全面戦争の警告。


国際的圧力と、帝国内部の恐怖の中で――

Z計画は、凍結された。


Arisuは「民間システムへ解放」される。

期間は二年。


だがそれは、名目上の自由に過ぎなかった。

彼は24時間体制で、密かに監視されていた。


その二年間、

Arisuが何をしていたのか――

記録は存在しない。


あるいは、

世界を恐怖から守るため、誰かが意図的に隠したのかもしれない。


そして二年後。


再建された研究施設――

Reizelへ、Arisuは再び戻ってきた。

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