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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第50話 夏休み⑬

 最終日の朝。

 海から吹き込む風は、昨日よりも少し湿っていて、波の音が近く感じられた。

 宿のテラス席に腰を下ろし、私は氷の浮いたレモンソーダをひと口。氷がグラスの中で小さく音を立てるたび、横顔を太陽が照らす。

 水平線の向こうから昇り切った太陽が、海面をきらきらと金色に染めている。


「……今日で終わりか」

 ひとりごとのように呟いた声は、潮騒にすぐ溶けていった。


 私の水着は昨日までとは違う。深いネイビーの地に、肩紐と腰のサイドにだけ繊細なゴールドのラインが走っている。派手すぎず、それでいて目を引く。肩まで下ろしていた髪はまだ結んでいないが、波打ち際に行く前に束ねるつもりだ。大きめのサングラスを掛け、つややかなリップをひと塗り。まるで雑誌の撮影か何かのように、そこにいるだけで画になる。


「黒宮さん……なんで最後まで気抜かないわけ?めっちゃおしゃれなんだけど」

 

 背後から聞こえてきた、少し湿った声。佐伯だ。

 サングラス越しにゆっくりと振り返る。


「ふふ、いつも通りですよぉ?♡」

 いつも通りの柔らかい笑顔。だがその返しは、相手の棘を軽く包み込み、逆に突き返すような響きを持っている。

 佐伯は「ふん」と鼻を鳴らし、苦笑とも舌打ちともつかない音を残して去っていった。



やがて私はすっと立ち上がる。視線は浜辺の向こうに並んだ屋台だ。



 まずは冷たいフラッペ。かき氷よりも細かく削られた氷が、口に入れるとすぐにとけていく。マンゴー、イチゴ、抹茶と色鮮やかなカップが並び、私はマンゴーを選んだ。

「……ん、美味しい」

 自然と笑みがこぼれる。冷たい甘さが喉をすっと通り抜け、潮風で少し火照った頬を冷やしてくれる。



次に、たこ焼き。熱々のまま口に入れると、中のタコがぷりっとしていて、ソースの香りが鼻をくすぐる。頬をふくらませて食べる私を、いちごあめを持った成瀬は横目で見ながら苦笑い。

「なんか珍しいですね、そんな無防備に食べてるの」

「こういうときくらい、油断してもいいでしょう?」

「……まあ、そうですね。」

 



 他にも揚げたてのポテト、焼きとうもろこし、チョコバナナと屋台を渡り歩き、すでに両手は食べ物でいっぱい。



「ふふっ、しあわせ」

 私はこのために海に来たのだと錯覚するほど、自由だ。




 食べ終わった私はグラスを置くと、腕のヘアゴムを取る。

 両手で髪をすくい上げ、ひとまとめにして高めの位置でキュッと結ぶ。その仕草の途中、ふと視線を感じて顔を上げると、少し離れたところで佐伯がこちらを見ていた。

 視線が合うと、彼女はばっと顔を背ける。私は口角を上げ、髪先を整えてから立ち上がった。




裸足になり、足を砂に沈めながら波打ち際へ。

 足首を洗う波は冷たく、そしてすぐに引いていく。海面は陽光を受けて白くきらめき、遠くではメンバー数人がすでに水鉄砲を手にして騒いでいる。



腰くらいまで海に入り、波を手ですくったりしていると、天城が私を呼ぶ。



「黒宮さーん!こっち来なよ!」



断ろうとした瞬間、飛んできた水しぶきが肩にかかった。




「……は?」




振り返ると、水鉄砲を持った霧島。



思えば、1日目もこんなことがあった気がする。




全力で波を霧島にかける。



気付けば他のメンバーも加わり、完全な水かけ合戦に突入していた。



 私は霧島から奪った水鉄砲で、容赦なく水をかけていく。




 特に、佐伯には2倍くらい水をかけた。




 顔面に。






 そう、顔面に。




 その後も追いかけ、追いかけられ、大人顔負けの攻防が続いた。海に腰まで浸かりながら撃ち合う場面もあれば、砂浜を全力で駆け抜ける瞬間もあり、息が切れるほど笑い声が絶えない。





 海と空の青さが、最後の一日を鮮やかに彩っていた。









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