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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第5話 ロケでのトラブル

地方ロケにて。

アイドルグループLUCENTの5人は、某県の山奥で朝から撮影中だった。

テーマは「アイドル、田舎でサバイバル生活!」

炎天下、虫、泥――すべてが敵の環境である。


私はいつも通りマネージャー業務に徹し、影のサポートに集中していた。

が、そこに割り込んでくる存在が一名。



「は〜〜!虫無理!田舎とかマジ無理なんだけど〜!都会っ子の気持ち考えて!って感じ〜!」楽屋テントの外で叫ぶ声。うるさい。私だって無理だ。山の神に謝れ。



「黒宮さーん、虫除けスプレーないんですか?準備甘くないですか?」



「え~♡ 佐伯さんって虫に好かれる体質なんですかぁ?♡ 私、自分のもの他人に貸さないタイプなのでぇ♡」


「そういう返し、今どき流行らないっすよ?」



佐伯詩織(新人マネージャー候補/自称サバサバ)。

立ってるだけで疲れるタイプ。


しかもスタッフの前で、


「ぶっちゃけ黒宮さんって、何のために来てるんですか?現場で動いてるの、私じゃないです?」


と言いやがった。


「え~♡ 佐伯さんが走ってくださって助かってまぁす♡ 私、現場で目立つのが苦手なんですぅ♡」


「 そういうのって“やってますアピール”に見えるから損ですよ?」


理不尽。しかも絶妙にムカつく。


そのときだった。


撮影中のメンバーに提供される“差し入れ弁当”が、スタッフの手違いでまさかの一食分足りない事態に。

しかも最年少・天城蓮の分。

空気がピリつく。


「……あれ?オレの……ない?」


メンバーが気まずそうに沈黙する中、なぜか佐伯がドヤ顔で前に出る。


「ちょっと、それってマネージャーの仕事じゃないんですか?なんで気づかないんですか?」

例によって佐伯の“責任なすりつけ発言”が飛ぶ。


周囲の視線が一気にこっちに集まる。

ここでヘタな言い訳をすれば、雰囲気は一気に崩壊だ。


私は、静かにスッと紙袋を差し出した。


「あぁ、 それ、気づいてぇ♡ 予備でひとつ余分に買っておいたんですぅ♡

朝から佐伯さんがバタバタしてらしたのでぇ♡ 念のため〜って♡」


「えっ……」


「天城さん、どうぞ♡ ご飯冷めないうちに食べてくださぁい♡」


「え、あ……あざす」



蓮はやや困惑しながらも照れたように受け取り、他のメンバーも少しざわめいた。


「……いやマネ、神か」

「ってか、なんでそんな読めんの」

「黒宮さん、ガチできる人だった……」


ボソボソと聞こえる評価の変化。

佐伯はというと、手に持っていた麦茶のペットボトルをプシュと開けて、


「え〜? でも私なら、その場でコンビニ行きますけどね〜?」

と、なぜか得意げ。


「きゃ〜♡ さすがですぅ♡ でも片道40分なのでぇ♡ 戻って来るの夜になっちゃいまぁす♡ロケ終わってますよぉ?天城さんが倒れちゃったら困りますぅ♡」



「てか、黒宮さんってムダに有能アピールしてません? そういうの周りの士気下げますよ?」


「 佐伯さんって謙虚で素敵ぃ♡ 私なんて〜♡、有能じゃないのにやるしかなくてぇ♡ ほんと辛いですぅ♡」


黙る佐伯。私の勝ちである。


撮影の合間、成瀬がボソリ。


「黒宮さんってあれだよな……セリフ全部ふわふわしてんのに、内容は全部実弾だよな」


霧島奏が真顔で頷く。


「ただの暗殺者だよ、あれ。語尾に♡つけてるだけ」


後ろで聞いていた朝倉が吹き出した。


佐伯はまだ何か言おうとしていたが、スタッフに「こっち手伝って」と呼ばれ、渋々去っていった。


私はというと、黙々とスケジュールを再確認していた。


……仕事だから。

ただ、それだけ。


でもその日から、メンバーたちがちょっとだけ、私に話しかける頻度が増えた気がした。


私はそのたびに、いつも通りの声で返す。


「何ですか?今忙しいので急用ではないのなら後にしてください。あ、間違えましたぁ♡私でよければ伺いますゥ♡」






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