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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第49話 夏休み⑫

「……あんたたちさ」

怪談大会の後、佐伯がじとっとした目で私と霧島を見る。

「人がせっかく怖がってるのに、なんで笑うの? 空気ぶち壊しじゃん」



「だって怖くなかったんだもん」


私が正直に言うと、霧島も真顔で言う。


「まあ、全部作り話っぽかったし」




「……じゃあ、本物の映像見せてやる」

佐伯がニヤリと笑って、ポータブルプロジェクターを取り出した。


「この間ダウンロードした海外のホラー映画。幽霊、ガチで出てくるやつだから」





「お、いいね」

望月や成瀬も興味を示し、ラウンジの照明が落とされる。


ソファや床に座布団を並べ、スクリーンに映し出されるのは、夜の古い屋敷。


ピアノの不気味な音が流れ始めると、空気がじわっと重くなる。



最初はただの廃墟探索。


埃をかぶった家具、剥がれた壁紙、軋む床板。


私は普通に観察しながら「美術セット凝ってるなぁ」と思っていた。


霧島はポテチをつまみながら「このカメラワーク、酔うな」と冷静。



しかし、場面が進むにつれ、登場人物が何者かに追われている気配が出てきた。


廊下の奥に、人影のようなものがちらっと映る。


望月が「うわっ……!」と声を上げ、佐伯が得意げにこっちを見る。


そして問題のシーン。

主人公が暗いキッチンに入った瞬間──

棚の陰から、顔だけの女がぬっと現れた。


「……っ!?」

私も霧島も、思わず体がびくっと反応してしまう。


横で佐伯が「ほら!」と嬉しそうに叫ぶが──


「……いや、顔だけって……どうやって移動してんの? コロコロ転がってんのかな」

霧島が真顔で言った瞬間、私のツボに入った。


「やめて……! 転がる顔とか想像したら……!」


でも想像しちゃったらもう最後。


二人で声を押し殺して笑い始める。


さらに追い打ち。

次のカットでは、その顔だけの女が急接近してくるのだが、

映像の編集が微妙なのか、微妙にスローモーション気味で迫ってくる。


「……これ、幽霊というより、ランニングマシーンしながら大繩してる感じじゃない?」


私のぼそっとした一言で、霧島はソファに崩れ落ちる勢いで爆笑。


涙まで出てきて、全然画面が見られない。


「ちょっと! 真剣に見なさいよ!」

佐伯が画面越しに私たちを指差してくる。


でも霧島はポテチを食べながら平然と、

「真剣に見た結果、笑ってるだけだ」と返す。


その後も、霧島の妙なコメントが私の笑いのスイッチを押しっぱなしにする。


最終的に、エンディングロールが流れる頃には、怖がっていたのは望月と成瀬だけ。

佐伯は「もう二度とあんたたちとホラーは見ない!」とふくれっ面だ。


霧島はあくびをして立ち上がり、

「まあ、笑えるホラーも悪くないな」

とあっさりした口調。


私は笑い疲れて肩を伸ばしながら、外の波の音に耳を傾けた。

今夜も、怖がるより笑ってしまった──そんな夜だった。



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