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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第46話 夏休み⑨

「――じゃあ、ビーチバレーやるか」


 宮原の一言で、午前中の海遊びは新たなステージに突入した。


 簡易ネットを張り、適当な木の棒でラインを描く。誰が持ってきたのか、やたら本格的なビーチバレー用のボールまであって、思わず誰かの実家が体育館なのかと疑いたくなるレベル。


「こっちはAチーム、朝倉、成瀬、宮原、黒宮で!」


「じゃあ、こっちはBチーム、天城、佐伯、木村、望月だな!」


「え、ちょっと待って、うち明らかにバランスおかしくない!? 黒宮さん運動できるし、朝倉めっちゃ脚速いし!」


「うるせぇ、バランスとか言い出したらじゃんけんになんないだろ!」


 さっきまで海でわちゃわちゃしていたメンバーたちは、今や戦闘態勢で砂浜に立っていた。


「ルールはシンプルに、サーブは交互、11点先取な!」


「おっけー、負けたチームは夕食の片付け担当で~」


「えぇー!? それ地味に一番つらいやつじゃん!」


 空は快晴。照りつける日差しに負けじと、熱気が高まっていく。


「いっくよー!」


 最初のサーブは朝倉。ぴょんと軽く跳ねて、鋭くボールを叩いた。


 ――ぱしっ!


「ナイスサーブ!」


「いけ成瀬、アタックだ!」


「っしゃあ!」


 成瀬のスパイクが決まり、先制点。私がさりげなく後ろでフォローしていたのを、望月だけが見ていた。


「……黒宮さん、なんでそんなとこにいるの?」


「経験です」


「怖っ!?」


 そこからは、意外にも接戦。


 天城の冷静なパス、佐伯の意外なボール捌き、望月の天然ボケかと思いきやのジャンプ力――そして木村の「思い切りがいいけど方向がズレる」スパイクが乱戦に拍車をかける。


「うおおおおお!」


「ナイス! っていうか天城、そのボール取るの反則ギリじゃない!?」


「心の距離はセーフだ」


「審判どこだよ!!」


 一方、こちらはというと、成瀬と朝倉が妙に連携のいいプレイを連発し、宮原が拾いに徹し、私は……


「黒宮さんって……一人だけなんか、動きの『キレ』が違う……」


「これ絶対、体育教師の隠し子だよ」


「いやバレー部出身とかじゃね?」


「そもそもなんでこの人、泳げて、走れて、球技もできるの?怖くない?」


 そんな囁きが、天城チーム側からじわじわ広がっていく。


「マッチポイント! 次入ったらAチームの勝ち!」


 佐伯が吠えた。


「くっ、こうなったら最終奥義だわ……!」


 彼女は決意の表情で、スッと前へ出る。


「奥義、佐伯アンダー! うりゃ!」


 ボールが絶妙なカーブを描いて、私の前へ落ちる。


「――いただきます」


ギリギリでダイブ。ボールはふわっと成瀬の前に上がった。


「ナイストス!」


 成瀬、スマッシュ。


 ――試合、終了。


「はぁぁああああ!! なんでえええ!」


 佐伯が砂に膝をつく。木村もその横でぺたんと座り込む。


「うぅ……夕飯の片付け……いやだ……」


「うーわ、汗ヤバ、砂まみれ、やばい、でも楽しい」


「はい! それではただいまより、負けたチームが勝者にドリンクをおごるタイムに入りま~す!」


「勝手に決めんな天城~~~!」


 笑いが絶えない中、私は静かにタオルで顔を拭っていた。




「ふっ、何おごってもらおうかな」




「嘘、黒宮さんも乗ってる!?」





「俺コーラ!」



「じゃあいちごミルク」




「可愛いの出すなよ!」




夏はまだ終わらない。


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