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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第38話 夏休み①


「――というわけで、LUCENT関連の全日程、予定どおり進行済みです。月末の報告書も提出済みですし、ひとまずは対応完了ですね」


会議室での報告を終えて、私は深く息を吐いた。

LUCENTのプロジェクト、リーダー役としての負荷は大きかったけれど、無事に形にできたのは大きな成果だ。


「黒宮さん、今回かなり頑張ってくれたね」


部長の声に、私は軽く頭を下げる。


「いえ、 仕事ですから」


「……でさ、しばらくLUCENTの大きい動きも落ち着くだろ。なにか希望とかある?」


部長が“にやり”と笑った。私は間髪入れずに、待ってましたとばかりに言った。


「じゃあ、すこ~しだけ。 LUCENTにお休みをいただけると嬉しいです。」


「ふむ。具体的には?」


「そうですね。まあ、夏ですし、海とか貸し切りにしてはどうでしょうか」


その瞬間――


「私も!」


ドアの隙間から、いつの間にか佐伯が顔を出していた。

白いパンツスーツにグリーンのサテンのインナー。日焼け対策バッチリのくせに、露出は意外と多い。バランス感覚だけは、やたらと鋭い女。


「黒宮さんと同じだけ働いてたし! いやむしろ現場の空気とか、こっちが読んでたまであるし!」


「え? お疲れさまですぅ♡ あれぇ、佐伯さんって休みとか取るタイプでしたっけぇ♡」


「はぁ? 取るし? むしろ“適切な休暇”って大事じゃない? 社会人として」


「ですよねぇ♡ じゃあ、佐伯さんも“適切に”休んでくださいねぇ♡ 私は“有意義に”休みまぁす♡」


「うっわ。なんか今すごい嫌味入ってない?」


「えへへ♡ 気のせいですぅ♡」


部長は苦笑しながら、テーブルに肘をついた。


「……まあ、お前らが張り合ってるのはわかる。たしかに頑張ってたし、今ちょうどタイミング的には空いてるしな」


「じゃあ、海で休暇ってことで!」


「ただし! 完全な休みは、無理」


「ええ~」

と佐伯。


「なにがしか“名目”がないと、部としても通しにくい。……ほら、今度のLUCENT、撮影する予定あっただろ?」


「雑誌ですか?」


「そう。それで、日中だけ撮影入れて、あとは自由時間にすれば……まあ、帳尻合うな」


「え、それ、行きます行きます! めっちゃ仕事します!」


佐伯が即答した。


「海ロケとか、私むしろ向いてるし! 水着だってイケるし!」


「ふぅん……そういう“前のめり”、大人としてどうなんですかねぇ♡」


「黒宮さんこそ、“張り合うならこっちもやるけど”みたいなスタンスやめた方がよくない?」


「えへへ♡ そのへんは、大人の余裕ってことでぇ♡」


佐伯と私は、笑顔でにらみ合った。

でも部長はもう、それすら“いつものこと”として処理しているようだった。


「というわけで、OKだ。LUCENT全員で。メンバー対応と撮影補助、あと現地のスケジュール調整も兼ねてだな」


「了解です!」


「承知しました」



そして、数日後――


私たちは、都内から新幹線と特急を乗り継ぎ、海のきれいな地方都市に降り立っていた。

日差しは強いが、海風が心地よい。エメラルドグリーンの海が駅の向こうに広がっている。


「うわ~~~、映えるじゃん! バズるやつじゃん!楽しみ~!」


「佐伯さん、仕事で来てるの忘れてませんかぁ♡」


「わかってますけどぉ? ……ってか、黒宮さん、その服どこで買ったの? 海仕様?」


私は髪をおろし、白いワンピース、メイクもしている。


「ふふ♡ シンプルに、紫外線対策ですぅ♡」


「……なのに白で爽やか出してくるの、計算じゃん」


「なにか問題でもぉ?」


私たちが牽制し合っている間に、霧島と天城が荷物を運んでいた。


「……なあ天城、なんであの二人って“休みを楽しむ”ことすら対決なんだ?」


「知らんけど、もはやライフスタイルなんじゃね?」


「怖ぇよ……」


海風にまぎれて消えていった。




その日の夕方。

海辺のリゾートホテルにチェックインし、翌日の撮影に備えた打ち合わせが行われた。


「黒宮さん、明日は朝から撮影班と連携お願いしますね。ロケ地確認と、LUCENTメンバーの衣装確認まで」


「了解でぇす♡ 水着の色味とかも、バランス見ときまぁす♡」


「……さすが黒宮さん、“水着監修”までやる気なの? そういうとこ、女子が引くよ?」


「え、そうなんですかぁ♡ じゃあ、佐伯さんが引いといてくださぁい♡」


「……」


「……」


再び沈黙。朝倉がため息をついた。


「もう、この二人ずっとこうだな……」


「いや逆に、平和なんじゃね? このままなら」


「それもそうか……」


海の夕日が赤く染まり、私たちの3日間の“夏休み兼仕事”が、始まった――。

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