表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/47

第35話 大型企画の代表責任者は?⑨

「こないだの講演会、行ってきました。LUCENTの前CMプランナーだった方の」


佐伯が何気ない顔で言ったのは、水曜の昼休憩中。


「私、前からそういうところちゃんと勉強してたんで。繋がりも、ちょっとできたかも?」


「 すごいですねぇ」

私は書類を整理しながら軽く返す。


「っていうかぁ、講演ってチケット制でしたよね♡ あれ、応募抽選だったはずですよ?」


「うん、まあ“招待枠”で。関係者にちょっと聞いてみたら、席が取れたんだよね」


「へぇ♡ それってぇ、仕事の繋がりじゃなくてぇ、“私的ルート”ですかぁ?♡」


佐伯は一瞬、目を細めて口元を吊り上げた。


「なんか、黒宮さんってほんと、言い方が刺してくるよね?」


「え~? ごめんなさぁい♡ 刺さっちゃいました?♡」


午後の社内チャットで、企画チームからこんなメッセージが飛んできた。


【件名:次回プロモに向けた参考資料】

LUCENT前任担当の講演レポート資料です。佐伯さんからの共有。チーム内でご確認ください。



私はレポートのPDFを開いた。




中身は――薄かった。

誰でも書けるレベルの“綺麗事”と、“佐伯の名前がそれとなく入ったフレーズ”が数か所。


夕方。


「黒宮さん、あの資料、回していただけますか?」


営業チームの若手・浜田さんが来る。


「もちろんです。あっちの講演資料より、具体的ですよ。」


「えっ、やっぱ内容スカスカでした?」


「ふふ、 あくまで主観ですが」


翌日、部長がポロリと漏らした。


「この前、外部から“佐伯って子、勉強熱心だね”って声があったぞ。講演で会ったとかで」


「“勉強熱心”って、内容次第ですよね」


私はにっこり笑って、すでに提出済みの“実践的報告書”の副本を差し出した。




昼、社内の共有スペースで佐伯が誰かと話している。


「……黒宮さん、なんか“やりすぎ”っていうかさ。全部自分でやらなきゃ気が済まない人なんだよね、あの人」


「 それ、壁薄いんですよぉ♡」


私はコーヒーを片手に、後ろから声をかけた。


佐伯は一瞬固まって、それからふっと鼻で笑った。


「うん、でも私、“立場”って自分で作るもんだって思ってるし」


「そうですよねぇ♡ “責任取れる人”が言うと、説得力ありますよねぇ♡」


金曜の終業間際、部長からまた通知が出た。


【件名:次期CMキャンペーン会議メンバー選出について】

現場報告書、調整進捗、外部評価などを総合し、以下2名を次期会議メンバーに選出する。

・黒宮

・佐伯(※補助的役割)


佐伯の名前はある。が、“代表責任者”ではない。あくまで「補助的」。


「……あれ?」


佐伯が、印刷された紙を見て口を開く。


「これ、私……サブ、なんだ……」


私は目を合わせず、書類に判を押した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ