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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第30話 大型企画の代表責任者は?④

「……提出期限、前倒しになったって」


その日の午後、社内チャットで共有された一文に、佐伯がぴくりと眉を動かした。


「はやっ。ねぇ、黒宮さん、それ聞いてた?」


「 今、初めて知りましたぁ♡」


私はスマホを見ながら、にこりと微笑む。


佐伯は目を細め、口角を上げる。


「ま、いっか。黒宮さんって、たぶん“計画的にやる派”でしょ? 私、こういうの“早く出す方がいい”と思ってるんだよね」


「出すの早くても、中身がスカスカじゃ意味ないですもんねぇ♡」


佐伯の目元がピクリと動いたのを、私は見逃さなかった。


翌朝。

プロジェクトのレビュー会議にて。


「ふむ……黒宮、資料のこの比較図、いいな。先方にも見せたい」


部長のその一言で、会議室の空気が揺れる。

佐伯が一瞬、ノートのページをめくる手を止めた。


「比較図は、現場スタッフのヒアリングをベースに再構成したものです。――佐伯さんのヒアリング内容も、すごく参考になりました。」


そうやって“功績”を分散するふりをしつつ、私は先に“信頼”を取る。


佐伯は唇を尖らせながらも、声を張った。


「まぁ、情報出したのは私なんで。現場とちゃんと向き合ったって意味では、伝わったかなって」


「うん、でも黒宮の方が“使える形”になってるな。実務に落とし込むとしたら、こっちの資料がベースになる」


そう言ったのは、営業部の関口だった。

その後も、総務の梶原、広報の宮野と、黒宮支持のコメントが続いた。


佐伯は、椅子の背にもたれかかって、あからさまにため息をつく。


「みんなさぁ……“きれいに整ってる資料”ばっか重視してない? ほんとの中身、見てる?」


「中身も整ってましたよ?」


思わず口にした天城の言葉に、佐伯はちらっと睨みをきかせた。


「……まぁいいや。どうせ、上が決めるんだし」



しかし、打ち合わせが終わってすぐ、私は“わかりやすい”動きを見ることになる。



「すみませーん、部長いらっしゃいます?」


昼休み、佐伯はお菓子の袋とペットボトルを手に、部長席の周囲をうろうろしていた。


「たまには、こういうの差し入れしとこうと思って~。いつもお世話になってますし!」


「お、気が利くな佐伯!」


「いやぁ~それほどでもないですって~!」


遠目に見ながら、私はパソコンの画面に視線を戻す。

手元には、次のミーティング資料。


彼女が“見せたい動き”をしてくるたびに、私は“見せない実務”で、着々と差をつける。


勝負は、始まったばかり。

でも、たぶん――佐伯にはもう、それが分からなくなっている。

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