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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第28話 大型企画の代表責任者は?②

レポート提出期限の3日前、18時過ぎ。

静まり返ったオフィスで、私はパソコンに向かっていた。


提出用の現場レポート。

佐伯は“スピード”を武器に、すでに提出済み。

だが――中身は、薄い。


現場ヒアリングの内容は“印象論”が多く、分析項目の粒度もバラバラ。

でも、“熱意”だけは伝わる。

それが、彼女の計算だ。


「黒宮さん、今日まだ帰ってなかったんですね〜」


不意に聞こえた声に振り向くと、そこにはまた佐伯がいた。


「ちょっと気になって見に来ちゃいました。追い上げ中ですか?」


「佐伯さんは、もう出されたんですよねぇ? すごいですぅ♡ 早いってだけで、“できる人”って思われますもんねぇ♡」


「いやいや、そういうの、後追いで“修正”する人がいるから成り立つんですよ?」


「えぇ♡ でも私、“修正担当”じゃないんでぇ♡ “最初から完成させる系”なんですぅ♡」


「……ふぅん」


佐伯はあからさまに苛立った目をした。

でも、あくまで笑顔を崩さない。

今の彼女は、“勝ち筋”を見出している顔だった。


「ま、あとは部長の判断ですけどね。あの人、“熱量”で見てくるから」


「そうですねぇ♡ “熱量”って、分析できないんですよねぇ♡」


「……は?」


「そういうものに頼るって、たとえば“失敗したときの説明責任”どうするんですかぁ?」


佐伯が一瞬言葉に詰まったのを確認し、私は静かにプリンタの電源を入れる。


「……ま、いいです。黒宮さんのレポート、楽しみにしてます。私のより“完璧”なんですよね?」


「え~? “完璧”って言葉、好きなんでぇ♡」


プリントアウトされたレポートは、全部で14ページ。

データ、グラフ、要点整理、そして現場ごとの課題と提案の一覧。


“読み手の目線で構成されている”というだけで、

読み手の脳みそには、ちゃんと残る。


翌朝。


レポート提出の場には、制作部の部長、広報の係長、そしてLUCENTのプロデューサーまで来ていた。


「……うーん。二人とも、よくやったな」


部長が唸る。


「黒宮、お前のレポートは“分析資料”としては申し分ない。佐伯の方は……そうだな、“現場の肌感”を伝えるには役立つ部分もある」


私は微笑んで一礼した。

佐伯は、不機嫌そうに腕を組む。


「で、どっちを“現場マネジメント役”にするか、だが――」


ピリ、と空気が張ったその瞬間。

プロデューサーが口を開いた。


「――このプロジェクト、内部構成は二人制にしたらどうです?」


「えっ」


「一人は“現場マネジメントの監督”。もう一人は、“現場サイドの連携役”。

黒宮さんは“進行と報告”。佐伯さんは“現場からのフィードバック収集”。

それぞれ得意なとこやらせて、合体させる形で回しましょうよ。佐伯さ

んもマネージャー候補ですし。」


佐伯の目が一瞬、輝いた。


「つまり……私も入るってことですよね?」


「まあ、“現場寄り”の役割でね。あくまで、黒宮さんが主導になるけど」


「……」


佐伯の顔から、ほんの一瞬、表情が抜けた。


私は、静かに頭を下げる。


「ありがとうございます。精一杯やらせていただきます。」


部長が笑って席を立った。


「じゃあ、今日から正式始動だな。二人でしっかり連携してくれよ。頼んだぞ」


「……はい」


「了解です。」


――この瞬間、佐伯は勘違いしている。

「同じ土俵に上がった」と。


でも、それは違う。

上に立ったのは、こっちだ。


下請けじゃない。

“メイン”で回すのは、私。


そして私は、そのことを―


わざわざ、言ってあげたりはしない。

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