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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第27話 大型企画の代表責任者は?①

「次の大型プロジェクト、LUCENT関連で一本いくみたいですよ」


社内の会議室。週末の打ち合わせを終えた帰り、制作部の奥田さんがぽつりと呟いた。


「うちの部署からも、誰か一人“代表責任者”って形で関わるんですって」


「代表責任者って、すごいですね。」


「黒宮さんなら余裕ですよ。まあ、上の人がどう判断するかだけど」


そういう社内の“軽口”に一喜一憂するほど、私は子どもじゃない。


しかし。

そういう話って――なぜか、ちゃんと耳に入る人には入る。たとえば――


「やっぱ、来たよね~そういう話!」


白いノースリーブにジャケットを肩掛けした佐伯が、ドアを開けて入ってきた。


「だって、私そういう“大きい舞台”向いてると思ってたし? 現場でも動けるし、頭も回るし、こう……適材適所っていうの?」


「お疲れさまですぅ♡」


「てか、黒宮さん、次の案件狙ってるんですか? え、違うなら私いくけど?」


「ん~、 仕事なんでぇ♡ 割り当てられたら、頑張るだけですよぉ♡」


佐伯はにんまり笑って、髪をかきあげた。


「そうなんですか~。ま、現場で評価されてる人がやるべきだしね? 黒宮さんって、最近ちょっと“まとめ役”みたいなポジションになりすぎてるし」


「うふふ♡ 佐伯さんも“まとめられてる側”として、頑張ってくださぁい♡」


その日から、妙に空気が張り詰めた。


社内資料の共有でわざとミスを指摘してくる佐伯。

「黒宮さん、最近ちょっと雑じゃないですか?」と、周囲に聞こえるように言う。

資料の提出順やメールの宛先で、まるで“自分が回してる”ように仕向けてくる。


私は黙々と修正対応しながらも、口元だけは笑っていた。


「すみません♡ 佐伯さんが完璧すぎてぇ♡ ミス、全部拾ってもらえて助かってまぁす♡」


そして迎えた月曜朝。部長から指示が出る。


「例の大型プログラム、企画推進担当として、“現場マネジメント役”を1名選出する。お前らのどっちかになると思うが、まずは現場レポート作って提出しろ」


「了解しました!」


先に声を出したのは佐伯だった。食い気味に、手帳を構える。


「私、LUCENTメンバー全員の直近スケジュールチェックしてあるので、そっちの分析とリンクさせて出します。あと現場スタッフからもヒアリング済みです」


「お~ぅ、動き早いな」


部長が苦笑し、佐伯はちらっと私を見る。


「黒宮さん、レポート得意そうだから、あとから“仕上げ”だけやってもらえば?」


「やだぁ♡ 佐伯さんの“下請け”みたいでぇ♡ でも頑張りまぁす♡」


「……は?」


私たちのやりとりに、向かいのデスクで書類をめくっていた霧島が小声でぼやく。


「佐伯、普通に攻めてきてるな……」


「ただの資料戦じゃん。黒宮さんに勝てるわけないっしょ」


隣の天城がぼそっと返す。声が聞こえていたのか、佐伯が振り返った。


「え? 何? 私、ちゃんと“現場寄り”の意見出してますけど? 黒宮さんより感覚あるし?」



私は立ち上がると、何も言わずスッと自席を離れた。


佐伯が小さく舌打ちしたのが聞こえた気がした。



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