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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第22話 会議

控室のホワイトボードに、無意味に大きな文字でこう書かれていた。


「LUCENT個性活用・マネジメント強化会議(仮)」


命名者はもちろん、上層部。

内容はというと、「LUCENTのメンバー1人ずつを“深堀り”し、マネジメント方針の見直しを検討」という、なんとも抽象的かつ面倒な企画だった。


「え、てかこれ、必要あります?」


佐伯詩織が口を開く。開幕早々、空気がやや淀んだ。


「個性活かすって、普段からやってません? てか私けっこう見てるし、言わなくても伝わるんで~」


はい、出ました。「察してほしいサバサバ系」モードである。


私はスケジュール帳を片手に、淡々と進行表を読み上げた。


「今日は“導入編”ということで、全体確認とメンバーの印象整理だけです。“言わなくても伝わる”のは、だいたい伝わってません」


「……なんかチクリと言いました? 私、結構コミュ力あるほうなんで、言葉にしなくても空気とかで…」


「それ、霧島さんに通用しますか?」


「……無理ですね」



LUCENTの5人はというと、飲み物を手にまったりと座っている。こういう謎会議には慣れっこだ。というか、もう諦めている顔だ。


「じゃあ順番に、“この人にどんなマネジメントが向いてるか”の意見を聞いていきましょうか」


私がそう言うと、佐伯がすかさずメモ帳を取り出して――


「メモします! こういうの得意なんで!」


誰にも頼まれてない。しかも蛍光ペンで、すでに3色使ってる。早い。


「わたし、こういうとき“発言整理”とかできるんですよね〜。まあ、みんな苦手かもですけど?」


あまりの謎アピールに、メンバーの望月がぽつり。


「え、佐伯さんって……そういうキャラだったんですか?」


「……ん? キャラとかじゃなくて、普通ですけど?」


素で言っている。


私が進行を戻す。


「ではまず、天城くん。最年少ですが、周囲への気遣いは随一。何か配慮している点は?」


天城蓮は静かに首をかしげて、


「え、配慮……ってほどでも。空気壊すの面倒なんで、波風立てないだけっす」


「ほら〜!そういうの言えるの、大人〜!」


と佐伯が反応。

天城はそのテンションに少し眉をひそめてから、


「……でも、たまに“波風立ててる人”がそれ言うと、説得力ないっすね」


空気が止まる。


佐伯は「え、誰のこと?」と笑っていたが、誰も答えなかった。



会議は進み、マネージャーに言いたいこと、のコーナー。


望月が少し考えて言った。


「マネさんって、表情あんまり変わらないですよね。紫音と話してるときとか、無表情同士で“読み合い”してるの、ちょっと面白いです」


朝倉が頷く。


「黒宮さん、たまに笑うときがある。それを目撃したらその日ラッキー」


「ポケモンの色違いみたいな言い方やめてもらっていいですか?」


私が淡々と返すと、メンバーが笑った。


その空気に、佐伯が少し焦ったように、


「いやいや、でも私もわかりますよ? 黒宮さんって“たまにだけ優しい”ですよね?」


「ん…?」


「なんかごまかしてるけど、素はたぶん冷たいというか……」


言ってから、あれ?という顔をする佐伯。


空気が妙な沈黙に包まれた。


成瀬が、わざとらしく声を張った。


「俺は黒宮さん、めっちゃ助けられてますけどね!」


さすがリーダー、空気の読解が早い。

しかし佐伯は納得いかない顔のまま、


「でも……“助けられてる”っていうより、“操られてる”って感じしません?」


霧島が噴き出した。


「それ、自分が一番操られてる自覚ない奴が言うセリフ」


会議が終わったあと、佐伯が控えめに呟いた。


「てか、私が出したアイデア、結局何も採用されてないんですけど?」


私は淡々と返す。


「“空気読める人”って、自分から“読める”って言わないですよねぇ?」


「……なんか今日、ずっと言われてる気がする」


「気のせいじゃないですかぁ♡」



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