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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第19話 メンバー⑤ リーダーについて

スタジオ控室の空気は、朝からどこかピリついていた。

理由は明白。佐伯詩織が、今日も“自分ルール”で周囲をかき乱しているからだ。


「ねえ、黒宮さん。今朝のロケ場所変更、もっと柔軟に対応できなかったんですか? 前日に伝えるのって、なんか不親切っていうか」


相変わらず、理不尽なサバサバ理論で絡んでくる。

私は笑顔を浮かべたまま、メモ帳に視線を落とす。


「ごめんなさぁい♡ 柔軟さって“予定を崩していい自由”じゃなくて、“崩れない準備”のことなんですぅ♡」


「……なんかそういう返しって、相手の話聞いてない感じしますよね?」


「詩織さんこそ、“返す言葉”より“返せそうな感じ”で会話してますよねぇ♡」


「え、どういう意味? それって私のことディスってます?」


「ふふっ♡ いえいえ、ただの“観察”ですぅ♡」


そんなやりとりを横で聞いていた成瀬が、唐突に笑いながら口を開いた。


「……黒宮さんって、全部わかってて言ってるよね」


彼の明るい声に、部屋の空気が一瞬ゆるんだ。

佐伯は言葉を失い、口を開いたままフリーズしている。


マイクの位置確認も、衣装のヨレ直しも、私が何も言わずとも彼は自分で済ませる。


「成瀬さんは、この配置どう思いますか?」

私が聞くと、彼は飲んでいたミネラルウォーターを一口飲んで、軽く笑った。


「まかせる。黒宮さん、だいたい正しいし」

「だいたい、っていうのが地味に失礼です」

「いやいや、100%正しい人って逆に怖いから」

「じゃあ、99.8%で」


霧島が後ろでぼそっとつぶやく。

「それ、こっちが訂正しても聞かないやつだな」


ロケが終盤に差しかかる頃。メンバーが一息ついていると、佐伯がふと口を開いた。


「でもさ、リーダーって盛り上げ役じゃないと意味なくないですか? 空気読むとか、元気出すとか。思ったより喋んないリーダーって、なんか損してる気がする」


彼女の“サバサバ意見”に、少しだけ室内が静まる。


私は笑顔を崩さずに答えた。


「詩織さん、リーダーって「声が大きい人」じゃないんですよぉ♡」


「……でも実際、盛り上げられない人って、信頼されなくないですか?」


「“役割”と“期待”を混同すると、組織壊れるんですよぉ♡」


ぱちん、と軽くホワイトボードを閉じて私は笑った。



佐伯はまたも何も返せず、手にしていたペンをくるくると回し続けた。


天城はそっと成瀬に飴玉を渡していた。


「……糖分、必要かなって。いつも助かってる。」

「……ありがとう。」


帰りのバスで、私はいつものようにタブレットを開き、明日のスケジュールを確認していた。

その隣で、成瀬がイヤホンを片耳だけ外してこちらを見た。


「……さっきの言い方、ちょっと悪かった?」

「いえ、むしろ助かりました」


「ならいいけど。時々“真顔のジョーク”みたいに聞こえるんだよな」

「実際、半分はジョークです。」


「こわいって」


私は画面に視線を戻した。

外は夜風が涼しかった。


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