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塩マネージャー vs サバサバ系女子、私が選んだ対抗策は ‘ぶりっ子’ でした  作者: 雨宮 叶月


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第14話 乾杯は戦いの始まり⑤

「っていうかさ、私って、正直で素直なタイプなんだよね」


また始まった。


佐伯詩織の唐突な“自己評価タイム”に、テーブルの空気が凍る。

飲み会終盤。場がほどよくゆるみ、そろそろ締めに向かう――はずの時間だった。


「媚びるのとか無理だし、嘘つけないんだよね。そういうのって損するタイプなんだけど、でも自分には正直でいたいっていうか」


霧島がそっとつぶやいた。


「……誰か止めろよ、もうそれ地獄の入口だろ」


「黙ってるのが正解なんだよ、こういうのは」


朝倉紫音は枝豆のサヤを並べながら、無表情で返す。


佐伯は止まらない。


「でも職場って、結局そういう本音言える人が損する場所じゃん? だからなんか、黙ってる人のほうが得してる感じってモヤる」


私は氷をカラリと鳴らしながら、やわらかく微笑んだ。


「詩織さん♡ それ、“本音を言う勇気”っていうより、“配慮できない無遠慮”に聞こえちゃいますよぉ♡」


「は? 違うし。私は空気読めないんじゃなくて、あえて読まない主義だから」


「主義、多すぎませんかぁ?♡ ちなみに今ので3つ目くらいですよぉ♡ “推し作らない主義”と“媚びない主義”と〜……」


「自分を持ってるってこと!」


「“持ってる”んじゃなくて、“手放せてない”だけですよぉ♡」


天城がボソッと漏らす。


「黒宮さん、あんな柔らかい声で人のメンタル切ってくのすごいよね……」


望月颯真は静かにうなずく。


「ていうか、佐伯さんって“誰も聞いてないのに自己紹介始める人”に似てるよね」


朝倉がうんざりしたように言う。


「『私は○○な人なんで〜』って言う人ほど、他人に“そうは思われてない”の法則だね」


佐伯は少し赤くなりながら、グラスを置いた。


「……なんかさ、今日一日見てて思ったけど、やっぱりこのチーム、雰囲気堅くない?」


沈黙。


「もっと言いたいこと言い合える関係って、良くない? そっちのほうが風通しもいいと思うんだけど」



「えー、それって“私の言いたいことは言わせろ、でも他人の反応は気にしたくない”ってことですかぁ?♡」


「……」


「それって、対話じゃなくて、“一人演説”ですよぉ♡」


天城、肩を震わせて笑いをこらえる。


「言い方やば……」


「でも図星……」


成瀬が手元の水を一口飲んで、静かに言った。


「一番風通し悪くしてるの、自分ってパターンよね。だいたい“風通し”って言い出す人、現場で煙たいんだよな」


佐伯、黙る。


黒宮はテーブルの伝票を手に取りながら、やさしい声で締めに入った。


「今日は楽しかったですぅ♡ 特に詩織さんの“個人主張ショー”、耳が鍛えられましたぁ♡」



「では、明日も早いので、そろそろ解散しましょう。」


一同、無言でうなずいた。


佐伯だけが少し残されたような顔をして、ストローを噛んだ。


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