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邂逅の花  作者: 才川 翔
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別れ

2006年8月31日


ここに来て、何時間が経過したのだろうか。

明るかった空は黒く染まり、隠れていた星々が夜空で輝いていた。

僕の座るベンチから、公園の時計台を見ると時刻は二十一時を回っていた。あの子との待ち合わせの時刻は十五時だ。


「大切な話があるって、君から約束したのに…」


あの子に何かあったのか、それとも単に忘れているだけなのか。

僕はあの子の連絡先を知らない。家電、携帯、ましてや家の場所までもだ。

だから、こうやって待ち続けている。


「二十一時…」

「あっ、しまった」


あの子と会うことで頭がいっぱいになっていたが、とっくに門限の時刻を超えていた。そもそも二十一時なんて、小学生が外出していい時間ではない。家に帰ったら絶対に、お母さんに怒られる。

僕達は、この公園でほぼ毎日遊んでいた。だから、また僕がここへ行き続ければ会えるはずだ。それに、今の僕には、どうすることもできないのだから早く帰って、お母さんに謝るのが賢い選択だ。


「もう、帰ろう」


僕はそう呟くと、重い腰をベンチから持ち上げ、一歩を踏み出した。

その瞬間、足裏に何か柔らかいものを感じた。雑草だろうか。

いや、違うな。

恐る恐る、足元を見ると白いものが靴に付いていた。

紙切れだ。

僕は足を持ち上げて紙切れを手に取ると、その正体を確認するために、手を眼前に移動させた。

紙切れは三角形のような形をしていた。おそらく、長方形の紙を対角線方向に千切ったのだろう。紙切れの上部にはテープのようなものが付いていた。更に紙切れをよく見てみると、文字が書かれていた。

ペンのインクが滲んでいるせいで、読める部分が少ない。

僕は、読める部分の文字を読み上げた。


「【立花咲より】【2013年4月1日】【隠した。目印は君が持っている】」

「これって…まさか…」


紙切れの正体は手紙だった。しかも差出人はあの子、立花咲だった。

僕は、慌てて手紙の裏面を見たがそこには何も書かれていなかった。


「これじゃ、何もわからないよ…」


その日以降、僕は毎日公園に行き続けた。

しかし、僕の思いも空しく、咲と一度も会うことができなかった。

咲は、僕に手紙だけを残して、姿を消した

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