3.18.80 中核都市バンリャガ
『絶命の森』って、まさに『入ったら死ぬよ♡』的なネーミングである。
確かにあの森はヤバいモンスターだらけの地獄みたいなところだった。
やはり現地人でも近づかないような危険地帯だったようだ。
いきなりそんな危険度MAX地点からスタートとか、やっぱりあのクソガキ、邪神すぎるじゃねーか!
と、内心怒りを覚えながら、遠い目になる真一だった。
ただし危険地帯とはいえ、キルナみたいに訪れる冒険者もいた。
生きていけないレベルと言われると、話が大げさ過ぎないかと考える真一だったが、、、
「いや、そうでもないぞ。絶命の森って言っても外縁部は割と弱いモンスターしかいないらしい。いくつか村もあるそうだ」
「へぇぇ、さすが班長、物知りっスねぇ」
やはりミコミちゃんの村などの存在は、詳しい人間には知られているようだった。
班長と呼ばれた体格のいい男は、それなりに知識がありそうである。
「で、班長、こいつら何の獣人なんですかい?」
「いや、知らねえよっ!ってかお前ら、獣人なのか?」
「ミュイ〜、エピーはカミュリャムだよっ!」
「うん、そんなとこというか、、、ごくごく普通の獣人、、、みたいなものです」
とりあえず話を合わせて獣人の一種だと押し通すことにする真一。
ただし内心では『獣人っているんだ!』と、密かにテンションを上げていた。
「かむらむ?見たことも聞いたこともねぇぞ」
「普通なのか?」
「まぁ、獣人なら三つ首のもいるんじゃねぇか、よう知らんが」
門番たちの口ぶりからして、どうやらこの世界にはいろんな種類の獣人がいるらしい。
それも普通の人ではとても全ての種類を把握できない程に。
そのあともどうにかこうにか話を合わせていくと、真一たちもマイナーな獣人の一種ということでゴリ押すことができた。
最終的には班長も入場を許可してくれたのである。
「まぁお前らは話が分かるっぽいから通っていいが、問題を起こしたらどうなるか分かってるな?」
「分かんないニャミュ〜♪」
そりゃ、ドリーに分かるはずがない。
そもそもこの世界の犯罪者がどういう扱いになるかなんて、真一にだって分からない。
「ミュイ〜、問題ってどういうの?」
それ以前に何が違法になるかすらも不明の異世界である。
常識人のエピーですら、人間の社会のルールなんて知らないのだ。
「本当に大丈夫かコイツら?」
と、頭を抱える班長であった。
もちろん真一もとっくに頭を抱えている。
「物を盗まない。壊さない。他人に暴力を振るわない。喧嘩しない。とにかく迷惑をかけるなっ!!」
かなり大ざっぱに説明してくれた班長だった。
「多少なら罰金で済ますが、酷い場合は犯罪奴隷だ。分かったな!」
「ミュイ〜、分かった!」
罰金というからには、どうやらこの世界にもちゃんとお金があるようだ。
ただし無一文の真一たちには罰金を払うことなどできない。
重犯罪者は犯罪奴隷とのことだが、支払う罰金を持っていない場合も奴隷にされてもおかしくなかった。
ドリーに好き勝手させていたら、間違いなく3人揃って奴隷落ちである。
気を引き締める真一だった。
「もちろん殺人みたいな凶悪犯罪は、すぐさまリルルカ《価値化》だ」
価値化?
翻訳機能のおかげで言葉は分かるのだが、その意味が理解できない。
お金に替えられるってことだろうか?
奴隷化と何が違うのか不明だけど、もっと重いバージョンってことなのかもしれない。
とりあえず死刑的なものではなさそうだ。
「食べるのは?ムレビトを食べるのはいいニャミュ?」
「だからムレビトって何だよ!?」
班長が軽くツッコミを入れる。
だけど本当は軽く流せるものではない、とんでもなく猟奇的なサイコ発言である。
そして完全にいちばん重罪のヤツだ。
「はい、ドリーは黙ってようねっ!あと、それはぜったいダメっ!!!」
奴隷落ちを回避するため、必死の真一であった。
ーーーーー
なんとか入場門を抜けた真一たち。
バンリャガの街並みは、思っていた以上に綺麗で文明的だった。
足元は凹凸なく、真っ平らに舗装されている。
防壁と同じ材質で、ツルツルの大理石チックな謎石製だ。
雨が降ったらめちゃくちゃ滑りそうだが、ここの人たちはどうしているのだろう?
道幅は大きく綺麗で、下水もしっかりしているのかイヤな匂いもしない。
ゴミ1つ落ちていなかった。
立ち並ぶ家々は、木造と例の謎石製とが半々といったところだ。
低い平屋の建物はほとんどなく、ほとんどが3階建て以上である。
5階以上ありそうな高いものまであるが、それら高層建築物のほとんどは謎石で作られているようだ。
「シン、あの高いのは何だろ?」
「ドリー、あのてっぺんに登ってみたいニャミュっ!」
「絶対ダメっ!!!」
街の中央にはひときわ大きくて立派な建物があった。
空を飛んでいたときにも遠くから見えていたが、門を抜けると雄大な姿がより一層際立っている。
城というか、塔というか、不思議な形の白と青の建築物だ。
きっとあれも謎石で作られているのだろう。
流線形の螺旋やアーチ、渡り廊下なんかが複雑に入り組んでいて美しい。
真ん中には50メートル以上はありそうな青い塔がそびえ立っていた。
確かにあの塔の頂上から見下ろせば、街の景色がよく見えるだろうが、、、
あれ、絶対に領主の城とかだろ!
そんなとこに腹ペコドラゴンが乱入したら、どれほどの騒ぎになることか。
真一はドリーを全力で止めると、街の中へと歩き出すことにした。
門の先に続く大通りは、商店や屋台が立ち並んでいて活気に満ちている。
たくさんの色鮮やかな看板には見たこともない文字が書かれていて、異世界感が満載だった。
街を歩いている人たちの服装も、地球とは少し様子が違う。
いちばん多く目に付くのはヒラヒラしたワンピースっぽい民族衣装だ。
特徴的なのは肌の露出が極端に少ないこと。
この異世界は気温が高く日差しも強いことも、影響しているのかもしれない。
頭にアラビアンな感じのターバンのようなものを巻いている人も多く見られた。
だけどそれ以上に新鮮だったのは、人間以外の獣人もそれなりに歩いていることである。
ネコ耳、ウサ耳、ケモノ耳。
この世界にネコやウサギがいるのかは知らないが、とにかくバリエーションも多い。
トカゲ系の獣人もいたので、ドラゴン獣人がいたって不思議はなさそうだ。
頭が3つのヤツはいないけどなっ!
乗り物もバリエーションが豊富だ。
二本足のダチョウっぽいトカゲ。
ワニみたいな顔をした、デカい牛。
そんな不思議生物だけではない。
多くの人が乗っているのは、電動キックボードみたいなものだ。
どうも電気ではなく魔法で動いているっぽい感じではあるが。
バイクのような二輪車タイプもあれば、自動車やトラックみたいな四輪車もある。
ただし地球のものと比べてタマゴみたいな流線形のフォルムのものが多い。
ほとんどはタイヤで走っているのだが、中には魔法の風か何かで浮いている車もあった。
さらには食べ物や商品も不思議なものだらけだ。
電化製品などはないが、代わりに魔法で光ってるっぽい魔導具のようなものがたくさんある。
街のあちこちには空中に色鮮やかに光る魔法の文字が浮かんでおり、クルクルと回転したりして店の名前やオススメ商品などをアピールしていた。
これぞ異世界だなぁと感慨深くなる真一。
エピーとドリーも珍しそうにキョロキョロしている。
ミコミちゃんの村を見て中世ヨーロッパ程度の文明の異世界なのかと思ったが、都会は違うようだ。
そりゃ魔法のある世界なら、電気の代わりに魔法文明が発達していても不思議はない。
もしかしたら防壁や地面や建物に使われている謎石も、魔法で作られているのかもしれない。
そういえば服とかの多くも、布ではなく紙みたいなツルツルの素材で出来ている。
それ以外にも雑貨などの小物とかも、何か魔法素材的なモノが用いられてるようだった。
ちなみに最初は全く読めなかった異世界文字だが、ほんの数分で3人とも読めるようになった。
またしても『異世界言語翻訳機能』さんが活躍してくれたようである。
これなら今夜にでもヒーラーさんと筆談ができるかもしれないと、期待に胸を膨らませる真一だった。
そんな3人が目指す先は冒険者ギルドである。
まず始めにモンスターの死体を換金して、活動資金を入手しようと考えたのだ。
さっき門番の班長に聞いてみたところ、、、
「それなら冒険者ギルドに納品すればいいぞ。この大通りをまっすぐ行って、、、」
と教えてくれたのだ。
異世界ファンタジーの定番である冒険者ギルドの登場に、少しワクワクしてくる真一であった。
語字報告機能、めちゃくちゃ便利ですね。
指摘していただけるの、たいへんありがたいです。
簡単に修正できて、とても助かりました。
ただ1つだけこの機能に問題があるとすると、、、
『報告が来ていることが、すぐに分からない』
すみません、せっかく指摘していただいたのに、1ヶ月ほど気がついていませんでした(汗)。




