1.8.8 最初から詰んでないか、これ?
■ここまで■
真一がステータス画面を確認すると、21個もの状態異常が発生していた。
ステータスを確認すると、とんでもない量の状態異常が発生していた。
なんか毒になったり、燃えていたり、喰われてたり。
その数、合わせて21箇所であった。
しかも、、、
「スリップダメージって、まとめてじゃなく1箇所ごとに数えんのかよっ!!」
なんとスリップダメージの発生量が10秒で0.21になっている。
本来ならスキル『スリップダメージ微小化』により、10秒で0.01のはずだった。
けれどもどうやらそれは、1箇所あたりの話だったようである。
現在の真一には複数の要因により、合計21箇所のスリップダメージが発生している。
それらのダメージが全て足し合わせて計算されているのだ。
特に全身バラバラによる切断スリップダメージが無視できない数値になっている。
『切断』が15ヶ所で、スリップダメージも15倍という計算になっていた。
話が違うだろっ!とインチキ神さまを罵りたい真一だったが、状況はそれどころではない。
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HP:1 / 20 (※ピッ!)
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目の前でHPが1つ減る。
残りHPはわずか1。
間もなく死亡である。
「ミニマムヒールっ!!」
慌てて真一は回復魔法を唱える。
水色の光の粒のエフェクトが降り注ぎ、たちまちHPが全快になった。
とりあえず窮地を脱した真一だったが、状況は良くない。
スリップダメージが想定の20倍以上に増えているのだ。
本来ならHP全快から死ぬまでに20000秒あるはずだったのが、これでは1000秒もないということだ。
つまり約15分ごとにミニマムヒールを使わないといけない計算になる。
ミニマムヒールはMPを2消費する。
真一の総MPは20なので、10回でMPが尽きる。
15分おきにミニマムヒールを使うとなると、全てのMPを出し尽くしても150分。
それでHP回復の手段が無くなる。
そうなれば後は15分後の死を待つばかりだ。
頼みの綱はMPの自然回復だが、わずか3時間程度でどれほど回復するというのか?
それっぽっちの時間では、とてもじゃないが全回復するとは思えない。
実際にあの白い世界でミニマムヒールを使ったときに消費したMPは、まだ1たりとも回復していなかった。
さすがに一晩眠ればフルに回復しそうな気もするが、そもそも15分おきにヒールが必要な時点で寝ているヒマなどない。
寝落ちした時点で死亡だ。
そもそもそれ以前に、あと3時間ほどでMPが尽きて回復できずに死ぬ。
「こんなん、どう考えても詰んでるだろ、、、」
弱々しく呟く真一。
もはや声を荒らげてインチキ神さまに文句を言う気力すらなかった。
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「ミニマムヒール」
再び回復を行う真一。
もうすぐ死ぬことが確定して、真一はしばらく放心していた。
だがHPが徐々に減少して再び瀕死状態になったところで、咄嗟に回復を行う。
どうせ死ぬと分かっていても、それでも少しでも先延ばしにしたいと思ってしまうのだ。
というかあと数秒で死ぬとなったときに、あえて回復しないという選択をする勇気がなかった。
とはいえこのままじっとしているだけでは、あと数時間で死ぬことになる。
無駄と分かってはいても、何か行動しないと気が済まない。
けれども首だけの真一にできるのは、頭を働かせることだけである。
そしてこのピンチを切り抜ける手段として思い付くのは3つくらいだった。
1つ、状態異常を解消する。
2つ、総HPもしくは総MPを上昇させる。
3つ、HPもしくはMPの回復手段を見つける。
「状態異常を解消、、、ってムリだよな」
毒とかなら毒解除の魔法やアイテムがあればなんとかなるかもしれない。
燃焼や氷結、水没なんかも、何かの耐性スキルとかで対応できる可能性はある。
だけどそれで改善するスリップダメージは0.01ずつだけ。
結局は最も支配的な15箇所の切断ダメージを何とかしないと話にならない。
ではどうやって切断ダメージを解消するのか?
それにはバラバラにされたパーツを繋ぎ合わせるしかない。
けれども他のパーツはどこにもないのだ。
はい、詰みである。
他にあるとすれば、切断ダメージ無効みたいなスキルを習得することくらいだ。
どうやれば覚えられるかなんて、全く見当もつかないけどな!!
「HPを増やすには、、、」
2つ目の案の実現方法は簡単に思い付いた。
レベルを上げればきっとHP・MPも上がるはずである。
ゲームだとレベルアップの際にチャララララ〜♪とか音が鳴って最大値が増えていくアレだ。
今はレベル1でHPもMPも最大20だが、レベルを上げれば万事解決である。
ただし、、、
どうすればレベルが上がるのかすら聞いてねぇよっ!!
なんせ説明の途中、バラバラの身体をくっつけている最中に、いきなり転送されたのだから。
まぁ、定番ならモンスターを倒すことで上がっていきそうだ。
首だけでモンスターに勝てるのならね、、、
「あとはHP・MPの回復か、、、」
実はこれが1番期待できそうだ。
HP回復薬とかMP回復薬みたいなものがあればいいのだ。
ゲームやアニメなら、そこらへんに薬草が生えてるのがお約束である。
とはいえこの異世界に来たばかりの真一には、薬草がどれかなんて分かるはずもない。
首だけの真一でもそこらへんの草を手当たり次第に食べることくらいはできる。
けれども薬草を見つける前に毒草に当たる方が早そうだ。
これは保留。
何にしても、ともかく情報が足りなすぎる。
誰かこの異世界の住人に話を聞ければいいのだが、周囲に人間の気配はない。
さっき巨大トラに打ち上げられたときに上から見た感じだと、ここは森と原野の広がる大自然のまっただ中のようだ。
人が通りがかるのを待つのは絶望的である。
そしてただ待っているだけでは、真一が助かる可能性は皆無だ。
だって、、、
「ミニマムヒール」
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HP:20 / 20
MP:14 / 20
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残りのMPで回復できるのは、あと7回。
真一の余命はあと2時間ほどしかないのだから。