1.7.7 いきなり初の異世界バトル
■ここまで■
生首だけで危険な異世界の森に送られてきた真一は、さっそく巨大トラモンスターに襲われてしまう。
「お、、俺なんて美味くねーよ?」
かすかな希望を込めてコミュニケーションをとろうとしてみる真一。
もちろん日本語が巨大トラモンスターに通じるはずもなかった。
エサの匂いを確かめるように、巨大トラの顔面がゆっくり近づいてくる。
大口を開け、ヨダレ垂らし、鋭い牙を見せつけながら。
今から噛み殺されようとしているのに、真一には逃げることすらできない。
「ファイアーボール!ウィンドカッター!なんでもいいから出てぇーっ!!」
ダメ元で魔法を詠唱してみるが、当然のごとく何も出てこない。
そうこうするうちに巨大な口が目の前に迫る。
耐え難い獣の口臭が嗅ぎ取れるほどの距離。
何かする猶予もなく、巨大トラが真一に噛みついてきた。
頑強なアゴの鋭い牙が、真一の頭に突き立てられる。
こんなもの、レベル1の真一などひとたまりもない。
自分の頭がトマトのようにグチャっと圧し潰される未来が、真一の脳裏に浮かぶ。
ガキッ!!
鈍い音が響く。
真一の頭部に強烈な痛みが、、、
あれっ、そんな痛くない?
これも当然のようにダメージ1なのか?
真一がそんな疑問を頭に浮かべると同時に、、、
「グゥヤァアァンッ、、、」
猛獣モンスターには似つかわしくない、どこか情けなく聞こえる悲鳴が鳴り響いた。
真一が見上げると、巨大トラの立派な牙が数本折れてボロボロと落ちていく。
どうやら真一の頭を勢いよく噛んだときに、牙が折れたようだ。
巨大トラは弱々しい泣き声を漏らしながら、逃げるように走り去っていった。
それにしても、、、
「どうしてこうなった?」
普通ならレベル1の真一に対して、あんな巨大モンスターがダメージを受けるなんて考えられない。
考えてみる真一だったが、思いつく理由なんて1つしかない。
真一の特典スキル、『ダメージ最小化』である。
『どんなダメージでもHP減少1で受けられる』という真一のチートスキル。
だがその効果はどうやらそれだけではないみたいだ。
「そもそも現実世界でダメージ1って、どういう状況なんだよ!?って話だもんな」
『頭をブチュっと潰されたけどダメージは1です』とか言われても、『どういうこっちゃ?』となってしまう。
最大HPが20だから、1ダメージなら身体が20分の1だけ壊れる、、、なんてことも考えにくい。
壊れ方なんてそんな厳密に計れるものではないだろう。
そもそもHPが20って、どう計測してんのか?って話だ。
そう考えるとダメージ1がイコールで、物理的にもその分だけ身体に欠損が生じる、なんてことは考えにくい。
「つまり『何でもダメージ1』って、どんな攻撃を受けてもほとんど傷つかないってこと???」
『システム的』にダメージ1というのは、『物理的』にはそう実装されている、と考えるのが自然だ。
どんな攻撃をされても、すぐに治るかすり傷程度で済む。
そしてシステム的な内部パラメータである『HP』が1減少するだけ。
なんていう設定になっているのではないだろうか?
というか実際には、真一は『かすり傷』すらも受けた様子がないのだ。
あれだけ巨大なトラに思いっきり噛まれたのに、今では何の痛みも感じない。
「これ、、、出血どころか、傷1つないっぽいな、、、」
自分では見えないが、傷痕ができているようには感じられなかった。
もしかしたら『防御力』みたいな隠しステータスがあって、それがメチャクチャ上がっているのかもしれない。
その効果で真一の身体が恐ろしく硬くなっている、と考えられないだろうか?
巨大モンスターの頑強な牙をへし折れるくらいに。
「これって実はスゲぇチートなんじゃ、、、」
巨大トラが逃げ去った方向を見ながら、考え込む真一。
とにかく無事に命の危機を乗り越えることができた。
いや、無事というにはちょっと語弊がある。
なんせ真一はヨダレまみれでグチョグチョにされ、巨大トラにペッと吐き捨てられていたのだから。
もうめちゃくちゃ気持ち悪い。
しかも吐き気が込み上げてくるレベルの、とんでもない悪臭もする。
実際に頭がクラクラしてくるほどだ。
というかこれ、本当に体調が悪くないか?
身体がとてつもなく重く感じる。
今にも倒れそうなくらい、頭が重い。
真一はこの感覚に覚えがあった。
あのインチキ神さまにバラバラにされて、瀕死になったときと同じだ。
「あれっ?これって本当に死にそうってこと?」
もしかしたらいろんなダメージが重なって、HPが残り少ないのかもしれない。
慌ててステータスを確認しようとする真一。
けれどもどうすれば見られるのかが分からない。
あの白い空間で少年が空中に浮かべていたステータス画面を出せればいいのだ。
けれどもウンウンと念じてみても反応はない。
声に出さないとダメなのか?
だけど何て言えばいいんだ?
アニメだとどうしてたっけ?
「ス、、ステータス?」
思いついたまま恐る恐る声に出してみる。
すると例の画面が目の前に浮かび上がった。
どうやら呪文?は合っていたようだ。
急いで残りHPを確認する真一。
だが目に飛び込んできたのは、真一の想像だにしていなかった驚きの情報であった。
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名前:馬宮 真一
レベル:1
HP:2 / 20
MP:18 / 20
状態異常:
スリップダメージ 【-0.21 / 10秒】
▶切断 ✕15
▶毒
▶燃焼
▶氷結
▶水没
▶捕食
▶真空
スキル:
ダメージ最小化
スリップダメージ微小化
ミニマムヒール
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「なんかエラいことになっとるっ!!!」