2.42.55 ヒロインはドラゴン?
まさか異世界に来てメスドラゴンから求愛されるとはっ!?
俺のヒロインは巨大ドラゴンなのかっ!?
人類ですらないなんて、あんまりだろっ!!
と戸惑う真一だったが、ヤギモドキのミーニャをヒロイン扱いしていたことは、すっかり忘れていた。
とはいえ愛らしいミーニャと違って、エピーとドリーは身震いするほど恐ろしい姿のドラゴンである。
ヒロインとして見るのが難しい真一の気持ちも、無理もないところだろう。
だだ性格面で可愛いところがあることは、真一にも十分に伝わっている。
やや欲望に正直すぎるものの、とっても素直でいい子たちなのだ。
それは分かってはいるのだが、、、
人間とドラゴンの交尾は無理だろっ!?
これだけサイズが違っていては、交尾などできるとは思えない。
エピーたちは本当にそれが分かった上で言っているのだろうか?
「交尾って!エピー、ドリー、意味分かってんの?」
「メスとオスが仲良くなったらやるんでしょ?」
どうもエピーの知識には、大事なところに抜けがあるようだ。
交尾というのがどういうものなのか、良く知らずに頼んできたのではないだろうか?
そしてドリーに至っては、、、
「ドリー、本当はあんまり良く分かんないニャミュ〜。コウビって美味しいの?」
「みぃにゃぁ、、、」(※呆れ顔)
「美味しくないっ!いや、別の意味ではオイシイけど、、、」
ですよね〜、、、という感想しか浮かばない真一だった。
「『母』たちが言ってた。エピーはメスだから、気に入ったオスができたら交尾するんだよって!」
「そうなの?ドリーはシンがだ〜い好きニャミュ!だからコウビするニャミュ♪」
「みぃ〜にゃぁっ♡」
どうやらエピーは母ドラゴンから交尾のことを聞いていたみたいだ。
群れから追い出される前の幼い頃にでも聞かされたのだろう。
「一生添い遂げるくらい大好きなオスが見つかったら、交尾するんだって!シンはオスなんでしょ?エピーは、、シンなら、ぃぃよっ♡」
「ドリーも!ドリーも!だけどドリーは出来るだけ美味しいコウビがいいニャミュぅ♪」
「みぃニャ?」
確かにエピーが聞いた話に間違いはないんだけど、、、
たぶん母ドラゴンも人間のオスは想定してなかったと思うよ、うん。
とりあえず真一は出来る限りの説明をしてみることにした。
「えーとね、エピー、ドリー。交尾ってのはね、同じ種族のオスとメスが結婚したときに、愛を交わして子どもを作るためにすることなんだ」
「同じ種族?シンはエピーと1つになったから大丈夫だよね?」
大丈夫じゃありませんっ!
同じ種族って、そういう意味じゃないからっ!
そして『1つになる』ってのも、そういう意味じゃないんです!!
「ドリーもシンのこと愛してるから大丈夫ニャミュ!美味しい子どもも欲しいニャミュ!」
出会って5分の愛が重すぎます!
この子たち、チョロゴンすぎじゃなかろうか?
そしてドリー、美味しい子どもってなんだよ!!
まさか食べる気じゃないよね?
とにかくコイツらにはいろいろ知識が必要だな!
このあとめちゃくちゃ性教育した。
ーーーーー
「、、、、、つまり、そこに棒を入れるのが交尾なんだ」
「みぃにゃあ♡」
異世界に来てドラゴンに性教育をする羽目になるとは、想像だにしていなかった真一である。
エピーとドリーは幼い頃に捨てられたせいで、大事な知識がポロっと抜けているようだ。
そんなわけで真一は、恥ずかしながらも交尾がどういうものなのかを懇切丁寧に説明した。
オスとメスのソコがどういう形で、、、とか、言葉だけで伝えるのは極めて大変だった。
俺だって経験ないんだからしょうがないだろっ!
悪いかよっ!!
と、逆ギレ気味の真一である。
とはいえいろいろ話をするいい機会だし、せっかくなのでついでに情報交換もすることにした。
「だから交尾するにはその棒が必要なんだけどね、実は俺は、、、」
人間とドラゴンでは種族的に交尾が難しいが、問題はそれだけでない。
今の真一には交尾するために必要な『大事♡なパーツ』がないのである。
そのあたりの事情も話しておく必要があった。
それからしばらく時間をかけて、お互いのこれまでを語り合う真一たち。
といっても話してたのは真一とエピーだけである。
その間ドリーはずっと捧げ物を食べていた。
本当に話を聞いているのだろうか?
とはいえドリーたちは真一やミーニャにも果物をちゃんと分けてくれた。
真一の首の長さでは届かないので、わざわざ手で拾って運んでくれたりもした。
食いしん坊だけど、とてもいい子である。
嬉しそうに食事するミーニャを、ずっと優しく撫でてあげている。
ただしその手を動かしているのはドリーなのか、エピーなのか?
本当のところは真一には分からない。
ちなみに真一が動かせるドラゴンの身体は、左の首だけである。
他の部分をどちらが動かしているのかは、おいおい確認しておくべきことだろう。
「、、、、それでさ、全身をバラバラに切り刻まれたまんまで、この世界に送られて来たんだよ!」
「みぃぃにゃ、、、」(※泣きそうな顔)
そうして真一は2匹にじっくりと自己紹介を行った。
自分の素性とか、この異世界に来るまでの経緯とかも説明した。
さらにはエピーとドリーの境遇についても尋ねてみた。
だけど2匹とも心に深い傷を負っていたので、あまり詳しい内容を聞くのは遠慮しておいた。
分かったのは、、、
エピーとドリーはカミュリャム《至聖龍》という種族で、20匹くらいの群れで生まれた。
だけど幼い頃のある日、左首を喰われて失ったそうだ。
犯人が誰かは辛くて言えないみたいだけど、どうも外敵のようである。
ドラゴンの外敵って、いったいどんなバケモンなのだろうか。
ともかく首を失ったドラゴンは、至聖龍としてまともに成長出来なくなるらしい。
そのためアッサリ捨てられ、群れを追われたそうだ。
母も群れのドラゴンたちも、エピーとドリーが野垂れ死ぬと分かって捨てたらしい。
だけど幸運にも2匹は生き延びた。
そうしてこの地にたどり着き、あの村の先祖と何やらあって、定住することになったそうだ。
ちなみにその先祖とやらは言葉が通じたそうである。
きっとはるか昔にこの異世界に送られて来た召喚勇者だったのだろう。
エピーが異世界勇者は言葉が通じるって言ってたのも、そのときの経験によるもののようだ。
ともかくエピーとドリーはそれ以来、ずっと2匹だけで生きてきたらしい。
それからの長い間、誰とも話すことがなかったという。
そのせいで2匹は世間知らずなままなのかもしれない。




