2.40.53 その名は、、、
「名前?」
確かに龍神様のステータス画面を見ると、『名前なし』になっていた。
「ミュイぃ、本当は大人になってカミュリャム《至聖龍》になったときに本当の名前をもらうの」
「だけどオイとモイは子どもの頃に捨てられたニャミュぅ、、、」
「群れを追い出されたときに、ミョンニャニュ《幼名》も奪われちゃって、、、」
「名前のないベノニャム《堕龍》になっちゃったニャミュ」
龍語の固有名詞がバンバン出てくる。
だけと異世界言語翻訳機能のおかげで、真一にはすんなり意味が分かった。
「だけどオイとモイはカミュリャム《至聖龍》になれた」
「だからシンに名前をつけて欲しいニャミュ〜」
大きな瞳をウルウルさせて、頼んでくるドラゴンたち。
至聖龍ってのは、自分で名前をつける文化ではないのだろう。
他人に名前をつけてもらうことに、深い意味があるのかもしれない。
もちろん真一に断る理由はなかった。
「分かった。そうだな〜」
さっそく龍神様の名前を考える真一。
至聖龍と言われても良く分からないが、見た目は地球の創作物でも見かける三つ首龍だ。
三つ首のドラゴンと聞いて真一が真っ先に思い付いたのは、、、
怪獣映画に出てくる金色のアイツだった。
キングでドラな名前のアレである。
だけど、名前をまんまパクるのはヤだし、、、
そもそもこの子たち、女の子だよな?
メスにキングとはこれ如何に?
だったらクイーン(女王)?
いや、エンプレス(女帝)の方がカッコいいか。
語尾もドラで終わるのはオスっぽいから、少し崩して、、、
「エンプレス・ギドリーってのはどうかな?」
「ミュイっ!!長くて舌を噛みそうっ!」
あれっ、不評か?
赤角ドラゴンの感想を聞いて、ダメかと思った真一。
けれども赤角ドラゴンはそう言いつつも、すごく嬉しそうにしている。
「長みたいなスゴい名前ニャミュ!」
青角ドラゴンの方は完全に喜びの気持ちを表していた。
もしかして名前は長いほどエラいみたいなやつだろうか?
「オイがエンピュリェシュン?」
「オイがギリョリィーっ!!」
「モイはギミョミィー?」
「モイがメェンピュメェミュ?」
2匹は嬉しそうに新しい名前を何度も繰り返して口ずさむ。
ただし上手く発音できないようだ。
龍の言葉はやたらとニャとかミャみたいな発音が多いので、他の子音は出しにくいのかもしれない。
だけどそれ以上に真一がツッコミたかったのは、、、
やべっ、2匹まとめて『エンプレスギドリー』って名前のつもりだったんだけど、、、(汗)
どうやら2匹それぞれに名前が必要だったようだ。
赤角はエンプレス、青角はギドリーが自分の名前なんだと思いこんでしまっていた。
とはいえ2匹ともこのはしゃぎっぷりである。
今さら真一にはそうじゃないなどと言えるはずもなかった。
「う、、、うん、そんな感じ」
「それじゃ、オイたちの名前は決まりだね!」
「ニャミュっ!みんな合わせてメェンピュメェミュ・ギリョリィー・シニィミィ♪」
繋げるのかよっ!
と心の中でツッコミを入れる真一。
だがふと見ると、いつの間にか龍神側のステータス画面の表記が変わっていた。
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名前:エンプレス・ギドリー・シンイチ
種族:カミュリャム《至聖龍》
職業:なし
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どうやら正式に決定してしまったようである。
これもあの邪神の嫌がらせなのかもしれない。
どちらにしても今となっては受け入れるしかなかった。
◎◎◎◎◎祝♡決定◎◎◎◎◎
中央の赤角の首:エンプレス
右側の青角の首:ギドリー
左側の人間の首:シンイチ
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
「それじゃ正式名称はそれでいいとして、言いにくいなら愛称で呼んでみる?」
「愛称?」
「それってどんなのニャミュ?」
「えーと、エンプレスは『エピー』かな。それでギドリーは『ドリー』でどう?」
「ミュイっ♡、オイはエピー!」
「オイはドリーニャミュぅ♪」
今度は2匹でも発音しやすいようだった。
「言いやすくて気に入ったのっ!」
「本当は長くてカッコいい名前で、それなのにカワイイ呼び方もできるなんてスゴいニャミュ!」
「ドリー、シン、オイはエピー!みゅふふ♡」
「エピー、シン、オイはドリーなのニャミュぅ♪」
めちゃくちゃ嬉しそうにはしゃぎ回る2匹のドラゴンたち。
これだけ気に入ってもらえるなら、考えた方も嬉しくなる。
真一の方もどんどんとこのドラゴンたちのことが気に入り始めていた。
ここまで苦難の連続だった異世界召喚であるが、真一はついに最高の仲間を見つけたのかもしれない。
「うん、改めてよろしくなっ!エピー!ドリー!」
「ミュイっ♪、本当に嬉しいっ!」
「すっごくめでたいニャミュ〜♪」
「だったらお祝いしようよ、、、ど、ドリー!ムキュッ♪」
「いいね!エピーっ!ニュミュミュぅ♡」
ことあるごとに名前を呼びたがるドラゴンたち。
口に出しあっては、楽しそうに笑い声を上げる。
名前をもらったことが本当に心から嬉しい様子だ。
そんなドラゴンたちは、お祝いを始めることにしたみたいである。
「食べ物いっぱいあるもんね!」
「豪勢にお祝いっ!シンも食べるニャミュ〜」
「う、うん、、、」
テンションMAXのドラゴンたちだが、食べ物の話が出たところで真一の表情が曇った。
何故なら2匹の言う食べ物とは村からの捧げ物のことであり、、、
それが真一のトラウマを呼び起こしたからだ。
こいつら、ミーニャを喰ったんだよな、、、
今では2匹にかなり感情移入をし始めている真一。
だけど真一のヒロインであるミーニャを食い殺されたことは、そう簡単に割り切れるものではなかった。
もちろん今さら2匹に恨みごとを言っても始まらない。
けれどもこのネガティブな感情は、しばらく真一の心にトゲのように残り続けるだろう。
そんな真一の気持ちに気付くことなく、大はしゃぎのドラゴンたちは宴の準備を始めていた。
「そうだっ、ドリー!アレも出そっか!?」
「せっかくのお祝いだもんね!ここで食べちゃう?」
「アレって?」
「さっき見つけたとっておきのご馳走だよ♡」
「捕まえて保存してるニャミュ〜」
「ご馳走??そんなのどこに?」
2匹は明らかに手ぶらである。
周囲にもそれらしき物は見当たらない。
ここに来る前にどこかで獲物を捕まえて、棲家にでも保存しているのだろうか。
真一があたりを見回していると、エピーが上機嫌で説明してくれた。
「ミュイ〜、『溜め袋』に保管してるの。持って帰ろうと思って」
「後でじっくり食べるつもりだったんだぁ。ドリー、生き餌の踊り食いだ〜い好きニャミュ〜」
「溜め袋って??」
良く分からない単語が出てきて、疑問に思う真一。
別にバッグのようなものを背負っているわけでもないし、どこに袋があるのだろう?
「ぅミュっ!」
すると突然エピーが真上を見上げて、苦しそうなうめき声を上げる。
それと同時に腹から何かが吐き出されるようにせり上がってきた。
その何かが通過するのに合わせて、エピーの首が下から上へと膨らんでいく。
その膨らみがエピーの喉を通り過ぎた瞬間、、、
「ォミョッ!」
エピーが下を向いて何かを勢いよく吐き出した。
何事かと出てきたブツを観察する真一。
胃液?でグショグショになったそれは、グッタリとしていた。
地面に吐き捨てられても立ち上がることもできず、倒れたままである。
とはいえ辛うじて生きてはいるみたいだ。
白くて美しい毛皮は粘液まみれでベットリしている。
愛らしかったはずの顔は、弱りきってゲッソリだ。
それでも真一がその姿を見間違えるはずもなく、、、
「ミーニャぁああぁぁぁぁ〜っ!!!」
愛するヒロインとの感動の再会に、たまらず絶叫するのだった。




