6.94.391 異世界ブラックジャック
強欲の勇者ハルミとの対決の前哨戦。
シャリィ対ショモナイの勝負の種目は『異世界ブラックジャック』。
今回はショモナイが『親』で、シャリィが『子』だ。
ゲームの進め方はまず最初に、ディーラーのショモナイが自分の前に2枚のカードを配る。
1枚目は表向きに出すが、2枚目は裏向きだ。
この2枚目はディーラーだけが数字を確認できる。
ディーラーの2枚が終わったら、次はプレイヤーに2枚ずつ配っていく。
ただし今回は1対1の勝負なので、プレイヤーはシャリィだけだ。
そしてプレイヤーに対してもディーラーと同じように、1枚目は表、2枚目は裏向きでカードを送る。
もちろん2枚目のカードを見ていいのは、プレイヤーのシャリィだけ。
こうしてお互いに相手の手札の1枚だけが見えている状態で準備は完了。
まずはこの段階で最初の賭け金を決める。
少なくとも最低限度額は賭ける必要があるが、自信があれば最初から大きく賭けてもいい。
ちなみにこの時点で手札の2枚がどちらも『⓰』だった場合は、合計が32以上になるのでバースト確定だ。
そのときはその場で『降り《フォール》』を選ぶこともできるが、それでも最低限度額分は失うこととなる。
こうして最初の賭け金が決まったところで、いよいよゲームスタートだ。
自分の手が出来るだけ31に近づくように、カードを1枚ずつ追加していく。
手札の強さは31が最強で、後は数字が大きい方が勝ちとなる。
ただし32以上になってしまった場合はバースト、負けとなる。
双方が同じ数字だった場合はディーラーの勝ち。
ただしどちらもバーストしたときだけは引き分けだ。
そしてこの手札を追加するフェーズは、今度はプレイヤー側から行っていく。
自分の手札がまだ弱いと思ったときは、ディーラーに追加カードが欲しいとサインを送るのだ。
するとディーラーは追加カードを、表向きで配っていく。
つまり裏向きで場に出されるのは、2枚目のカードだけということになる。
そして追加カードは、何枚でも好きなだけ要求できる。
ただし注意すべきは、カードを追加しすぎてバーストすること。
表向きで出されたカードの数字の合計が31以上になれば、裏向きの1枚の数字が何であろうと合計32を超えるのでバーストが確定する。
この場合はその時点でゲーム終了だ。
親が手札の2枚で既にバーストしていない限りは、プレイヤーの負けとなり、最初に賭けたチップは没収となる。
こうして好きなだけカードを追加したところで、プレイヤーのターンは終了だ。
次はディーラー側が同じようにカードを追加していく。
もちろんディーラーも裏向きで場に出すのは2枚目だけで、残りの追加カードは全てオープンだ。
こうしてお互いの手が出来上がったところで、今度は賭け金を決めるフェーズに入る。
「賭け金の宣言はプレイヤー側から。宣言はレイズ、コール、フォールの3つです」
レイズは賭け金を吊り上げる宣言だ。
いま現在の賭け金にさらにお金を追加し、相手に賭け金宣言のターンを回す。
追加できる金額は自由で、手持ちの全てを賭ける(オールイン)こともできる。
ただし相手の所持する残額以上を賭けることはできない。
お互いにレイズを続けていけば、賭け金がどこまでも吊り上がっていくことになる。
コールは勝負の宣言で、その時点の金額で賭け金が確定する。
コールした方は、その前に相手がレイズしたのと同額のチップを場に出して勝負だ。
お互いにカードをオープンし、強い方が賭け金を総取りする。
最後にフォールは降参の宣言だ。
相手がレイズした金額まで出したくない場合に、勝負をせずに自ら負けを選ぶのである。
もちろんその場合は、今まで場に出していた賭け金は相手のものになる。
それでも負ける確率が高い手であれば、ダメージを最小に抑えることは可能だ。
なお、ディーラー側はフォールの宣言は出来ない。
レイズかコールのどちらかしか許されていないのだ。
だからこそ、同点ならディーラーの勝ちというアドバンテージを得ているわけである。
このような感じで賭け金を吊り上げていくのが通常のルールだ。
このカジノの場合は先にチップに換金しておいて、それを用いてゲームを行う。
今回は金を賭けた勝負ではないので、互いに64枚ずつのチップを賭けていくこととする。
各ゲームの最低限度額はチップ1枚だ。
ルール説明を終えたショモナイは、シャリィに挑戦的な視線を向ける。
「さて、いかがですかな、シャル姫さま」
「いいでしょう。『とらんぷ』で勝負といきましょう」
説明を聞いてルールに問題はないと判断したシャリィは、異世界ブラックジャックでの勝負を了承する。
対決種目が決まったところで、最後にお互いに賭ける物を確認する。
「勝負はどちらかのチップが全て無くなったところで終了。シャル姫さまが勝った場合はハルミ様のところへ案内いたします」
「それでそちらが勝った場合はわたしを奴隷にするつもりだと。明らかに釣り合いがとれていませんね。このナーザムを返却するとかではいかがですか?」
「ふふふ、その能無しなどもはやゴミ同然ですよ。それよりそちらのミィクを再びこちらの奴隷とするのはいかがですか?」
だがショモナイが要求してきたのは、なんとミィクの身柄であった。
当然ながらそんな条件など、呑めるはずがない。
「フザけたことを。そんなもの釣り合うわけがないでしょう」
「そうですか?傷ものになった娼婦崩れの価値などその程度のものしかないと思いますが、、、」
あまりにも酷いショモナイの発言に、その場の全員が怒りを露わにする。
だがそんな中でいちばん冷静にショモナイの要求を受け止めていたのは、当の本人であるミィクだった。
「構いません。シャル姫さま、わたしを賭けてください」
「何を言ってるのです、ミィクさん!」
「そうだよ、ミィクっ!」
慌てて止めようとする真一たちだったが、ミィクの決意は固かった。
「大丈夫です。わたしはシャル姫さまを信じてますから。それに、、、わたしに罪を償うチャンスをくださいっ!」
ミィクの強い瞳を見て、シャリィも覚悟を決める。
「わかりました。ミィクさん、あなたの気持ちには必ず答えてみせます」
自分への揺るぎない信頼が嬉しかったし、そもそもシャリィも最初から負けるつもりなどないのだ。
こうしてミィクの命運を賭けたブラックジャック勝負が始まるのであった。




