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6.80.373 花と虫と温泉と、、、

「それじゃユア、一緒にオンセンに行くニャミュ!」


 懇切丁寧こんせつていねいに説明を続けて、朝霞はなんとかドリーに温泉が食べ物ではないと教え込むことができた。

 だがそんな不憫ふびん少女は早くも次なる問題に直面していた。


「いっ?一緒にですか!?」


 ドリーが朝霞に『一緒に温泉に入ろう♪』とリクエストしたからである。


「だってオンセンは気持ち良くて素晴らしいんでしょ?だったらドリーも一緒に行くニャミュっ!!」


「そりゃ、ドリーちゃんと一緒に温泉に入るのはもちろん構わないんですけど、、、」


 そう言って困ったように真一に視線を向ける朝霞。


「それってシンとも一緒にお風呂に入るってことで、、、」


 恥ずかしそうに口にした朝霞は、もちろん顔が真っ赤である。

 だというのにドリーだけでなくエピーも、それを何の問題とも思っていない様子だ。

 見かねた真一が朝霞をフォローする。


「いや、風呂ってのは服を脱いで裸で入るものなんだよ。だからドリーがユアと一緒に温泉に入るってことは、俺にもユアの裸が見えちゃうってことで、、、」


「えっ!?そんなのいつものことニャミュ」


「ミュイ〜、ユアは毎日シンに裸を見せつけてるよね?」


「それは、わざとじゃなくて、、、」


 エピーたちの厳しいツッコミを受けて、朝霞は消え入りそうな声で弁明することしかできない。

 だというのにこの場にはもう1人、どこまでも大胆な女がいた。


「わたしはシンにいっぱい裸を見てもらいたいですよ♡」


 そう語るシャリィは、初めての温泉体験にワクワクしている様子であった。


「ミュイ〜、なんかシャリィ悪いこと考えてる?だったらここはシンの目玉をくり抜いて食べるしかないかも」


「ニャニャっ!?オンセンのオヤツにシンの目玉を食べるニャミュ?」


「エピーさん、ちゃんと約束覚えてますよね」


 だが暴走しそうなドラゴン娘たちは、氷のように凍えきったシャリィの恐ろしい声に口をつぐむ。

 もはや真一に危害を加えることは許されないのだ。


「ミュっ!?ミュぅぅ、、、」


 神の子シャリィの怒りのオーラを浴びて、縮こまるエピーたち。

 だがシャリィはすぐさま真一に視線を向けると、パッと花開くような笑顔を見せる。


「それではさっそく温泉とやらに行きましょう♪ シン、一緒に楽しみましょうね♡」


「う、うん」


 ここまで恥じらいもなく『おねだり』されては、エロエロ真一ですら逆にタジタジになってしまう。


「ユアさんは1人でお留守番でもいいですよ」


「入るっ!入るもんっ!、、、だけど、タオルあるかなぁ〜」


 朝霞の最後の言葉は、真一たちには聞き取れないほどの小声であった。



ーーーーー



〘どういうことだ?部屋の映像も音声も届かねぇじゃねぇかっ!?〙


「何か変ですね。さっきまでは確かに見えていたんですが、、、」


 一方でナーザムは困惑していた。

 ディグフニューシュ《三美聖》を『特別室』に案内したまでは良かったのだ。

 ちゃんと部屋からの映像と音声が届いていることは、先ほど確認済みである。

 それからご主人さま『ハルミ』に緊急連絡を入れ、『特別室』の映像をハルミの元へと中継を始めた。

 けれども何故か今は、リビングルームからの映像が全て真っ黒になり、音声も聞こえなくなっている。


 とはいえ他の部屋の盗撮魔法術式は、ちゃんと作動しているようだ。

 あの『特別室』の全ての部屋には、何個もの術式が仕込まれているのである。

 そしてそのうち、専用温泉の中の1つからの映像に動きがあった。


「あっ!脱衣所に3人が入ってきましたよっ!」


 すぐにナーザムはハルミに送る映像を、更衣室からのものに切り替える。

 そこにはこの世のものとは思えない、絶世の美少女たちの姿が映っていた。

 温泉を目の前にして、無邪気で楽しそうにはしゃいでいるディグフニューシュ《三美聖》の3人。

 盗撮術式越しの映像とはいえ、溜め息が出る程に美しい。


〘おおっ!本当に美女揃いだな!3人ともマジでヤベぇじゃん〙


「3人と言うか5人と言うか悩みますけどね」


〘確かに。さすがの俺も三つ首の女とヤッたことはねぇからな。この獣人女をヒィヒィ言わせてやんのが待ち遠しいぜ〙


 ナーザムもハルミのおこぼれをいただける日が来るのが待ち遠しかった。

 だが突然、ワイワイ騒いでいた少女たちの声が途切れる。


〘音が聞こえなくなったぞ?〙


「やはりおかしいですね。まぁ今は全裸姿だけでもお楽しみください」


〘そうだな。さぁ、早く脱げよ〜!〙


 ハルミの声を聞きながら、ワクワクと少女たちの様子を見守るナーザム。

 これから入浴だというのに、ディグフニューシュ《三美聖》の3人は服を脱ごうとする素振りを見せない。

 だがそんな3人の着ている服が、突然うっすらと輝き出した。


「えっ何だ?服が光って、、、?」


 ナーザムがそう呟いている間にも、どんどん服が眩しくなっていく。

 盗撮魔法術式の映像が、目に痛いほどの輝きを放つ。

 思わず目を閉じてしまいそうになるナーザムだったが、、、


 ブツンっ、、、


〘消えちまったじゃねぇかっ!!〙


 突然、今度は脱衣所からの映像が真っ黒になってしまった。


〘おいっ!風呂場はどうなってる?〙


 苛立つハルミの声に、慌てて映像を切り替えるナーザム。

 風呂場の中から送られてくるものは、大丈夫のようだ。

 画面に映っている半透明のドアに、裸体らしき肌色の人影が見えてきた。


「こっちの映像は大丈夫ですね。ほら、もう入って来ま、、、」


 だが今度は風呂場からの映像も、プッツリと途切れてしまった。


〘また消えたぞっ!何なんだよ、これは!〙


「もしかしたらディグフニューシュ《三美聖》には何かの力があるのかもしれません。1人は勇者ですしね」


〘クソっ!じらしてくれるぜっ!まぁ、ノゾキなんてただの前座だ。奴隷にした日にゃ、オアズケされた分までタップリいたぶり尽くしてやんぜ!〙


 そうしてハルミとナーザムは、さらなる悪巧みを始めるのであった。



ーーーーー



 浴場へと真っ先に入ってきた全裸の魔女は、斜め上の方向に鋭い視線を向ける。

 そうして先ほどひねつぶした『良からぬ魔法術式』の残滓ざんしを見つめながら、冷たい声で独り言を呟いた。


「わたしがシン以外の男に素肌をさらすことなど、許すはずがないでしょう」


「シャリィ、何か言った?」


 その言葉を拾ったのは、シャリィに続いて風呂場に入ってきた真一だ。


「いえ、何でもありません。少し『虫』がいたような気がしただけです」


 恋人へと振り返ってそう答えた少女はさっきまでと打って変わって、『花』開くような恋する少女の笑顔を浮かべていた。

 真一に思う存分、しなやかな裸体を見せつけながら。


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