6.55.348 みんなで探検!外の森
冒険者ギルドから飛び出した真一たち。
外に集まっていた群衆に見つかるが、下の大騒ぎなどお構いなしに飛び去っていく。
そのまま街の外に飛び出すと、まっすぐ『外の森』に向かう。
場所はしっかり聞いていたので、迷うことはなかった。
20分ほどで目的地に到着する。
外の森は直径20キロメートルくらいの、ごく普通の見た目の森であった。
とはいえ森の中にはニッケル(Dランク)くらいのモンスターがゴロゴロいるらしい。
この森でさっそく朝霞の戦闘訓練を始めるのだ。
まずは魔法を使わない、体術の練習からである。
外の森の上を低空飛行しながら、手頃な獲物を探す。
「ミュイ〜、あれなんかいいんじゃないかな?」
そうしてエピーが見つけたのは、イノシシっぽいモンスターだった。
なんか赤と緑のシマシマ模様の、毒々しい色のイノシシである。
とはいえ大型バイクくらいのサイズがあり、日本の日常生活ではなかなか見かけない大きさのモンスターだ。
その目の前へと着陸するエピー。
しかも後ろに着地した朝霞の背中を押して、無理やり前に立たせる。
「えぇっ!?いきなりこんなのと戦うんですかっ!?」
と、ビビりまくる朝霞。
無理もない話であった。
グシュゥゥゥッッ!!
そんな朝霞に向けて、シマシマイノシシは鼻息荒くいきなり突進してきた。
「わわっ!」
まだ心の準備もできていないというのに、いきなりの実戦スタートである。
殺意高めに向かってくるモンスターから、涙目で飛び退く朝霞。
だが臆病そうな仕草に反して、その動きは驚くほどに軽やかだ。
それもそのはずでレベル41に達する朝霞の身体能力は、地球ならアスリートも真っ青のファンタジー超人レベルなのだ。
「ユア、何してるニャミュ?そんなの避けなくてもいいでしょ?」
「いや、避けますよっ!!」
ドリーのスパルタすぎる言葉に、とんでもないっ!という様子で反論する朝霞。
けれども横で見ているだけの真一からすると、確かに今の朝霞がシマシマイノシシに負けそうな雰囲気は感じられない。
自分の受けた印象が正しいか確かめるため、真一はさっそくシマシマイノシシを鑑定してみる。
「ステータス!」
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名前:なし
種族:ボンボンノーン
レベル:16
HP:71
MP:55
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表示されたステータス画面を一目見ただけで、真一は何も心配する必要がないと安心した。
レベル41もある朝霞に対して、シマシマイノシシはわずかにレベル16。
だがそれ以上に大きいのはステータスの差で、朝霞は相手の10倍ほどの数値となっている。
「あぁ〜、ユア、たぶんぜんぜん大丈夫だ。ユアのステータスならまともにぶつかっても、傷1つつかないと思う」
「ええっ!?冗談ですよね??」
「本当だって!ステータスで10倍くらいの差があるから。怖かったらまずは、武器でガードしてみたらどう?」
「武器ってこの、シンの腕のことですかっ!?」
そう、朝霞はいつものように真一の腕を手にしていたのだ。
恋人のパーツを分け合う分割ハーレムが成立して以降、右手はシャリィのものとなった。
いつもは豊満な胸の谷間に挟み込んである。
その一方で何故か朝霞も、真一の右腕パーツを占有するようになっていた。
ちょうど手首から肘を挟んで脇のあたりまであるパーツである。
それを普段の朝霞はドレスのスカート部分の中、右足の太ももにくくりつけて持ち歩いているのだ。
そりゃ、人目に付く場所に切断された腕を持って、外を出歩くことなんてできないだろう。
この太ももの外側にある『右腕パーツホルダー』も、シャリィが物質魔法で作ってくれたのだ。
女スパイが暗器の短剣を忍ばせておくような感じである。
ただし今回は戦闘訓練を始めるにあたって、朝霞は右腕パーツを取り出して腕に持っていた。
足につけたままだと動きにくいので、半ば無意識に右腕パーツを手にしていたのである。
けれどもその本来の使い方は、『朝霞の恋人』、、、ではなく、もちろん、棍棒代わりの武器である。
まぁ、本当の使い方は、真一の右腕なのではあるが、、、
突進を簡単に避けられたシマシマイノシシだったが、円を描くように回り込むと、再び朝霞へと突っ込んできた。
エピーやシャリィは無視で、完全に朝霞をロックオンしているようだ。
それを棍棒を前に構えて待ち受ける朝霞。
そのまま激突した両者だったが、、、
「ぅひゃっ!!」
力負けしたのは、ステータスで圧倒しているはずの朝霞の方であった。
大きく跳ね飛ばされ、よろけて後ずさってしまったのである。