6.30.323 パーティー名、波乱の大決定!
冒険者パーティー『神の遣い』には、さすがの朝霞もツッコミを入れる。
「いきなりそう名乗るのは、ちょっと抵抗がありませんか?もちろんシャリィさんだけはそう呼ばれるのが正しいのかもしれないですけど、、、」
「それじゃ、ユアは何かいいのある?」
「わたし、どういうネーミングがいいのかぜんぜん知らないんですけど、やっぱりわたしたちの特徴を表すようなものがいいんでしょうか?」
「まぁ、そういう名前の付け方もアリだと思うよ」
「だったら、『姫と光とドラゴン』とかですか?」
「ミュイ〜、それなら『姫と光とドラゴンと生首』じゃない?」
朝霞とエピーのネーミングセンスも、なかなかに残念なものであった。
これには逆にシャリィからツッコミが入る。
「それはあまりにも安直過ぎるのではないでしょうか?」
「やっぱりそのまんま過ぎですよね?すいません、わたしどんなのがいいかぜんぜん分からなくて」
「いやいや、ユアが謝ることじゃなくって、、、そうだな、、、みんなの共通点とか、好きなものとか、旅の目的なんかから名付けるのがいいかもね」
「だったら、パクッ、、、『エサが欲しいっ!』って名前にするニャミュっ!」
「いや、それはドリーだけだからな!」
「そういうことならもう、『シンの恋人』でいいのではないでしょうか?」
シャリィが次に出してきた案も、真一にはなかなかに受け入れ難いものであった。
「シャリィの旅の目的って、世直しじゃなかったっけ!?」
「あら、シンと深い関係になることも、大事な旅の目的ですよ」
と、上目遣いでラブラブ♡サインを送りながら、アピールするシャリィ。
もちろん100%計算ずくのアクションである。
「エピーもそれでいいよ♪」
「ドリーもっ!ドリーもシンのこと食べちゃいたいくらい好きだもんっ♡ムシャ、ムシャ、、」
そして真一の反対をよそに、ドラゴン娘たちは大賛成のようだ。
これにはたまらず、朝霞に助けを求める真一。
「えぇっ!?もしかしてこれで決まりな流れ??ユアは何か意見あるよね?」
「そうですね、、、シンは自分の名前が付いてるから恥ずかしいんですよね。だったら『みんな恋人』とかはどうでしょう?」
なんてユリユリな名前っ!?
と困惑する真一だったが、結局は他にいい案も出てこなかった。
まぁ『シンの恋人』よりはマシなので、しぶしぶながらも受け入れることにする真一。
そんなこんなで、さっそく『みんな恋人』のパーティー登録をしに冒険者ギルドへと向かう。
数日ぶりに訪れたゲッシュフト支部は、以前と違ってやけに活気があった。
それもそのはずで、ギルドの中にはたくさんの冒険者が集まっていたのだ。
お昼すぎのこんな時間なら普通の冒険者は依頼に出てそうなものなのだが、何かあったのだろうか?
しかもよくよく見てみると溢れかえっている人々の半数以上は、冒険者ではない一般人のようである。
ギルドの職員たちが大勢の来客に詰め寄られて、右往左往している様子だ。
これはやはり本格的に何か事件でもあったみたいである。
だが真一たちがギルドに足を踏み入れると、全員の視線が何故か一斉に集まってきた。
そうして人々が口々に騒ぎ立て始める。
「おい、見ろっ!」
「ディグフニューシュの3人じゃねぇか!」
「本当に来てくださったぞっ!」
「ありがてぇ、ありがてぇよっ!」
「ホントにみんな美人だなっ!」
「会えて光栄ですっ!ディグフニューシュのみなさま!」
「シャル姫さま、綺麗すぎっ!」
「天使さまもマジ天使っ」
「ディガンちゃんも3人ともカワイイなっ!」
不思議な注目を浴びて、困惑する真一。
たしかにウチのヒロインたちはみんな目を引く容姿なんだけど、、、
なんかいつもと注目度合いが段違いじゃないか??
しかもなんかめちゃくちゃ好感度高いし、、、
だがエピーはそんな周りの様子など一切気にした様子もなく、真っ直ぐカウンターに向かう。
集まっていた人波がさっと左右に分かれるなか、堂々と受付まで足を進めるエピー。
そこにいたのは、以前お世話になった受付嬢のキュニュンである。
顔見知りの人がいるのは非常に助かるところだ。
さっそく何か起きているのか尋ねようとする真一だったが、先にキュニュンの方から挨拶をしてきた。
「ママスミグル《こんにちは》、ディグフニューシュのみなさま」
そしてキュニュンの挨拶の中には、聞き逃がせない単語があった。
『ディグフニューシュ』。
そういえばさっき群衆の方からも、そんな言葉が何度か聞こえた気がする。
それを思い出して真一はさらに困惑していた。
なんか、、、いつの間にか勝手にパーティー名が付けられてるんですけど!!!