6.28.321 《P-4》タンス野郎の正体
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《P-4》『左足』=『ゴブリン村の鐘を鳴らす棒』
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「シン、もしかしてパーツがあるのはあの櫓ですか?」
カンっ!カンっ!カンっ!カンっっ!!
「うん、俺の足をぶつけて鐘を鳴らしてるみたいで、、、って、だからホントに痛いんだよっ!!(怒)」
シャリィの質問に答える真一は、小指への連続攻撃にかなりイラついていた。
そんな真一の怒りをいち早く読み取ったのだろう。
真一思いのドリーが、恋人の怒りに深く共感してあげる。
「ドリーのシンにヒドいことするなんて、絶対に許さないニャミュっ!」
そう言うや否やドリーは、櫓にいるゴブリンに向けて、反撃の魔法を放つのであった。
焦った真一が『待ってっ!』と制止の声を上げるヒマもない。
「『リャンギャルドムニャリュ《暴龍の劫火》』っ!!」
放たれたのは至聖龍最強の、第7階炎熱魔法である。
それは哀れなゴブリンを塵すらも残さず焼き尽くす。
「熱っつぅぅぅっっ!!!(泣)」
ついでに真一の左足もまとめて火あぶりにしながら。
足をこんがり焼かれて、涙目となる真一であった。
ドリーが放った魔法は、小さな街1つなら軽く壊滅させるくらいの威力を持つ。
とはいえ巨木の頂上付近に向けられていたため、ゴブリン村の中心からは少し狙いが上に逸れていた。
集落の後ろ半分は更地に変わっていたが、手前側は比較的に無事である。
そんな集落の中心で、たくさんのゴブリンたちに囲まれて怒りの咆哮を上げているのは、ひときわ巨大なゴブリンであった。
いまだに戦意を失っていないその凶悪なモンスターの正体は、、、
「どうやらこの集落の主は、あのゴブリンキングのようですね」
そう、かつて真一が『ヒロイン剣士ちゃん』ことキルナと力を合わせて?なんとか倒した、ヤバ過ぎる相手である。
あのときの絶望的な戦いを思い出して、ブルっと身震いする真一だったが、、、
「はいっ♪」
と軽い調子でシャリィが手を一振りする。
するとかつては強敵だったはずのゴブリンキングが、地獄の炎に焼かれて燃え上がった。
「ミュイっ!」
そこにエピーの炎熱ブレスが突き刺さり、残りのゴブリンたちもまとめて村ごと焼き払っていく。
こうしてゴブリンの集落はものの数十秒で壊滅したのであった。
もはや『タンス野郎』がどのゴブリンだったのかすら分からない。
なんせ集落が丸ごと消し炭に変わり果ててしまっているのだから。
そんな光景を眺めながら、真一はふと疑問を思い浮かべる。
そういえばタンスだと思ってた鐘はどんな形だったんだろ?
普通に鐘を突いたら親指が当たるはずだよな?
それなのに毎回小指をぶつけられてたのは、、、
よほど変な形の鐘だったのか、それとも変な突き方をしてきたのか、、、?
などと今さら気になってみても、全ては燃え尽きた後であった。
そんななかエピーは手にしたパーツから放たれる光を目印に、焼け尽きた地面に降り立つ。
そこには『左下腿部パーツ』から太くて力強い赤の光が真っ直ぐ伸びており、、、
地面に無造作に落ちている『左足パーツ』の切断面へと繋がっていた。
「あったっ!」
「ありましたね」
「見つけたねっ♡」
「良かったですね、シン」
「こんがり焼けてて美味しそうニャミュ」
5人の歓声が重なる。
「エピー、さっそくそのパーツを落ちてる足に近づけてみて」
「ミュイっ♪」
真一が頼んだ通りに、エピーが『左下腿部パーツ』のくるぶしのあたりの切断面を、『左足パーツ』の切断面に近づけていく。
すると赤い光が目に見えて強くなっていき、、、
すぽっ!
という感じで最後は磁石がくっつくようにして、『左足パーツ』が飛び上がってきた。
2つの切断面同士がキレイに接着し、まるで最初から切れてなどいなかったかのように完全に元通りとなっている。
『左足パーツ』のみが煤けて黒ずんでいるので、その境目だけが元は切断面があったことの名残りだ。
ともかくこの異世界ミグルにやって来て、真一はようやく初めて自分のパーツの再接合に成功したのである。
「ステータスっ!」
さっそくステータス画面を出して確認してみる。
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名前:馬宮 真一
種族:異世界勇者・超次元融合
職業:冒険者
ステータス:
レベル:31
HP:408 / 372+36
MP:387 / 365+21
状態異常:
スリップダメージ 【-0.22 / 10秒】
▶切断 ✕14
▶毒
▶燃焼 ✕2
▶氷結
▶水没
▶捕食
▶真空
▶裂傷
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「やった!『切断』の状態異常が1つ減ってるっ!!」
真一の期待通り、『切断』による状態異常の数が『15ヶ所』から『14』に減っていた。
これにより真一が10秒ごとに受けるスリップダメージが、『0.01』改善したわけである。
もっともドリーの暴虐魔法でこんがり焼かれたことにより、『燃焼』のダメージが1つ増えてしまっているのだが、、、
まぁ、何はともあれ、真一は4つ目のパーツを取り戻したのであった。
そして残るパーツはあと11個である。
「それじゃ、次はゲッシュフト湖に沈んでる右腕だなっ!」
「まだまだ午前中ですし、今日中に回収できそうですね」
と、勢いに乗る真一と朝霞だったが、、、
「そうは言ってもユアさん、問題は湖の底のパーツをどう回収するかですよ。なんせゲッシュフト湖は最深部だと深さ1000メートルほどありますから」
「「えっ!?」」
真一と朝霞の困惑の声が重なる。
親切に地球の単位で教えてくれたシャリィだったが、その数字は2人にとっては予想以上すぎた。
水深1000メートルとなると、地球なら専用の調査船が必要となるような深海である。
どうやら次のパーツの回収は、一筋縄ではいかない様子であった。
ヒロインたちも集まって、ビーチが目的地なら、次は水着回かもっ!?♡
なんて呑気に考えていた真一だったが、邪神の嫌がらせがそれほど甘いものなはずが無いのである。




