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6.10.303 相変わらずの食事風景

 べドベダルの街を出た一行は、フェンミンという街で夕食をとる。

 腹ペコ娘が限界だったが、なんとか隣街まで我慢してもらったのだ。

 街中が『神の御遣い姫』の登場で沸き立ち、総立ちで見送ってくれているべドベダルには、とても今さら戻れる状態じゃなかったからだ。

 フェンミンはべドベダルの最寄りの街である大きな都市国家で、今の国王はシャリィの父親ランドットの兄である。


 普通なら丸1日以上かかる距離も、空を飛べば数十分で済む。

 フェンミンに着いた頃には、シャリィの発光も落ち着いていた。

 そのまま夜の闇に紛れて、空中からこっそりフェンミンの街の中に着陸する。

 翼を消せばシャリィもぱっと見では、一般人と変わらない見た目となっていた。

 これなら注目を浴びることもないだろうと、さっそく店に入って夕食となったのだが、、、

 アホほど食べるドラゴン娘のせいで目立ちまくっていた。


「なんだよ、あの獣人っ子?あの小っちゃい体のドコに、あんだけのメシが入ってんだ?」

「だいたいパドゥ豆をあんなに食って平気なのかよ!?」

「にしても、めちゃめちゃカワイイな、おい!」

「隣りの異世界勇者もとんでもねぇ美人だぞ」

「いや、向かいの銀髪の子を見てみろよっ!信じらんねぇくらいの美女じゃねぇかっ!!」

「だけどなんか不気味な目をしてるよな?まぁ、こんだけ可愛いけりゃ関係ねぇけど」


 もっとも人目を引いているのは朝霞とシャリィも同じのようである。

 ちなみに訪れた店はシャリィによると、フェンミンの街でいちばん有名な名店なんだそうだ。

 広い店内いっぱいにあるテーブル席は満席で、まさに大繁盛であった。


「、、、なのでフェンミン名物のパドゥ豆を出す店が多いんですけど、中でもここのパドゥ豆料理は絶品だと評判なんです」


「確かにこの炒め物、すっごい美味いよ!」


 シャリィのオススメで入った店なのだが、実際には当のシャリィも来るのは初めてだ。

 なんせシャリィはずっとカゴの中の鳥で、文献を読んで知識を溜め込むことしかできなかったのだから。

 とはいえ人気店だけあって、この店は当たりであった。

 真一が食べている(※エピーに食べさせてもらっている)のは、パドゥ豆の炒め物である。

 パドゥ豆と野菜を炒めた料理で肉は入っていないのだが、それでも大満足の味だ。

 というのもこのパドゥ豆は、『畑の肉』とも呼ばれる食物なのである。


 畑の肉と言えば、地球なら大豆を思い浮かべるところだ。

 対してこのパドゥ豆は簡単に言うと、ジューシーな大豆に脂身が入ったようなものである。

 豆と言っても小さな芋くらいのサイズがあり、中心部に脂身の詰まった2層構造となっている。

 食感としては脂身を赤身で包んだ牛肉に近く、加熱して食べると肉汁が溢れ出てくる感じなのだ。


「本当に美味しいですよね。もう一皿くらい食べられそうです」


 これには朝霞も大満足だっのだが、、、


「ユアさん、それは止めた方がいいですよ。パドゥ豆の脂身は体内で消化され難いので、1日に一皿以上食べると、お腹が緩くなっちゃうんです」


「ぇ!?」


 シャリィの解説に顔色を青くさせる朝霞。

 日本にもある「バラムツ」みたいな話だ。

 めちゃくちゃ美味しい魚だが、食べすぎると下痢が止まらなくなるというアレである。

 真一だけでなく朝霞もまだ許容範囲内しか食べていないのだが、それでも朝霞は顔面蒼白になっていた。

 何故なら、、、


「あと5皿くらい食べるニャミュ♪」


 既に10皿くらい食べているドリーが、さらにおかわりを要求しているからだ。

 シャリィも知っていたなら、もっと早く教えておいて欲しいところである。

 店員や周りの客がドリーを気にしてた理由の1つはそれだったのだろう。


「ドリーちゃん、お腹は大丈夫ですか?」


「ニャニャ?ユア、どうしたニャミュ?」


 そしてシャリィの話など全く聞いちゃいない腹ペコ娘であった。


「大丈夫ですよ。ドラゴンさんの胃には何の問題もないみたいですから。ダメそうなら最初から止めてましたし」


 平気そうな顔でそう言うシャリィは、魔眼でドリーの腹の強さを見抜いていたようだ。

 それにそもそもの話として、ドリーたちの胃袋は異空間のようなものになっている。

 なんせ至聖龍カミュリャムは、『ドラゴンうんちしない』という特殊体質なのだから。


 ちなみにそんなドタバタな食事をしている最中には、何回かナンパ男がやって来た。

 けれどもドリーに睨まれただけでみんな、悲鳴をあげて逃げ出していく。

 自分のエサを狙われてると思った肉食獣の怒りをモロに浴びたのだから、失神しなかっただけでもラッキーだろう。

 とはいえ何をするにもこれだけ目立ちまくっているようでは、今後の活動にもいろいろ支障が出るかもしれない。


 そして夕食が終われば、今日はもう寝るだけである。

 魔王軍と戦い、シュニグマ《暴狂霊》と戦い、本当に激動の1日であった。

 もうクタクタで早く休みたい真一だったが、、、

 大事なことをすっかり忘れていたのである。


「ミュイ〜、それでシン、約束はちゃんと覚えてるよね」


「あ?、うん、、、」


 一瞬何のことだっけ?と戸惑う真一と朝霞。

 そんななか、、、


「美味しいコウビするニャミュぅっ!」


 夜♡の肉食ドラゴンの叫びが、メシ屋の中に響き渡ったのであった。


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