1.3.3 異世界行くなら転生特典
■ここまで■
悲惨な事故で死の間際にあった真一は、神を名乗る少年に拾われ異世界に行くことになった。
「それじゃ、君には異世界に行ってもらうわけだけど、どんな能力が欲しい?魔王を倒すための力を何か授けてあげるんだけど、ある程度は希望に沿うようにするよ」
突然聞かれて戸惑う真一。
あまり異世界転生モノには詳しくないのだ。
確か真一が見たアニメでは、スマホだったり女神だったりを異世界に持って行っていた。
けれどもそんなものには全く興味がない。
真一の願いはただ1つ。
『痛いのはイヤ』、それだけだった。
だったら!と真一は思いつく。
「不死身にしてくださいっ!」
「それはさすがに無理かな。バランスブレイカーすぎて成り立たないよ」
「だったらどれくらいの能力ならいいんですか?」
「そうだね、不死身系なら『食いしばり』スキルかな」
転生特典として授けられる能力。
それは『スキル』と呼ばれていた。
そして用意されているスキルはかなりの種類があり、その中から希望に近いものが選ばれるのだ。
もちろん『不死身』なんてチートすぎるスキルはない。
基本的に全てのスキルは同程度の強さなのである。
それらの中で真一の希望に最も近いスキルの1つが『食いしばり』であった。
「それはどういう、、、?」
「どれだけ大きなダメージを受けても、HP残り1で生き残れるんだ」
「えっ!?それって次にダメージ受けたら?」
「すぐ死ぬよ」
「ダメじゃんっ!!」
思わず神さま相手に素でツッコむ真一。
だがすぐに失礼をしたことに気付いて顔色を青くさせる。
「あぁっ、ごめんなさいっ!そういう意味じゃないんですっ!!でも本当に痛いのは無理なんです。お願いします!もう少しだけ何とかなりませんか?」
土下座で謝り、涙を流して頼み込む真一。
空中に漂いながらの土下座に何の意味があるのかは微妙である。
とはいえ真一の願いは、少しは少年に届いたようだった。
「うーん、確かに君はここ数十年の転生者でダントツ1番に強い想いの力で来たからね。他の転生者よりも強い能力をあげられるかも」
そう言って少年は何やら集中し始めた。
真一の要望に応えるためのスキルを、新たに創り出しているのだ。
基本的に転生特典で与えられるスキルは、テンプレの中から選ばれる。
だが特殊なケースとして、転生者に合わせた『ユニークスキル』を構築する場合もあった。
といってもそれは数百人に1人というレアケースである。
この少年をその気にさせるような特別な何かがあった場合に限り、というわけだ。
さらに構築可能なユニークスキルの強さは、その転生者の持つ『運命力』に依存していた。
もちろんただの大学生でしかない真一は、大した運命力など持っていなかった。
けれども『人間の限界を超えるほどの、別の世界へ旅立ちたいという強烈な想い』。
そんな想いの力により、平凡だったはずの真一の運命力は爆発的に引き上げられていた。
少年はその真一の運命力に面白みを感じて、ユニークスキルを構築することにしたのだ。
一方で真一は『他の転生者』という言葉が気になっていた。
魔王の討伐に旅立った地球人が自分以外にもたくさんいるのかもしれない。
そんなことを考えていると、ウンウンうなっていた少年がパッと顔を輝かせて頭をあげる。
「うん、できた!僕って天才!君にピッタリの能力が構築できたよ!」
「本当ですか!神さま!」
「うん、君専用のユニークスキルだよっ!その名も『ダメージ最小化』!!」
「それって、どんな能力なんですか?」
「さっきと違ってスゴいよ!どんなに大きいダメージでも、ダメージ=1で受けられるんだ」
確かに凄そうな能力だった。
「どんな攻撃を受けても、HPが1しか減らないってことですよね?ちなみに俺のHPってどれくらいなんですか?」
「転生したらレベル1から始めるから、最初はHP=20ってとこかな。だから20回までならどんなえげつない攻撃を食らっても耐えられるよ」
「スゴいっ!神さま、それでお願いします!」
反射的にそう答えた真一だったが、ふとイヤな予感を感じる。
そもそも痛いのがイヤだというのが真一の望みなのだ。
「あれっ?でもそれ、本当に大丈夫ですか?例えばダメージは1だけど、痛みはめっちゃ感じるとかじゃないですよね?」
「ああ、大丈夫。ちゃんと気を利かして感じる痛みも100分の1になるように設計しといたよ!」
メチャメチャ有能な神さまだった。
ホッと安心する真一。
全く痛みを感じないのは逆に危険だと聞くので、1%というのは丁度いい調整かもしれない。
少年に感謝する真一だったが、、、
「ほら〜♪、ミニマイズド・ビッグバン!」
いきなり少年が真一に腕を向け、何やら不穏な言葉を口ずさむ。
次の瞬間、真一の目の前で世界が弾け、宇宙が地獄の業火に包まれた。




