5.73.285 恋人は分け合えない、、、のだろうか?
『右手だけの恋人』とイチャつくシャリィの様子を見て、呆気に取られていたエピーだったが、、、
「ミュイ〜、そうなの?エピーも『そっち』はいらないよ、、、」
「ニャニャ〜、その肉を食べるのを我慢すればいいだけってことニャミュ?」
ドラゴン娘たちの問いに、頰ずりしながら満面の笑顔で頷くシャリィ。
そんなシャリィに、エピーが恐る恐る問いかける。
「シャリィ、それじゃ頭のシンはこのままエピーたちのものでいいんだよね?」
ここでイヤと言われれば、エピーの力では逆らえないのだ。
祈るような気持ちで返答を待つエピー。
だがシャリィの反応は想像以上にアッサリしたものだった。
「はい、どうぞどうぞ」
「ミュイっ♪じゃぁ、これで解決だねっ♪」
人生最大のピンチから解放されて、パッと花開くような笑顔を見せるエピー。
その目にはうっすらと涙まで浮かんでいる。
それほどまでにエピーは極限状態へと追い詰められていたのだ。
ドリーはさっきまでの修羅場を早くもコロッと忘れて、踊りださんばかりの上機嫌になっていた。
この修羅場の元凶である真一が何かするヒマもなく、世界滅亡の危機は去ったのである。
いまや誰もが納得・満足して、何の疑問も感じていないようである。
ただ1人、、、
「って、これでいいんですかっ?」
珍しくツッコミを入れた朝霞を除いては。
さすがに『性癖ノーマル』な朝霞には、『首』と『右手』を分け合うという解決策は受け入れ難かったようだ。
それに朝霞には他に気になることもあった。
「その右手って、この右腕パーツとくっつく部分なんじゃ、、、?」
そう言って朝霞は武器代わりに持っていた右前腕パーツをシャリィの持つ右手パーツに近づける。
だがその瞬間、、、
シャリィが本物の魔女に変貌した。
「わたしのシンに変なモノを近づけないでっ!!」
魔眼を赤く光らせたシャリィは、ヤバげなオーラを放ちながら、鬼気迫る表情で朝霞を怒鳴りつける。
その迫力といったら、ダグザギャッデスどころの騒ぎではない。
神の怒りにでも触れたかの如く、その場の全員が死を覚悟するほどの悪寒にさらされたのだ。
「ひぃぃっ!!」
至聖龍をも越える魔女の怒りをモロに浴びて、哀れ朝霞は悲鳴を上げる。
だが朝霞の被害はそれだけでは済まなかった。
シャリィの怒りの波動は、物理的な攻撃力まで帯びていたのだ。
魔女から放たれた衝撃波が朝霞を襲い、着ていた服が粉々に弾け飛ぶ。
魔界の瘴気対策でヒカるんを出しっぱなしにしていなければ、即死していてもおかしくなかった。
ヒカるんのおかげで九死に一生を得た朝霞だったが、またしても素っ裸である。
絶対強者の憤怒の波動を感じ取ったのか、エピーとドリーはブルブルと縮こまってしまっていた。
野性の直感でシャリィには絶対に逆らってはいけないと思い知らされたようだ。
朝霞は裸にひん剥かれたことに気を回す余裕すらなく、涙まで浮かべて震えている。
そんな朝霞の姿にさすがにマズいと思ったのか、シャリィはすぐに怒りを抑えてくれた。
「ごめんなさい、怖がらせるつもりはなかったのです。今後注意してくだされば大丈夫ですから」
そう素直に謝るシャリィだったが、まだ胸のドキドキが収まらない朝霞。
シャリィは絶対に怒らせないようにしようと、胸に刻んだ一同であった。
「本当にすみません。その格好はシンには刺激が強すぎますね」
一方で剥き出しになった朝霞の裸体をチラチラと覗き見している真一の視線に、シャリィはしっかりと気付いていた。
右手を朝霞に向けると何やら不思議な魔法を発動する。
すると朝霞の全身を取り巻くように眩い光が浮かび上がり、その光が徐々に糸のように実体を取り始める。
ものの数秒で朝霞の身体を覆うように、純白の美しいドレスが織りあがった。
「服は作りましたので許してくださいね。ちゃんと乳首は出せるようにしておきましたから」
ただし左胸の先端に穴のあるドレスで、ヒカるんは出しっぱなしである。
おかげでヒカるんの『浄化』効果により、朝霞の周囲の瘴気は無毒化されたままだ。
魔界の瘴気に朝霞が耐えられるようにという、優しすぎるシャリィの配慮であった。
「ぅぅぅっ、、、ぁりがとうごじゃいましゅ、、、」
シャリィに礼を言う朝霞は、恥ずかしさで顔が真っ赤である。
もちろんシャリィのことがまだ怖くて、『余計なお世話です』なんて言えるはずもなかった。
なにはともあれ世界滅亡の危機に直結しかねない修羅場は、ひとまず収束したようである。
真一のパーツを分け合うという、あまりにも『猟奇的な和解案』によって。
もちろん真一としては早く自分のパーツを集めてくっつけたいところではある。
とはいえこの状態のシャリィから『右手』を回収したいなど、言い出せるはずもなかった。
「と、とにかく、これでぜんぶ解決ってことでいいのかな、、、」
「はい、そうですね、シン。大好きです♡。これからもずっと一緒ですね」
真一の問いかけに、幸せの絶頂♪といった顔で答えるシャリィ。
だがしかし返事をしたシャリィが視線を向けている相手は、真一ではなかった。
シャリィはただただ、『右手』だけを見つめているのである。
耳では真一の言葉を聞きながらも、顔を向けて話をする相手はあくまで『右手パーツ』のようだ。
情熱的な愛の告白をしながら、満面の笑顔で右手に頬ずりをし、キスをするシャリィ。
あまりにもサイコホラーな絵面だが、何も言えない真一であった。
そしてそんな姿を見せつけられて、喧嘩っ早いドラゴン娘たちがもちろん黙ってられるはずもない。
「エピーもシンのこと大好きだからねっ♡」
「ドリーもドリーも♪シンのこと早く食べちゃいたいなぁ♡」
口々にそう言いながら、真一に代わる代わる熱い口づけを交わすエピーとドリー。
そんな3人の女たちの姿を見せつけられて、思わずあてられてしまったのだろうか。
何故か朝霞まで暴走を始める。
「だったらわたしも、この右腕もらっちゃってもいいのかな?」
「えっ!?ユア?」
だがそんな朝霞の問題発言に、真一、エピー、ドリー、シャリィが一斉に固まる。
何言ってんだコイツ?という4人の視線を一身に浴びて、キョドってしまう朝霞であった。
「う、うそ!冗談ですからっ!」
すぐにそう否定しながら、朝霞は顔を真っ赤にさせる。
けれども右腕パーツは愛おしそうに胸に抱きしめたままだ。
どこからどう見ても『完落ち』であった。
エピー、ドリー、シャリィに加えて朝霞まで。
4人の絶世の美少女から隠しきれない好意を向けられて、今の真一はまさにハーレム状態であった。
ただしその4人が愛情を向けるパーツはバラバラである。
男1人に女4人という、ありきたりのハーレムとは全く違う。
1人の男のバラバラパーツと4人の女によるこれは、、、
そう、、、
『分割ハーレム』の爆誕であった。
だかまぁ、何はともあれ、、、
こうしてまた1人、真一の冒険に新たな仲間が加わったのであった。
シャリィがパーティーに加入しました。
本作の主要メンバーは、この5人で勢揃いとなります。