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5.43.234 襲来!恐怖の魔王軍四天王

 たった1人で魔王軍へ向けてズンズンと進んでいくカイチ。

 その様子を見て、『天剣』がリカナに問いかける。


「おいおい、アグロノイナン《完全魔術師》。1人で行かせて良かったのか?ガチで死ぬぞ」


「言っても聞かないですし、1度痛い目を見ないと分からないんですよ。まぁ、タフさだけはプラチナ以上だから、そう簡単には死なないでしょう」


 だがリカナの返答は極めてドライであった。

 平気なように見えたが、内心ではカイチにかなり腹が立っていたのかもしれない。

 とはいえリカナもカイチのタフさだけは認めているようだ。


「みなさん、ウチのカイチがすいません。ご迷惑をおかけします」


 そして平謝りするユータであった。


「それより作戦ですけど、8指将は他にも出てくると思いますか?」


「あぁ、間違いなくな。少なくとも右の1、4、8指の3人はこの場に来ているはずだ。下手したら左指の何人かも」


 『天剣』の話を聞きながら、右の4指はもう『お亡くなり』だけどね、、、と、心の中でツッコミを入れる真一。

 戦略的にはかなり重要な情報なのだが、力を隠しておきたいので喋るわけにはいかない。


「ニャニャ?右の4指のクソガキなら…

「ドリーちゃん、今は黙ってようねっ!」

「ミュイ〜、、、」


 慌てておしゃべりドラゴンを黙らせる真一であった。

 ともかくニャグメッツ以外にも四天王が出てくる可能性は高いということだ。


「だったらプラチナの皆さんは2人目の出撃に備えて待機しておくべきですね」


「いや、そうも言ってらんなさそうだぜ。アイツら、今回は本気でココを落としに来てるぞ」


「魔王軍の中に赤い鎧のヤツらが混じってんだろ?アレはガチでヤバい相手だ」


 リカナの提案に反対の声をあげたのは、『天剣』のパーティーだ。

 どうやら四天王以外にも危険な相手はたくさんいるらしい。

 1000人近い魔王軍の兵士たちは、全員がお揃いの黒い鎧を装備している。

 だがその中に混じって、青い鎧が30ほど、そして赤い鎧が10人ほど含まれていた。


 それらは魔王軍の精鋭中の精鋭なんだそうだ。

 青はシルバー(Bランク)〜クロム(Aランク)相当。

 そして赤鎧はクロム(Aランク)〜プラチナ(Sランク)の強さだという。


 そりゃそうである。

 魔王軍の精鋭が8指将だけのはずがない。

 それに準じるレベルの実力者がいるのも当然の話であった。


「ステータスっ!」


 進軍してくる赤鎧に向けてステータス鑑定を使うリカナ。

 けれどもステータス画面は出てこない。


「やはりこの距離だとダメか。正確なステータスは分からないから、プラチナ相当と計算するしかないわね」


「今いる赤と青だけってんなら、まだこっちの方が戦力は上だ。だけど全員出ねぇと話になんねぇ以上、戦力を遊ばせとく余裕はねぇぞ」


 この場にいるプラチナ冒険者は、5組で計24名。

 魔王軍の赤10と青30を相手にするとなると、全員で戦う必要があった。


「力自慢君が本当にニャグメッツを抑えてくれたとしても、8指将がもう1人出てきたらかなり劣勢になるわ」


「やはり当初の予定通り、2人目が来たら撤退の方向でいいだろう」


 リカナと『天剣』パーティーの会話を受けて、この場の最高責任者ナパウド将軍が結論を下す。

 それは砦の指揮官であるセンゼン中将を始めとするここの兵たちを捨て駒にするという判断である。

 それでも対魔族結界の無いここでの戦闘で、プラチナ冒険者を1人たりとも失うわけにはいかないのだ。


「よし、俺たちは前線に出て色付きどもを抑えるぞっ!」


「おおっ!」

「分かったわ!」

「やってやるぜぇっ!」


 『天剣』の言葉に、プラチナ冒険者一同が一斉に声を上げる。


「アグロノイナン《完全魔術師》は切り札としてここに待機しててくれ。戦況を見ながら支援しつつ、2人目が出てきたときの対応を頼む」


「分かりました」


「それで、本当にアイツは放っといていいのか?」


 『天剣』が勝手に1人でズンズン進んで行っているカイチを指差して、リカナに改めて確認する。


「どうにもならなくなったら、出来れば助けてやって欲しいです。ただ、みなさんの命を危険に晒してまでは、お願いはできません」


「分かった、やれるだけはやってみる」


 そう言って『天剣』は城壁から飛び降りていき、5組のプラチナ(Sランク)パーティー全員が後に続く。

 後には勇者たちが残された。


「ユータっち、ヨワヨワでしょ?出来るだけ守ってあげるから、アタシの後ろにいるのよ」


「サツキだって、大したことないだろっ!」


 不満そうに文句を言いながらも、しっかりとサツキの後ろに隠れるユータ。

 サツキとユヅキはそれほど強くはないという話だったが、ユータはさらに下のようだ。


「アサカっちは強いんだよね?その格好でどうやって戦うのかぜんぜん分かんないけど」


 戦場とは思えない普段着姿の朝霞と真一たちを見ながら、確認してくるサツキ。


「はい、頑張ります。ちゃんと戦うのなんて初めてなんですけど、、、」


 悲壮な表情を浮かべながらも、覚悟を決めて答える朝霞。

 だがその言葉はリカナたちをギョッとさせるには十分なものだった。


「初めてっ!?だけど、例の『アレ』を倒したんでしょっ!?」


「あれはたまたまというか、、、」


「だいたいアサカっち、武器と防具は大丈夫なの?」


「そう言われてみれば、、、」


 あまりにも今さらながら、初めてそのことに思い至る真一たちであった。

 当然ながら朝霞は、最初の街で冒険の装備を整えるなんていうRPGのお約束なんて知らない。


「確かにユアに防具は要らないと思うけど、武器はあった方がいいかもな」


「そうですか?でもわたし、武器なんて使えませんけど」


「それでも咄嗟とっさに構えて攻撃を防ぐくらいは出来るかもしれないし、、、」


 そう口にしながらも、真一は朝霞にちょうどいい武器を考える。

 剣とかは重すぎるし、初心者に刃物は逆に危険だろう。

 軽くて振り回しやすくて、防御力が高い杖とかがベストだろう。

 そこで思い付いたのは、当然『アレ』である。


「エピー、パーツのバッグを出してくれる?」


 エピーに溜め袋からパーツを入れた防水バッグを出してもらう。

 そこから真一が取り出したのは、『右前腕パーツ』であった。


「これならどんな攻撃でも防げるし、念の為に持っておいて」


「分かりました」


「これで準備は万端だな」


 グロテスクな棍棒を手にした朝霞を見て、満足そうに呟く真一。


「意味分かんないんだけど、、、」


「何それ、気持ち悪い、、、」


 そんな朝霞と真一たちを見て、しみじみと呟くサツキたちであった。


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