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5.32.223 ルミっとセレブ!♪

 小一時間ほどランチを楽しみ(※ほぼドリーだけ)、真一たちは話し合いを終えてギルド本部ビルのレストランを出ることにする。

 そこは一般の冒険者が利用する食堂とは別の、高級レストランである。

 テーブル席に座っている客もゴージャスな服を着ている人が多い。

 さすがに手づかみで料理を食べている人はおらず、みんな上品に食器を使って食べている。

 だがそれらの客もまだ普通な方で、本当の上流階級の人たちは個室を利用しているようだ。


 真一たちがそんな個室を用意してもらえたのは、リカナの名声とキーズットの計らいのおかげである。

 この店の特に個室は、かなりのセレブだけが通されるような場所なのだ。

 そんな店で騒動を起こすのは絶対に避けたいところだったのだが、、、


「ニャミュっ!?なんだかいい匂いがするっ♡」


 店を出ようとしていたところで、問題児ドリーが突然そんなことを言い出した。

 他のテーブルの料理の匂いでも気になったのだろうか?

 あれだけ大量に食ったというのに(※今回のランチ代は約50万円相当)、まだ食い足りないのかもしれない。

 いきなり身体の制御権を奪うと、レストランの奥へと戻り始めた。

 しかも向かった先は、よりにもよってめちゃくちゃVIPそうな個室である。


「待って、ダメっ!!」


 真一が止める間もなく、ドリーがVIP個室のドアを乱暴に開け放つ。

 中にいた人々の視線が突き刺さった。

 どんな大問題になるかと戦々恐々の真一だったが、幸いにも部屋にいたのは面識のある一団だった。


 ギルド本部長のキーズット。

 先ほど紹介された外務大臣らしき大貴族のイケオジ。

 そして補佐官らしき数名。

 だがテーブルにはもう1人、真一のよく知る美女がいた。


「やっぱりルミーだっ!♪ルミーの匂いがすると思ったんだ〜♡」


「ドリーちゃんっ!!♪」


 そう、ミグルNo.1アイドルのルミッコである。

 なんとドリーはルミッコの匂いを、この香ばしい匂いの充満するレストランの中から嗅ぎ当てたらしい。

 部屋の中の人々が顔をしかめる中、ルミッコがパッと花開くような笑顔を見せる。


「それに、シンもっ!」


「あぁ、久しぶり、セスル。会えて嬉しいよ」


「はいっ!わたしも会いたかったですっ♡」


 目を輝かせるルミッコだったが、何故超人気アイドルがこんなところにいるのだろう?

 そう疑問に思う真一だったが、その答えはイケオジ大貴族の言葉で判明する。


「馴れ馴れしいぞ。娘とはどういう関係だっ!」


 お父さまは、愛娘まなむすめへの『セスル呼び』に大層ご立腹であった。


 って、娘!?

 セスルの父親かよっ!?


 と、今さらながらに驚く真一。

 そういえばルミッコの本名は、セスルミッコ・ファイミューヘェンだった。

 この外務大臣と同じである。

 こんな長い名前なんだから、聞いたときに気づいとけ!っていう話であった。


「お父さま、失礼ですよ。シンたちはわたしの命の恩人です。例のストーカーを討伐してくださったのが、この方たちなんですよ!」


「おぉ、そうだったのか!知らなかったとはいえ申し訳ない。諸君らがいなければ娘は連れ去られ、どれほどの目に遭わされていたことか。心から感謝を申し上げる」


「ミュイ〜、友だちを助けるのは当然のことだもん」


「うん、ルミーは大事な友だちニャミュっ♡」


「あぁ、今後も娘と仲良くしてやってくれ。あくまで『友人』としての範囲なら、諸君らのような腕利き冒険者は大歓迎だ」


 ルミッコパパのお許しは出たようだが、言葉に少しだけトゲがある。

 こちらを見る視線も、エピーとドリーへのものに比べて、真一に対してだけかなり冷たい。

 どうやらルミッコの淡い想いに気づいている様子である。

 まぁルミッコの真一に向ける視線が明らかにピンク色なので、簡単に見抜かれてしまうのも無理はなかった。


 ちなみに今日のルミッコはファイミューヘェン家の令嬢として、この場に参加しているらしい。

 魔王軍への対応方針を冒険者ギルドと調整するために、街の代表として来たパパのサポート役である。

 顔と名前の売れているルミッコは、アイドル活動と並行して、こうやって家の仕事を手伝うことが多いそうだ。

 ルミッコが大貴族家の令嬢であることは公表されていないが、世間にも良く知られている公然の秘密であった。


「それでシンはどうしてここに?それもタカナシ様と一緒に」


「あぁ、プラチナ冒険者たちを前線に運ぶ仕事を任されたんだ」


「えっ!?まさかシンたちも戦場に行くの?魔王軍と戦うってこと!?」


 真一の答えに驚き、不安そうな表情を浮かべるルミッコ。


「ミュイ〜、ルミコ、エピーたちのこと心配してるの?」


「もちろんよ!大切なお友だちなんだから、心配するのは当たり前でしょ」


「なんで?ドリーがいれば何でも大丈夫ニャミュ!」


「だけど前線には魔王軍のバーリャンザガット《8指将》が何人もいるのよっ!1人だけなら倒せても複数相手なんて、いくらシンたちでも、、、」


 だがルミッコのその発言を聞きとがめたのは、名探偵リカナであった。


「あれ、セスルミッコ嬢。1人なら倒せるって、、、?」


 ルミッコの言葉から何やら推理を巡らせている様子だ。

 どうやら先ほどの会話の内容と合わせて、ルミッコ誘拐事件の真相にたどり着きそうな気配である。


「あ、いや、、、ただの言い間違いですわ。1人でもいたら大問題ですもの!!!」


 余計なことを言ったと慌てふためくルミッコ。

 四天王を1人倒したと真一がリカナに話していることなど、ルミッコは知らないのである。

 無理やりにでも話題を変えようと思ったのだろう。


「それより、シン、それにドリーちゃんもエピーちゃんも!」


 急に席を立ったルミッコが、急ぎ足で真一たちに近づいてくる。


「みなさんには聞きたいことがあったんです!ずっと気になってて、、、」


 そうしてエピーの手を取って部屋から逃げ出した。

 そのまま近くの空き個室に真一たちだけを連れて行く。

 とはいえ聞きたいことがあるというのは、決して口先だけではないようだ。


「どうしたんだ、ルミッコ?」


「実は最近、こんな子を見かけてて、、、」


 ルミッコはそう言いながら、手に持ったバッグから情報板(※異世界タブレット)を取り出す。


「もうすぐデビューする予定のアイドルなんですけど、初めて見たときからどういうことか聞きたくて聞きたくて、、、」


 そうしてルミッコは情報板に1枚の写真を表示する。

 どうやら新人アイドルのステージを写した写真のようだ。

 めちゃくちゃ可愛い少女が、舞台の上で懸命に歌い踊っている姿が描き出されていた。

 しかもその隣ではペットらしき白い動物も一緒にダンスをしていて、とても愛らしい。


 誰が見てもほっこり癒やされる画像であったが、真一にとってはなおさらである。

 なんせその少女は真一が片想いしていた先輩そっくりの美少女なのだから。

 更には恋人であるエピーとドリーに瓜二つでもあった。

 そして何よりその少女は、真一たち3人の大事な友人なのだ。


「ミュイっ!ミコミだぁ〜♡」


「ミーニャもいるニャミュっ♪」


 そう、その『新人アイドル』の正体は、写真の上部に可愛らしいフォントでデカデカと書かれていた。


『デビュー決定!期待の新人!龍巫女アイドル★ミコミちゃん♪』


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